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メーガン夫人はチャールズ英国王の戴冠式欠席、ヘンリー公爵は出席の妥協策

木村正人在英国際ジャーナリスト
ヘンリー公爵とメーガン夫人(写真:ロイター/アフロ)

「メーガン夫人はアーチー王子とリリベット王女と米に留まる」

[ロンドン]「サセックス(ヘンリー)公爵(英王位継承順位5位)は5月6日にウェストミンスター寺院で行われるチャールズ英国王の戴冠式に出席する予定です。サセックス(メーガン)公爵夫人はアーチー王子とリリベット王女とともにカリフォルニアに留まります」。バッキンガム宮殿とヘンリー公爵夫妻は12日、同じ内容の声明を発表した。

英王室ウェブサイトの王位継承順も6位アーチー王子、7位リリベット王女に変更された。チャールズ国王が即位した時点でヘンリー公爵夫妻の長男アーチーちゃん、長女リリベットちゃんにも王子と王女の称号が自動的に与えられることになっていたが、なかなか更新されなかった。3月、リリベットちゃんの洗礼式で初めて「王女」の称号が使われた。

チャールズ国王の戴冠式に合わせてアーチー王子、リリベット王女を英国内外で周知徹底させていくとみられる。伝統としきたりで雁字搦めの王室からの自由を求める一方で、子供たちの「王子」や「王女」の称号にこだわるヘンリー公爵とメーガン夫人の自家撞着(じかどうちゃくぶり)が改めて浮き彫りになった。

ヘンリー公爵の席次でもめる?

戴冠式には慈善活動家ら2000人以上の国内外ゲストが招待され、日本からは秋篠宮ご夫妻が参列する。生活費の危機に英市民が苦しむ中、「小さな王室」を目指すチャールズ国王の意向で行進は故エリザベス女王の戴冠式(1953年)の8キロメートルから4分の1の2キロメートルに短縮される。英王室を取り巻く問題はそれだけではない。

英大衆紙最大の関心事は言うまでもなく王室とヘンリー公爵、メーガン夫人との対立だ。

事を荒立てたくないチャールズ国王は1カ月前に戴冠式への招待状を送ったものの、2人が出席するかどうか、憶測を呼んでいた。ウィリアム皇太子とヘンリー公爵の対立を描いた『兄弟の戦い(Battle of Brothers)』の著者で王室歴史家ロバート・レイシー氏は英紙ガーディアンにこう語っている。

「1カ月に及ぶ話し合いと交渉の結果が上手くいかなかったようだ。1カ月前にヘンリー公爵とメーガン夫人は返信することが可能だった。ヘンリー公爵はエリザベス女王の在位70周年記念式典(プラチナ・ジュビリー)での席次に不満だったとされる。戴冠式の式典でヘンリー公爵をどこに座らせるかが話し合われた」(レイシー氏)

毅然とした態度とオリーブの枝

レイシー氏はガーディアン紙で「ヘンリー公爵の暴露本『スペア』の出版後、チャールズ国王は毅然とした態度と和解を組み合わせた行動をとった。毅然とした態度とはヘンリー公爵夫妻のフロッグモア・コテージの賃貸契約を終了させることであり、和解は戴冠式に夫妻を招待することを早い段階で明らかにしたことだ」と指摘している。

「暴露本、米人気司会者オプラ・ウィンフリー氏との単独インタビュー、ネットフリックス(Netflix)のドキュメンタリー、これらは家族と王室への継続的な攻撃だった。特にカミラ王妃に対する攻撃だ。このような状況で国王が招待状を出したことは善意であり、寛容であった。しかしヘンリー公爵夫妻が十分な招待を受けられなかったのは明らかだ」(レイシー氏)

「一方でポジティブにとらえることもできる。ヘンリー公爵が来るということは実りある妥協と言えるかもしれない。ヘンリー公爵が自分の父親(国王)について語ったこと、父親を非難しているように見えること、それを脇に置くことを望んでいることを考えると、実に希望に満ちている。一歩前進と言えるかもしれない」(同)

「メーガン夫人が王室行事に出席することは二度とない」

『私たちの国王(Our King)』の著者で王室ジャーナリストのロバート・ジョブソン氏は英大衆紙デーリー・メールに「メーガン夫人が再び王室で役割を果たすことができるかどうかが疑問視されている。ヘンリー公爵が招待を受け、父親をサポートするため戴冠式に出席することは良いニュースだ」と評価している。

「困難な状況下で最も現実的な行動であり、ヘンリー公爵はそれを正しく理解した。父親の人生最大の日に出席しなかったとしたら彼は深く後悔することになる。しかし、彼の妻が出席しないということは、彼女が公式行事や王室の行事に出席するのを見ることはもう二度とないだろうということだ」(ジョブソン氏)

ヘンリー公爵とメーガン夫人の出会いから王室離脱までを描いた暴露本『自由を求めて』の共同著者オミッド・スコビー氏は「アーチーちゃんの4歳の誕生日(戴冠式と同じ5月6日)も2人の決断に影響したと聞いている。ヘンリー王子は、ウェストミンスター寺院での戴冠式に出席するだけなので短期の渡英になることが予想される」とツイートした。

王室を離脱したヘンリー公爵は公務を担う現役王族ではないため、戴冠式に出席してもバッキンガム宮殿のバルコニーに登場するなど、公式な役割を果たすことはないと考えられている。ヘンリー公爵の席次、戴冠式後にウェストミンスター寺院からバッキンガム宮殿へ向かう馬車行列に参加するのかどうか、これからも大衆紙を騒がせそうだ。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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