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”激昂”今村復興相の「出ていけ」「うるさい」より重大な問題発言

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
首相官邸前で、今村復興大臣に抗議する人々

「出ていきなさい!」「うるさい!」―今村雅弘復興大臣は、今月4日の記者会見で、福島第一原発事故での国の対応や責任を問いただした記者に対し、激昂。机を叩き、罵声を浴びせた。そうした乱暴な言動もさることながら、会見での発言内容が、原発事故対応についての法律に反し、「責任放棄」との指摘がある。4日の今村復興相の発言は何が問題だったのか。被災者支援団体や野党議員に聞いた。

〇復興の要である法律を理解していない復興大臣

4日の会見で、フリー記者の西中誠一郎氏が問いただしたことは、自主避難者への対応についてだった。福島第一原発事故(2011年3月)で、政府の定めた避難区域は「年間20ミリシーベルト以上被ばくする場所」と、事故以前の大人の年間被ばく許容量1ミリシーベルトを大幅に超えるものだったため、避難区域の外でも、特に小さな子どもを持つ親たち等は、全国各地へ避難した。こうした自主避難者たちへの避難先での住宅支援が、今年3月に打ち切られたことについて、西中氏は国の責任を問うたのである。

西中誠一郎氏撮影による動画Ourplanet-TVのチャンネルより

激昂する今村復興相の姿は、各局のニュース番組でも報じられたが、冷静さを欠いて怒鳴り散らしたことだけではなく、むしろ、その発言内容の方が問題だろう。環境NGO「FoE Japan」の満田夏花氏はこう批判する。

「今村復興相は、自主避難を続ける人々について自己責任だと切り捨てましたが、原発事故子ども・被災者支援法では、原発を推進してきた国に、自主避難者も含め被災者救済の責任がある、とはっきり書かれています。被災者支援のキーとなる法律に反する発言をしたという点で、今村復興相は厳しく追及されるべきだと思います」。

原発事故子ども・被災者支援法の成立のため、尽力した川田龍平参議院議員も、こう苦言する。

「当事者に寄り添う視点が欠けている政府に真の復興ができるのか?と首を傾げざるを得ません。怒鳴った事よりも、復興を担当する政府の代表に、被災者が今も置かれている現状への想像力がなさすぎる事に危機感を感じます」。

約2万6000人いるとされる福島第一原発事故による自主避難者には、小さな子どもを抱えた母親だけで避難したケースも多く、経済的にも困窮している。西中氏が「(自主避難者を)路頭に迷わさないでください!」を叫んだのも、そうした現実があるのだ。

自主避難者たちの相談、支援を行っている「避難の協同センター」事務局長の瀬戸大作氏は、こう語る。

「避難中のシングルマザーたちは本当に追い詰められています。彼女たちは働いていないわけではありません。しかし、非正規雇用で、最低賃金で働いているというケースがとても多い。男性の避難者でも、やはり非正規で経済的に困窮しているということもあります。ですから、この3月に住宅支援が打ち切られたことは、とても深刻です。先日、ある避難者の方から『住む場所もお金もない』と連絡を受けました。聞いてみると、現金は1000円しかないと言います。その後、その方とは連絡が取れなくなってしまいましたが、どうしているのかとても心配です」。

〇今村復興大臣の発言は責任放棄

福島県が先月公表した報告によれば、住宅支援が打ち切られた以降も、県外避難者の約8割が避難先での生活を継続すると答えたという。今村復興相は4日の会見で「(福島県内に)帰っている人もいる」と強弁したが、帰りたくても帰れない避難者に対し、どう支援していくか、具体的なことは何一つ語っていない。原発事故を起こしてしまった責任は間違いなく、東京電力と国にある。それは、原発事故子ども・被災者支援法や、先月17日に原発避難者訴訟で前橋地裁が下した判決文でも明記されていることだ。自身で「公式の場」と言う記者会見で、臆面もなく事実と異なる発言をし、それを追及されると、逆上して怒鳴り散らす。ネット上では、今村復興相の辞任を求める署名も始まっているが、自身の職務内容について正しい認識もなく、その責任を放棄するならば、その役職も辞するべきであろう。

(了)

以下、4日の記者会見での今村復興大臣と西中氏のやり取りの一部 

文責・小原美由紀

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西中誠一郎さん「帰れないから避難生活を続けなくてはいけない。それは国が責任をとるべきではないでしょうか?」

今村復興大臣「だから、国はいろんな形で対応してるじゃないですか。現に帰ってる人もいるじゃないですか。」

西中「帰れない人はどうなんでしょう。帰れない人はどうするんですか?」

今村「どうするって、それは本人の責任でしょうが、本人の判断でしょうが。」

西中「自己責任ですか?  自己責任だとお考えですか?」

今村「それはそうだと思いますよ。」

西中「あ、そうですか、わかりました。

それが国の姿勢なわけですね。責任をとらないと。」

今村「そういう一応の線引きをして、ルールに則って、これまでそうしてきたわけですから。そこの経過はわかってもらわなければならない。

だからそれは、さっきあなたが言ったように裁判でもなんでもやればいいんじゃないですか。やったじゃないですか。

それなりに国の責任もありますねと言った。でも、現実問題、補償の金額だって、ご存じの通りの状況でしょう?

そこはね、ある程度、大災害が起きた後の対応として国としてはできるだけのことはやったつもりでありますし、たりないというのであれば、今言ったように、福島県の一番身近に寄り添う人を中心に、国が支援をするというしくみでやっていきます。」

西中「自主避難の人にはお金が出ていません。」

今村「まってください、あなたはいったいどういう意味でそんなこと言ってるかわからないけど、ここは論争の場ではありませんから! 

ま、ま、後できてください。」

西中「責任もって回答してください。」

今村「責任もってしてるじゃないか!なんて、君は無礼なことを言うんだ!

ここは公式の場なんだよ!」

西中「そうです。」

今村「なにが無責任だと言うんだよ! (机をたたく)

撤回しなさい!(西中さんを指さす)」

西中「撤回しません!」

今村「しなさい!出て行きなさい! もう二度と来ないでください、あなたは!」

(一礼して退出しようとする)

西中「これはちゃんと記述に残してください」

今村「どーうぞ。そんな、人を中傷誹謗するようなことはゆるさんよ!絶対!」

西中「避難者を困らせてるのはあなたです。」

今中(退出しながら)「うるさい!!」

西中「路頭に迷わさないでください!」

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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