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乾癬とメタボの意外な関係 - 最新の研究でわかった生活習慣病との関連性

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【乾癬とメタボリックシンドロームの関連性】

乾癬は慢性の炎症性皮膚疾患で、皮膚に赤みを帯びた発疹やかさぶたが現れることを特徴とします。実は、この乾癬と肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などのメタボリックシンドロームとの関連性が近年明らかになってきました。

疫学調査によると、乾癬患者さんではメタボリックシンドロームの有病率が高いことが示されています。特に肥満との関連性が強く、体重や体脂肪率が高いほど乾癬のリスクが上昇することがわかっています。さらに、乾癬の重症度とメタボリックシンドロームの重症度にも相関関係があるようです。

乾癬とメタボリックシンドロームの関連性には、遺伝的素因、炎症性サイトカインの関与、生活習慣などの共通のリスク因子が関係していると考えられています。例えば、乾癬の炎症部位から放出されるTNF-αやIL-17などの炎症性サイトカインが、全身の脂肪組織や血管に作用し、インスリン抵抗性や動脈硬化を引き起こす可能性が指摘されています。

【乾癬治療におけるメタボリックシンドロームの影響】

メタボリックシンドロームの存在は、乾癬の治療選択や効果に大きな影響を与えます。例えば、メトトレキサートやシクロスポリンは肥満患者さんでは副作用のリスクが高くなるため、慎重に使用する必要があります。一方、IL-17阻害薬やIL-23阻害薬は体重に関係なく高い効果が期待でき、比較的安全に使用できるとされています。

また、肥満は乾癬の治療効果を低下させる要因の一つです。体重が多いほど、一定量の薬剤の効果が得られにくくなるためです。実際に、体重減少によって乾癬の症状が改善し、治療への反応性が高まることが報告されています。

【生活習慣の改善による乾癬とメタボリックシンドロームの管理】

乾癬患者さんにおけるメタボリックシンドロームの管理には、薬物療法だけでなく生活習慣の改善が欠かせません。減量を目的とした低カロリー食は、乾癬の症状を改善し、全身治療薬の効果を高めることが複数の研究で示されています。また、地中海食やケトン食など抗炎症作用のある食事療法も注目されています。

運動習慣も乾癬の症状改善に有効です。適度な運動は体重管理だけでなく、酸化ストレスの軽減や炎症性サイトカインの抑制につながります。さらに、禁煙や節酒も乾癬の悪化防止や心血管リスクの低減に重要な役割を果たします。

乾癬は皮膚だけでなく全身に影響を及ぼす疾患であり、メタボリックシンドロームとの関連性を理解することが大切です。薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせた総合的なアプローチが、乾癬とメタボリックシンドロームの両方の管理につながるでしょう。皮膚科医とかかりつけ医、管理栄養士らと連携しながら、一人ひとりに合った治療法を見出していくことが重要です。

参考文献:

Am J Clin Dermatol. 2024 May 15. doi: 10.1007/s40257-024-00857-0.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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