「小銭は20枚を超えたら受け取れません」の誤解
海外の笑い話的なニュースとして、罰金の類をトラックに満載した小銭で支払ったとの話を見聞きした人は多いはず。日本でも似たような所業がなされそうだが、またそこまでいかなくとも、例えば貯金箱へ一杯にため込んだ小銭をレジでの支払いとして差し出す事例はありそうだが、実は日本ではその類の支払いはできないことになっている。
これは「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」という法令でしっかりと定められているもので(「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律(法令データ提供システム)」)、該当する部分は次の通り。
(法貨としての通用限度)
第七条 貨幣は、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する。
つまり現行で使用されている補助貨幣としての小銭、たとえば五円玉や十円玉は、それぞれ額面の20倍までが「法の下でその価値を認められた法貨として通用する、相手は引き取りを拒否できない」ということ。もちろんこれはいちどきの支払いの上での話なので、貯金箱などで蓄財する際に十円玉は20枚を超えて貯めたら意味が無いということではない。
このように制限を設けているのは、先の「トラック満載の小銭」の話のように、いちどきの取引で大量にやり取りしようとすると、受け取り側が不便をこうむってしまうため。取引を便利なものとするために作られた貨幣なのに、かえって不便になったのでは元も子もない。もちろん20枚を超えても受け取り側は受け取ることもできるが、義務は生じない。
ここで注意してほしいのは、「貨幣は、額面価格の二十倍まで」という点。一部で誤解されている話として「小銭は20枚まで」というものがある。根拠は上記法令によるものだが、微妙に解釈が間違っている。今法令で定めているのは「1貨種につき」であり、「一度の取引につき貨幣合計で」ではない。複数種類の貨幣を用いる場合、それぞれの種類について20枚までは法貨として通用する。
例えば6480円の支払いを「五百円玉12枚と、百円玉4枚、十円玉8枚で合わせて24枚」で行うとする。「小銭は20枚まで」と勘違いしていると「これでは受け取ってくれないな」と頭を抱えることになるが、実際には受け取り側は受け取りを拒否できない。五百円玉、百円玉、十円玉それぞれが一度の取引で20枚以下に収まっているので法貨として通用しているからだ。
とはいえ、混雑しているレジで財布の中の小銭を目の前でばら撒き、数えながら支払いをするのはスマートで無いことに違いは無い。貯金箱などにぎっしりと小銭を貯めこんだら、銀行や郵便局に行き、自分の口座に預貯金をする形で、ひとまとめにすることをお薦めする。
小銭専用の口座を設けて、中長期的な蓄財の手段とするのも面白そうだ。「チリも積もれば山となる」を、口座の額面で実感出来るに違いない。
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