<子どもが主人公>子どもの権利から見た「親子交流」と「養育費」の議論を。
6/25(木)に、離婚後も父母が協力して子育てに取り組む共同養育の支援拡充を目指す超党派の議員連盟が法務省にて森雅子法相と面会し、養育費の支払いや親子の交流継続の原則義務化などを求める提言書を提出しました。
この提言では裁判所を介さない協議離婚の場合でも養育費の支払い、別居する親子が触れ合う「面会交流」に関する取り決めを原則義務化するよう指摘しており、公的機関による相談・支援体制の強化も求めています。
また、同日に公開された自民党の『司法制度調査会2020』では、「離婚をめぐる子の養育に関する問題」において離婚後の親権制度の在り方、養育費の確保、面会交流の改善などについて言及しています。
政府は女性活躍の視点での議論を加速
7/1(水)には政府が、「すべての女性が輝く社会づくり本部」(本部長・安倍晋三首相)の会合を首相官邸で開き、『女性活躍加速のための重点方針2020』を決定しました。
そこには離婚後の子どもの養育費確保に向けて、法改正の検討が明記されています。首相は会合で「困難な状況にある女性に対しても、しっかりと支援を行っていく」と発言したそうです。
しかし、今回の議論で私が大きな問題だと感じていることは、主語が「子ども」ではなく、「親(シングルマザー)」となっていることです。「養育費」も「面会交流」も子どもの権利です。このままこの議論が進んだら子どもの権利が認められたことにはなりません。養育費を受け取る権利と、同居していない親との面会交流の議論は、女性活躍の視点ではなく、あくまで『子どもが主人公』として議論されるべきではないでしょうか。
子どもの権利条約、ハーグ条約、子の連れ去り問題については下記をご覧ください。
世界から『日本は拉致国家』と非難を浴びている、国際的な子の連れ去り問題について(明智カイト)
オンライン交流をして欲しければ直接の交流は諦めろと言われた母親
コロナ禍により、離婚や別居で離れて暮らす親子の面会交流が中断し「コロナ断絶」ともいうべき状態になっていることが相次いで報道されました。これに対して5/1に法務省では「【新型コロナウイルス感染症関係情報】面会交流について」を掲載し、コロナ禍における面会交流について一定の指針を示しました。
民間団体「共同親権草の根活動」は、法務省発表の後に面会交流の状況が改善しているかを調査するために、子どもと別居中の親167人に対してアンケートを実施しました。その調査結果では、法務省の告知内容が十分に伝わっていなかったり、「オンライン交流さえできればよい」と誤解されたりしたケースがあったようです。
また、「オンライン交流をして欲しければ今後の直接の交流は諦めるように」と交渉材料にされてしまった母親のコメントもあったようです。コロナ禍での面会交流に配慮して、オンラインによる交流を呼び掛けても同居している親の一存によって、その実現が阻まれていることが浮き彫りとなっています。
親子が直接会って触れ合うことは、子どもの健全な成長にとって他に代替の効かない必須のものです。親子の絆を保つための実効性のある対策もそこに組み込んでいく必要があります。
首相官邸前での『子どもの人権革命』アクション
6/30(火)には離婚後や離婚係争中で子ども達と会えない親たちが中心となって首相官邸前で「養育費だけではく面会交流もセットで議論してください」と訴えました。また、同時に『離婚時の養育費を含む共同養育の取り決めに関する請願書』を安倍首相宛に提出したとのことです。
この首相官邸前でのアクションには大阪や九州など全国各地から、さらにはフランス、イタリア、オーストラリアなどの外国人も混じり100人ほどが参加しました。
今回、この集会を呼び掛けた主催団体の「親子をつなぐ結の会」は『養育費の制度には賛同する。しかし、子どもはそれだけで親の愛を実感できるのか。子どもは親に愛されたいと思っている。見て欲しいと思っている。生活のためのお金も必要だが、ふれあいや子育てを通して子どもが親に愛されている実感を持ち、安心感の中で育つことは、何よりも大事なことだ。養育費と面会交流は双方不可欠で、その双方を内容とした共同養育の仕組みを作ることは急務だ』と、コメントしています。
養育費のみの先行制度化は、例えば有責配偶者など自分に非がある親が、逃げるように『子の連れ去り別居』することが増えるかもしれません。さらに弁護士も教唆することが考えられます。それは子どもにとって大きな不利益と心の傷になるのです。
離婚後であっても親の責任を自覚し、父も母も共に子育てをしながら親心を芽生えさせ、夫婦の問題とは別として子どものために協力していけるような関係を再構築していくことが必要です。それが子どもを中心に据えた共同養育社会なのです。
日本は子どもの権利についての法的定義がありません。この首相官邸前でのアクションはまさに『日本の子どもの人権革命』であると言えるでしょう。