ワールドチャンピオン、ジェンソン・バトン参戦でさらにプライオリティ高まるSUPER GT
「国内レースで最も人気が高い」という枕詞が多様される「SUPER GT」。サーキットの実況アナウンサー・司会者として様々なレースに携わる中で、改めて「SUPER GT」の人気と求心力には驚かされる。今年はレクサス、ニッサン、ホンダが参戦するGT500クラスのマシンがリニューアルし、GT300クラスにはベントレーが参戦するなど常に話題に事欠かない「SUPER GT」だが、この夏は超大物ドライバーの参戦が大きな話題となっている。元F1チャンピオンのジェンソン・バトンの鈴鹿1000kmレースへのスポット参戦だ。
早くも話題沸騰のバトン参戦
F1ドライバーとしてモータースポーツファン以外にも知名度がある英国人ドライバー、ジェンソン・バトン。今年は「マクラーレン・ホンダ」のF1シートを若手のストフェル・バンドーンに譲り、同チームのアンバサダーとしてコクピットから一歩離れた活動をしている。
とはいえ、バトンはインディ500に参戦したフェルナンド・アロンソの代役としてF1モナコGPに出場。スピードを増した今季のF1マシンを事前テストも無しに果敢にドライブするなど、今も現役のトップドライバーであることに変わりはない。
そんなバトンが昨年からの噂通り、「SUPER GT」に参戦する。8月に鈴鹿サーキットで開催される「SUPER GT」第6戦・鈴鹿1000kmレースに参戦する。第3ドライバーの起用が可能となる鈴鹿1000kmで、GT500クラスの「#16 MOTUL MUGEN NSX-GT」をドライブする。チームメイトは武藤英紀と中嶋大祐だ。
テストデーから好感触
これまで中嶋一貴、ヘイキ・コバライネン、「全日本GT選手権」時代にまで遡ればエリック・コマスや鈴木亜久里など数多くの元F1ドライバーの参戦があった「SUPER GT」。昨今では元F1ドライバーの参戦はすでにファンにとっても真新しいトピックではなくなってしまっているほど、「SUPER GT」では元F1ドライバーを起用する機会が多い。ただ、ジェンソン・バトンに関しては元F1ワールドチャンピオン(2009年)で、F1優勝・通算15回を誇る別格の存在と言える。
そんなバトンは6月に鈴鹿で開催されたSUPER GTタイヤメーカーテストに参加。横浜ゴムのタイヤを装着する「#16 MOTUL MUGEN NSX-GT」をテストドライブし、初回のテストとしては上々のタイムを記録。ミッドシップレイアウトのNSX GT500に横浜ゴムのタイヤという新しいパッケージで苦戦が続く「TEAM無限」だが、夏の1000kmは歴史上も横浜ゴムのタイヤ装着車が上位に食いこむことが多く、条件面でも充分に期待が持てる。そして、天候がレース中に変化することも多々ある長時間レースにおいて、バトンのドライビング能力は大きな武器となるだけにシチュエーションがマッチすれば見応えのある走りになるだろう。
第3ドライバーとして登録しながら実際にはレースを走らないケースも多いが、今回のバトンの起用に関してさすがにそれはないだろう。バトンは「SUPER GT」スポット参戦に意欲的で、6月30日(金)、7月1日(土)のSUPER GT合同テストにも参加する。
加速するドライバー人気
6月のタイヤメーカー合同テストは平日開催であるにも関わらず、ジェンソン・バトンの参加を聞きつけたファンが数多く来場し、バトンのスポット参戦は早くも大反響だ。
かつてはバラエティ豊かな車種が人気の秘密と言われてきた「SUPER GT」だが、近年はファンの来場動機がクルマよりもドライバー(選手)である傾向が強くなってきている。ファンの目線から見て「世界一面白いレース」としての呼び声も決して言い過ぎではないほどにレースの質も面白さも向上している「SUPER GT」。地球規模で人気と影響力があるジェンソン・バトンの参戦は今後、同シリーズにとっても大きなターニングポイントになるだろう。
バトンだけでなく、鈴鹿1000kmにはレクサスの「LEXUS TEAM WedsSport BANDOH」から小林可夢偉もスポット参戦が決定。元F1ドライバーという肩書きに留まらず、WECのル・マン24時間レースで驚異的なコースレコードタイムを記録し、ポールポジションを獲得した走りが「SUPER GT」でも楽しめる。
鈴鹿サーキットは来年から独自企画の耐久レース「鈴鹿10時間耐久レース」を実施することをすでに発表しており、「SUPER GT」鈴鹿1000kmの開催は今年がラスト。第3の刺客が参戦する特別な大会も今回で見納めとなるだけに、グローバルに活躍するトップドライバーたちの競演は見逃せないものになりそうだ。