両親の虐待で両足切断の9歳少年 児童虐待防止の功績で大英帝国勲章
■史上最年少の受章
[ロンドン発]実の両親の虐待で両足を切断した英南東部ケント州の少年トニー・ハッジェルくん(9つ)が児童虐待防止に取り組み、史上最年少で大英帝国勲章(BEM)を授与された。
児童虐待者に対する量刑強化を実現させた養母のポーラさんは英BBC放送に「自分が味わった苦しみを他の子どもたちに味わわせたくないと思っているのでしょう」と語っている。
トニーくんは生後41日の時、実の両親から暴行を受け、顔面に複数の骨折、脱臼、外傷を負った。その後10日間にわたって放置された結果、片耳が聞こえなくなり、臓器不全、敗血症を起こした。
■23回の手術と8回の輸血
エヴェリナ・ロンドン小児病院で23回の手術と8回の輸血を受けたものの、3歳の時、両足を切断せざるを得なくなった。股関節は脱臼したままだ。
2018年、実の両親は児童虐待罪で禁固10年の実刑判決を受けた。母親は釈放されたものの、父親は服役中だ。
ハッジェル夫妻の養子に迎え入れられたトニーくんは20年のコロナ危機でトム・ムーア退役大尉(21年に100歳で死去)が歩行器を使って自宅の庭を100往復してNHS(国家医療サービス)のため募金を集めたのに触発され、自らも慈善活動を始めた。
■キャサリン皇太子妃の“ベストフレンド”
5歳だったトニーくんは義足と松葉杖で10キロメートルを歩いて自分の命を救ってくれたエヴェリナ・ロンドン小児病院のために日本円にして9万円弱を集めようと決意した。
トニー・ハッジェル基金に寄せられた募金はこれまでに3億3000万円近くにのぼる。
トニーくんは「身体的、精神的、心理的虐待を受けた子どもたちの生活を向上させる」ことを目指している。トニーくんはキャサリン英皇太子妃の“ベストフレンド”の1人と英大衆紙デーリー・メールは伝えている。
18年、ハッジェル夫妻は児童虐待とネグレクトに対する刑の厳格化を求める請願を開始。22年に法制化され、イングランドとウェールズでは児童虐待者に対する最高刑は禁固14年から終身刑に引き上げられた。
■「彼の生きる力には驚かされっ放し」
養母のポーラさんは大英帝国勲章の授与について英メディアに「彼の生きる力には驚かされっ放しです」と話す。
「この賞はトニーには大きなレガシーになります。9歳の少年にも何ができるのかを示している。国民はとても親切です。彼らはいつもトニーを称賛し、その道を手助けしてくれます」
当のトニーくんは英24時間TVニュースチャンネルの「スカイニュース」に「メダルは自分にとってとても意味のあるものです。重いかな、重くないかな」と答えている。