メラノーマと糖尿病の意外な関係 ー 最新メタ分析で明らかになったリスクと予後への影響
今回は、デンマークの研究チームが行った最新のメタ分析をもとに、糖尿病とメラノーマの関係性について詳しく解説します。
メラノーマは、皮膚がんの一種で、色素細胞(メラノサイト)から発生する悪性腫瘍です。日本では年間約4,000人が新たに診断され、罹患率は年々増加傾向にあります。一方、糖尿病も国内患者数が約1,000万人と見積られ、今や国民病とも言える状況です。そこで気になるのが、糖尿病とメラノーマの関係性です。
【糖尿病はメラノーマの発症リスクを高めるのか?20の大規模研究から検証】
今回のメタ分析では、20の大規模研究、総計で約392万人のデータを分析しました。その結果、糖尿病とメラノーマの発症リスクに明確な関連は見られませんでした。糖尿病患者のメラノーマ発症リスクは、非糖尿病患者と比べて統計的に有意差がありませんでした(RR: 1.05, 95%CI: 0.99–1.12, p = 0.10)。
また、男女別の解析でも同様の結果が得られました。男性の糖尿病患者では非糖尿病患者と比べてRR: 1.08(95%CI: 0.98-1.20, p = 0.11)、女性ではRR: 0.97(95%CI: 0.91–1.04, p = 0.41)と、いずれも有意な差は見られませんでした。
ただし、日本人を対象とした大規模な研究はまだ少ないのが現状です。人種によってメラノーマの発症リスクが異なることが知られているため、今後は日本人を対象とした質の高い研究の蓄積が望まれます。また、糖尿病以外のメラノーマのリスク因子についても、さらなる研究が必要でしょう。
【2型糖尿病はメラノーマの病期を進行させる ー 3つの研究から明らかに】
次に、糖尿病とメラノーマの病期の関係を調べた3つの研究について見ていきましょう。メタ分析の結果、2型糖尿病患者は非糖尿病患者に比べ、診断時のメラノーマの深さが1mm以上である割合が35%高いことがわかりました(RR: 1.35, 95%CI: 1.22–1.49, p = <0.001)。さらに、潰瘍を伴う割合も30%高かったのです(RR 1.30, 95%CI: 1.00-1.68, p = 0.05)。
つまり、2型糖尿病患者で見つかるメラノーマは、より進行した状態にある可能性が示唆されました。進行メラノーマは、リンパ節転移や遠隔転移を起こしやすく、予後不良となるリスクが高まります。糖尿病患者の皆さまには、日頃から皮膚の変化に注意を払っていただき、少しでも気になることがあれば早めに皮膚科を受診されることをおすすめします。
【糖尿病とメラノーマ患者の予後の関係は? ー さらなる研究の蓄積が必要】
最後に、糖尿病がメラノーマ患者の予後に与える影響についてです。今回のメタ分析では、4つの研究が該当しましたが、各論文の研究デザインや対象集団にばらつきがあり、統合解析を行うことができませんでした。
糖尿病とメラノーマ特異的生存率の関係について、明確な結論を出すためには、より大規模かつ質の高い前向きコホート研究を行う必要があります。また、糖尿病の病態や治療法が、メラノーマの進行や治療効果に与える影響についても、さらなる検討が求められます。
以上、デンマークの研究チームによる最新のメタ分析をもとに、糖尿病とメラノーマの関係性について詳しく解説しました。メラノーマは早期発見・早期治療が何より大切です。糖尿病の有無に関わらず、自分の皮膚の変化にアンテナを張り、定期的な皮膚チェックを習慣づけましょう。皮膚に異変を感じたら、迷わず皮膚科を受診してください。
参考文献:
- Tønder, J.E., Bønnelykke-Behrndtz, M.L., Laurberg, T. et al. Melanoma risk, tumour stage, and melanoma-specific mortality in individuals with diabetes: a systematic review and meta-analysis. BMC Cancer 24, 812 (2024). https://doi.org/10.1186/s12885-024-12598-8