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日本のお札の偽札防止技術は世界最高水準、だから現金が使われる

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ideyuu1244/イメージマート)

 2024年度から流通が始まる新しい1万円札の印刷が9月1日に始まった。新一万円札の肖像画には「近代日本経済の父」と呼ばれ、現在のNHKの大河ドラマの主人公でもある渋沢栄一が描かれている。

 そして、5千円札には津田塾大学の創始者である津田梅子、千円札には近代日本医学の父といわれる北里柴三郎が採用され、いずれも2024年度の上半期から流通する予定となっている。

 前回の1万円札の新札の発行は2004年11月にE号券と呼ばれる福澤諭吉の肖像画の第二弾であった。福澤諭吉の肖像画の第一弾となるD号券は1984年11月に発行が開始された。それ以前は聖徳太子が肖像画となっているものでC号券と呼ばれるものが1958年12月に発行されている。

 初代1万円札の聖徳太子の時期は26年となっていたが、福澤諭吉の肖像画の第一弾となるD号券からは20年おきに新札が発行されている。これは肖像などを彫り込む技術を次世代に継承させる必要があることや、あらたな偽造防止技術を組み入れるためとされている。

 8月に都内のコンビニエンスストアなどで聖徳太子の肖像画が描かれた偽の旧1万円札がおよそ50枚使われたという事件が起きた。これは聖徳太子の1万円札のほうが偽札が作りやすい面があったと思われる。

 2024年度から流通が始まる新1万円札の偽造防止のための最先端の技術とは、たとえば世界で初めてとなる最先端のホログラム技術がある。紙幣を斜めに傾けると肖像が立体的に動いて見える。

 紙の厚さを変えることによって表現する偽造防止技術、いわゆる「すかし」では、これまでのように肖像を映し出すだけではなく、紙の厚みを微細に変えて高精細なもようも施している。

 長らく親しんだお札がなくなるのは寂しい限りだが、偽札を防ぐためには致し方がない。この日本の偽札防止技術は世界最高水準を誇っている。

 これが日本でのお札への信用度を高めているともいえる。中国でのスマホ決済が広まった背景には、お札への信用度の低下、中国からの現金持ち出しに対する規制など使い勝手の悪さ、お札の汚れ等も影響している。これに対して日本では特に国内で使用する際には、特に不便は感じない。

 コロナ禍にあって他人が触れたお札を使うのをためらう人もいるかもしれないが、それでも使い勝手がよく、災害時にも使えるお札は今後も使われ続けることが予想される。

 もし日本国内でお札に取って変わるものが現れるとすれば、よほど使い勝手の良いもので、電気や電波が届かずとも一定時間は利用でき、セキュリティがしっかりしたものとならざるを得ないのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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