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ブラジルとアルゼンチンが共通通貨創設を協議と報じられる

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 南米ブラジルのルラ大統領とアルゼンチンのフェルナンデス大統領は、共通通貨の創設に向けて協議する方針を示した。両氏がアルゼンチンメディア「ペルフィル」に寄稿して明らかにした(23日付日本経済新聞電子版)。

 南米の二大経済国である両国は数十年にわたり、域内におけるドルの影響力に対抗するため通貨統合に向けた選択肢をしばしば検討してきたとされる。

 2019年にも両国の共通通貨「レアル・ペソ」の構想が浮上した。当時のブラジルのボルソナロ大統領、アルゼンチンのマクリ大統領が合意したものの、ブラジル中央銀行が慎重姿勢をみせたことで大きな進展はみられなかった。

 当日と状況がそれほど大きく変わったとは考えづらく、ブラジル中央銀行などの姿勢次第では立ち消えになる可能性はある。

 南米共通通貨の名称としてスペイン語で南を意味する「スル」が検討されている。ブラジルとアルゼンチンはともに左派政権で、低所得者層を支持基盤とする共通点がある(23日付日本経済新聞電子版)。

 もし仮に南米共通通貨が誕生したとすれば興味深い実験となる。

 むろんEUの通貨統合という壮大な実験事例が過去にあった。現在では大きな経済圏として機能しているものの、2010年にギリシャの財政状況の悪化が表面化したことをきっかけとしてユーロ圏での信用不安が巻き起こり、ギリシャやポルトガル、イタリアなどの国債利回りが急騰するなどしたことがあった。

 アルゼンチンは2021年6月に5月末が期限で不払いだった日米欧などで構成するパリクラブ(主要債権国会議)に対する債務について、2022年3月末まで交渉を継続することで合意したと発表した。これによって10回目となるデフォルトは回避していた。つまり過去9回デフォルトしており、今後もその懸念は残る。

 ブラジルも債務問題など抱えており、果たして通貨統合によって、それが解決に向けたものとなるという保証もない。それでも通貨統合が可能となり、それが経済などに良い影響が出たとすれば、今後は新興国同士で同じような動きが拡がる可能性もないとはいえない。

 国際通貨基金(IMF)によると、両国の人口合計は2億6000万人、国内総生産(GDP)は2兆5200億ドル(約330兆円)の経済圏となる(23日付日本経済新聞電子版)。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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