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日銀はYCCの柔軟化で緩和策の維持を図る、物価高にあって緩和一方通行というおかしな金融政策はそのまま

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 日銀は10月31日の金融政策決定会合で、金融政策の方向を変えることはせず、むしろその維持を図ろうとして、イールドカーブ・コントロールの柔軟化を行った。

 決定会合の公表文のタイトルは「当面の金融政策運営について」となっており、今回も金融政策の変更ではなく、テクニカルな微調整との位置付けとなる。

 「日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、長短金利操作の運用をさらに柔軟化することを決定した。具体的には、長期金利の目標を引き続きゼロ%程度としつつ、その上限の目途を1.0%とし、大規模な国債買入れと機動的なオペ運営を中心に金利操作を行うこととする」

 つまり、長期金利の目標を引き続きゼロ%程度としつつ、その上限を前回の0.5%から1.0%に引き上げて「目途」とすることで、かなり曖昧なターゲットにした。これにより、1%で何としても止めるということはしないことを示した。

 具体的には毎営業日連続の指値オペを修正した。必要に応じて、固定利回り方式の長期国債の買入れを複数日に亘って行う旨を予め公表するとすることで、毎営業日連続での指値オペのオファーはなくなることになる。実際に11月1日に指値オペのオファーはなかった。

 複数日に亘って行う指値オペでは、買入の量を無制限にするのかどうかは明らかではないが、無制限にしてしまうと公表文にあるように「副作用も大きくなりうる」ことになってしまう。

 これによって実質的に長期金利コントロールは形骸化する。

 植田総裁は、1%を大幅に上回るとはみていないと会見でコメントしたが、日銀の長期金利に対する相場観は物価に対するものと同様に正確性を欠くことが多いため、むしろ1%を大きく上回る可能性も意識する必要があるかもしれない。

 公表文には「粘り強く金融緩和を継続する方針」、「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」という言葉があるように、頑として方向転換すらしない姿勢を示した。物価高にあって緩和一方通行というおかしな金融政策である。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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