【目黒区】ホテル雅叙園東京の企画展「大正ロマン×百段階段」で、華麗なる世界観を体感
目黒区のシンボルといえばホテル雅叙園東京。1935年(昭和10年)に建てられた旧目黒雅叙園3号館にあたる「百段階段」は、東京都指定有形文化財に指定されています。
通常は非公開である文化財「百段階段」ですが、季節ごとに企画展が開催され、その期間中は見学できます。このため、企画展開催を心待ちにされている方も多いのではないでしょうか。
実は私も楽しみにしているファンの1人。今回は2022年4月16日(土)から開催されている「大正ロマン×百段階段」に行ってきました。
ちなみに大正ロマンをテーマにしたイベントは今回初企画だそう。「大正」といえば、人気アニメ「鬼滅の刃」の舞台でもあり、注目されている時代ですね。
都市部では西洋のライフスタイルや文化、芸術が花開き、日本の伝統と混ざり合い、独特な世界観が形成されました。文化財「百段階段」という古き良き時代の象徴を舞台に、大正ロマンの世界観を体感できるのは今がチャンス。
それではさっそく企画展の様子をレポートしていきましょう。
大正ロマンの世界へいざ出発、「十畝(じっぽ)の間」へ
文化財「百段階段」の一番下に位置しているお部屋は「十畝(じっぽ)の間」。荒木十畝さんが描いた四季淡彩花鳥の天井画や、螺鈿細工が贅沢に施された華やかな印象のお部屋です。
旅のはじまりを思わせる「大正ロマンルーム」として、和洋折衷の生活空間が演出されていました。
豪華なしつらえのダイニングテーブルのかたわらにいる女性は、思いを寄せる将校に会えるのを心待ちにする乙女の恋心を表現しているそう。大和和紀さんの人気漫画「はいからさんが通る」のワンシーンみたいです。
お部屋の奥では、姉妹が旅支度を整えているシーンを表現。準備万端の姉に対し、どの着物を持っていこうか迷う妹のあたふたした瞬間を表現するなど、まさに物語の1ページのようです。
そして、上写真右側には大正時代のモダンな洋装姿のマネキンとレトロなソファが設置され、フォトスポットになっていました。大正時代にタイムスリップした気分で撮影を楽しめますね。
ちなみにこちらの衣装は松竹衣裳によるコーディネート。和洋折衷の生活空間とおしゃれに敏感なモダン・ガールを見事に再現していました。
流行の最先端を行く百貨店へようこそ、「漁樵(ぎょしょう)の間」
豪華絢爛な極彩色の彫刻が施された「漁樵(ぎょしょう)の間」。こちらはイラストレーター・マツオヒロミさんの大ヒット作「百貨店ワルツ(実業之日本社・2016年刊)」とコラボレーションしています。
マツオヒロミさんは2010年(平成22年)からフリーのイラストレーターとして活躍。大正ロマンの世界観に影響を受けた作品が多く、人気を集めています。
今回は虚構の二十世紀初頭のデパートを舞台とした展示。トレンドリーダーとしての華やか&幻想的な世界観と、贅沢な意匠の「漁樵の間」がとてもマッチしていました。
日本最初の百貨店となった「日本橋三越」の貴重な資料を展示
さらにこちらの展示ルームでは、日本橋三越本店の前身である三越呉服店が「デパートメントストア宣言」を発し、日本で最初の百貨店となった当時の貴重な写真も展示。
1935年当時の三越本店店内の様子を知ることができます。こういった資料を目にすることはなかなかできないので必見ですよ!
大正時代のカフェを再現、「草丘(そうきゅう)の間」
風景画を得意とした礒部草丘さんの描いた四季草花絵、瑞雲に煙る松原の風景が欄間・天井に描かれている「草丘(そうきゅう)の間」。こちらには期間限定で和洋折衷の内装を施した「大正浪漫喫茶室」が誕生しています。
お部屋の随所に美しいステンドグラスが飾られていますが、これらは日本ステンドグラス作家協会に所属している方の作品だそうです。
ステンドグラスというと美しい色ガラスを使って描かれる教会の宗教画が思い出されます。明治期に入ると、それまで障子や襖が中心だった日本にも、ステンドグラスを使った建築物などが登場し始めました。
大正時代になると国産ステンドグラスが作られるようになりましたが、超高級品で流行の最先端を行く劇場やカフェなどでしか目にすることができないもの。
和の感覚でデザインされたステンドグラスは、まさに大正ロマンならではのレトロな雰囲気を感じさせるシンボルというわけですね。
「大正浪漫喫茶室」でちょっとティーブレイク
「草丘(そうきゅう)の間」では実際にカフェとしてバームクーヘンとアイスコーヒーをいただくことができます。アイスコーヒーを入れたグラスもレトロなデザインで雰囲気たっぷりです。
ホテル雅叙園東京のオリジナル、組子柄マスクケースが添えられています。こちらはお持ち帰りOK。嬉しいサービスです。
アイスコーヒーを飲み終えてびっくり。氷もコーヒーで作られており、溶けても味が薄まらないように気配りされていました。きめ細やかなサービス、さすがです!
大正ロマンを象徴する竹久夢二の作品を展示、「静水(せいすい)の間」「星光(せいこう)の間」
今回の企画展では大正ロマンを代表する竹久夢二の作品を、「静水(せいすい)の間」「星光(せいこう)の間」を使い、「港屋絵草紙店」「美人画」「童画」「セノオ楽譜」の4カテゴリーに分け、約50点紹介しています。
「静水の間」は、格天井に描かれている扇絵が印象的なお部屋。「星光の間」は、四季の食材や草花図をモチーフとした絵が描かれているお部屋です。
竹久夢二というとどうしても美人画というイメージでしたが、夢二自身が3人の男の子の父親ということで童画も数多く残しているそう。
また、夢二がグラフィックデザイナーとしての才能を発揮したのが「セノオ楽譜」だったとか!
妹尾幸陽が国内外の名歌と名曲を紹介するために出版していた楽譜集のうち、270余点の表紙絵を手掛けたそうです。
実は夢二自身も作詞家になりたかったそうで、彼自身が書いた24曲が含まれています。なかでも大正7年発表「待宵草(宵待草)」は有名とのこと。
夢二の意外な顔を知ることができました。
明治・大正・昭和のレトロなガラス製品を展示した「清方(きよかた)の間」
清方の間は近代美人画の巨匠である鏑木(かぶらき)清方さんが手掛けた四季草花、四季風俗美人画が飾られているお部屋です。
こちらでは明治・大正・昭和期のガラス製品が展示されていました。
最近では昭和レトロが大人気。石塚硝子のグラスウェアブランド「アデリア」は、ファミリーマートとコラボした「なつかしのカスタードプリン」の商品パッケージに!
この他にも、ビーカーや耐熱ガラス製品などを手掛けているHARIOや、明治創業の廣田硝子の器も展示。今見ても心惹かれるレトロなガラスの世界を堪能できます。
大正ロマンの雰囲気たっぷり、フォトスポットが登場「頂上の間」
文化財「百段階段」の一番上に位置する「頂上の間」。今回の大正ロマンに合わせて、真っ赤なじゅうたんやステンドグラスで華やかにディスプレイされてました。
頂上の間には大正ロマンを感じさせるフォトスポットが設置されています。
文化財「百段階段」の意匠と大正ロマンの演出がマッチして素敵です。
モダン・ガールを気取って写真撮影はいかがですか?
旧・目黒雅叙園の歴史を伝える貴重な資料も展示、「頂上の間」
そして「頂上の間」では、旧・目黒雅叙園時代の貴重な資料も展示。長く目黒で暮らしてきた方は、いまもここは「目黒雅叙園」だと愛着を持っていらっしゃる方が多いようです。
当時の様子がわかるパンフレットなどは、とても懐かしく感じられるのではないでしょうか。
当時の建物で使われていた装飾金具なども展示されていますので必見ですよ。
文化財「百段階段」の中にある「ミュージアムショップ」でお土産ハンティング
旅の終わりにはぜひ、文化財「百段階段」の中にあるミュージアムショップでお土産を探していきましょう。
マツオヒロミさんの「百貨店ワルツ」やレトロな雰囲気のガラス製品なども購入することができます。
大正ロマン好きの方にとっては見逃せない品揃えに。企画展は6月12日(日)までですのでぜひお見逃しなく!
■取材協力
ホテル雅叙園東京
住所:東京都目黒区下目黒1-8-1
問合せ先:03-3491-4111(代表)