チェコ開発「移動式ドローン迎撃車」"Viktor"ウクライナ軍が訓練「発砲している時も車体は安定」
2023年7月に移動式ドローン迎撃車「Viktor」の訓練風景のショート動画が公開されていた。
2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。
2022年10月からロシア軍はミサイルとイラン政府が提供した標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンの「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」で首都キーウを攻撃している。2023年7月に入ってからもロシア軍によるイラン製軍事ドローンでの攻撃は全く止まっていない。
ウクライナ軍はロシア軍のイラン製軍事ドローンを迎撃するために、専用車「移動式ドローン迎撃車」を開発して、警報が鳴ると、標的付近まで専用車で向かっていき車やバンの後方部に設置している機関銃や地対空ミサイルで迎撃して破壊する「移動式ドローン迎撃部隊」もつくって使用している。
今回のショート動画でも「Viktor」の後部から上空に向かって発砲しているシーンが公開されている。チェコのメディアでは「信じられないかもしれませんが、Viktorは発砲している時でも車体が揺れることはありません」と紹介していた。「移動式ドローン迎撃車」は地面が不安定な場所にも行って上空のドローンを精確に迎撃しないといけないので、後部で連続的に発砲している時にも車体が安定していることはとても重要である。
2023年2月にチェコ政府とオランダ政府が協力して、「移動式ドローン迎撃車」を開発してウクライナ軍に提供することをチェコの国防副大臣のダニエル・ブラスコヴィッチ氏が発表していた。オランダ側で100台のトヨタのSUV(Sport Utility Vehicle:スポーツ・ユーティリティ・ビークル「スポーツ用多目的車」)を購入して、チェコ側でマシンガンや重機関銃を購入し、チェコの軍事メーカーが「移動式ドローン迎撃車」に改造してウクライナ軍に提供することを明らかにしていた。2023年7月では115台のViktorがウクライナ軍に提供されている。
2023年3月には完成した「移動式ドローン迎撃車」の「Viktor」がウクライナ軍に15台提供された。「Viktor」にはKPV重機関銃が1台につき2機搭載されている。ウクライナ政府によると「Viktor」は操縦もメンテナンスも簡単で、1分間に600発の砲撃ができるとアピールしていた。長距離の標的でも精確に狙って撃ち落とすことができる。1分間(60秒)で600発だから、10秒で100発、1秒で10発の砲撃ができる。
ウクライナ軍では自らが開発したり改造したりして作った「移動式ドローン迎撃車」や、このように各国から提供されたものでロシア軍のイラン製軍事ドローンを迎撃している。ロシア軍のドローンが近づいてきたというサイレンが鳴ると運転手が「移動式ドローン迎撃車」を運転してその場所へ向かい、車両の後方に設置した重機関銃を撃つ別の兵士が上空のドローンを迎撃する。
このような移動式ドローン迎撃車がミサイルやドローンの標的にされることも多い。機動性があるので上空からの攻撃を探知したら、すぐに迎撃したり逃げたりすることもできる。重機関銃には大量の弾丸があるが、大量の軍事ドローンでいっきに襲撃してきたり、ミサイルと軍事ドローンの両方で攻撃してきたり、上空からの攻撃をすぐに探知できずに逃げ遅れたりしたら非常に危険で常に命がけである。
2022年末からウクライナ軍では多くの「移動式ドローン迎撃車」を使用している。悪天候の日や夜など視界不良の時には上空の攻撃ドローンを探知して迎撃することは困難である。
2023年5月にチェコのブルノで開催されていた「International Defence and Security Technologies Fair2023」という国際兵器見本市にも「Viktor」が展示されていた。
▼移動式ドローン迎撃車"Viktor"の訓練動画
▼「移動式ドローン迎撃車"Viktor"」
▼1分間に600発の砲撃ができることをアピール
▼チェコの国際兵器見本市に展示されていた「Viktor」