米ツアーは来年も「ほぼ無観客」だが、前向きさに学ぶ「コロナ禍の歩み方」
2021年の年明け後も米ツアーは無観客試合が続くであろうという淋しい知らせが耳に入ってきた。観客を入れるとしても、ごく少数に限定される見込みだ。米ゴルフ界が、かつてのような活況を呈する日は、いつごろ到来するのか。その先行きは不透明なままだ。
【新年も「無観客」あるいは「ごく少数」】
米ツアーの新シーズン(2020-2021シーズン)は、すでに今年9月から始まり、開幕シリーズの合間には昨季から持ち越されたメジャー大会も開催された。
全米プロ、全米オープン、マスターズ。観客がいないメジャー大会は、やっぱり盛り上がりに欠け、選手たちのモチベーションや戦意にも少なからず影響を及ぼしていたことは言うまでもない。
暦が2021年に変わるころには、そんな状況が改善されることを誰もが望んでいる。
しかし、ハワイで開催される新年初戦のセントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズは「観客を入れるとしても、ごく少数」になる予定。続く第2戦のソニー・オープンは無観客になるとハワイの地元紙が報じている。米本土に移って開催される3戦目のアメリカン・エクスプレスは、無観客になることがすでに発表されている。
そして4戦目、タイガー・ウッズの出場が期待されているファーマーズ・インシュアランス・オープンも「無観客で開催する」ことを、11月30日に泣く泣く発表。米ゴルフ関係者は一様に肩を落とした。
その後に予定されているのは、かつて松山英樹が連覇した、あのフェニックス・オープン。大観衆で沸き返る米ツアー最大のフェスティバルで知られる同大会は「なんとかギャラリーを入れたい」と切望しているが、現実的には少数限定になりそうな見込みだという。
カリフォルニアで開催されるAT&Tペブルビーチ・ナショナル・プロアマとジェネシス招待は、新型コロナの感染拡大が著しいロサンゼルスの状況を鑑みると、観客を入れることは、ほぼ不可能と見られており、米ツアーは当面、かつての賑わいを見ることはなさそうである。
【それでも、前向き】
米ゴルフワールド誌によれば、そんな苦境下にありながらもファーマーズ・インシュアランス・オープンの大会エグゼクティブ・ディレクターのマーティー・ゴーシック氏は、きわめて前向きな姿勢を見せているという。
同大会はこの10年、財政状況が逼迫しており、大会運営の台所は「火の車」だ。無観客となれば、入場料収入はゼロとなり、マーチャンダイズ・テントでのお土産やコンセッション・スタンドでの飲食物の売り上げもゼロとなる。
「もちろん、それは壊滅的な打撃だ」とゴーシック氏は頭を抱える一方で、「ビッグニュースもある」。観客を入れることは叶わないが、開催地のサンディエゴ郡政府から「プロアマは開催OK」という許可が下りたのだ。
「月曜プロアマも水曜プロアマもできれば、これは不幸中の幸い。大きな収益になる」
月曜プロアマの参加料は1人4000ドル、水曜プロアマは8000ドル。人数や組数がどの程度に設定されるかは不明だが、少なく見積もっても数千万円の収益になる。
果たしてコロナ禍でプロアマへの参加希望者がいるのか、いないのかが気になるが、ゴーシック氏によれば、コロナ禍だからこそ、「企業のニーズは高まっている」。クライアントとの接点が激減している昨今、プロアマに参加することで直接的なビジネスチャンスが創出できるという部分が重要視されているそうで、サンディエゴ郡やカリフォルニア州以外からも問い合わせが来ているという。
例年ならホスピタリティ・テントの敷設は30万スクエアフィートに及ぶそうだが、2021年大会はわずか7000スクエアフィートにとどめ、現地入りするメディアの人数も例年の350人を40人程度まで減らす予定。それによって大会側の出費は大幅に抑えられる。
逆に、コース上で仕事をするボランティアの人数は例年並みの450人規模をキープ。それは、選手たちのボールの行方を見守ったりしてアシストし、試合進行をスムーズにするために、最低限、確保すべきということなのだろう。
厳しい現状に直面している中で、なんとか好材料を見い出し、できることを行なっていく。そんな地道な歩みが、いつか花開くことを信じて、たとえ一歩ずつでも前進していこうと、あらためて感じさせられた。これは、米ゴルフ界の姿勢に学ぶ、コロナ禍の歩み方だ。