中国への特定品目の関税発動先送りに対する米国側の狙い
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米通商代表部(USTR)は13日、ほぼすべての中国製品に制裁関税を広げる「第4弾」について、スマートフォンやノートパソコン、玩具など特定品目の発動を12月15日に先送りすると発表した。第4弾の関税自体は予定通り9月1日に発動するが、代表的な消費財を当面除外することで米消費者への影響を抑える(13日の日経新聞電子版)。
トランプ大統領は年末商戦をにらみ、個人消費への悪影響を抑えるためと説明した。第4弾は消費財が4割を占めている。特定品目の関税発動がクリスマス商戦の仕入れに影響しない12月15日まで先送りされることになり、これを13日の米国株式市場は好感し、ダウ平均は12日の下げ分をほぼ取り戻した格好となった。一時105円近くまで下落していたドル円も買い戻されて107円近くまで値を戻している。
FRBが0.25%の利下げを決めた翌日の8月1日の米国時間の午後に、トランプ大統領が3000億ドルの中国製品に9月1日から10%の追加関税を課すとツイートしたことをきっかけに、米国を主体に世界の金融市場はリスク回避の動きを強めた。これは当然ながら、FRBの利下げ幅が小さかったからなどではない。
今回のリスク回避の動き、特に米国株式市場の大幅な調整をみて、さすがにトランプ大統領もまずいと思ったのではなかろうか。この米国株の下落の要因として、今回の関税発動により、米国の個人消費そのものに悪影響を与え、中国を中心としたサプライチェーンへの影響も懸念されたためとみられる。このあたりをトランプ大統領も理解したのかもしれない。
米国の特定品目の発動を12月15日に先送りすると発表したタイミングで、中国が米国と2週間以内に通商問題を電話で協議すると発表していた。9月1日から12月15日に先送りしたことで、交渉の余地が拡がることも意識されていた可能性がある。
ただし、特定品目の発動を12月15日に先送りして、時間的余裕を持ったからといって、この期間での米中の通商交渉が確実に前進するというわけではない。特に今回の先送りについては、市場の動揺をみて米国側がやや音を上げたとの見方もできる。
ほぼすべての中国製品に制裁関税を広げる「第4弾」による影響は中国経済よりも米国経済のほうが大きいともされている。だからこそ米国株式市場が大きく下落していた。そうであれば、米国側が多少なり折れてこなければ、中国側が先んじて米国側の要求をのむようなことも考えづらい。結局は今回の先送りは、まさに先送りしただけで、交渉の時間的余地を少し作っただけともいえるのではなかろうか。