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“もう1年やりたい”と公言する上原浩治をもう1年見たい!

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
不完全燃焼のまま2017年シーズンを終えた上原浩治投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 上原浩治投手にとって2017年シーズンは不完全燃焼のまま幕を閉じた。

 昨年オフに熱いビデオ・メッセージが届き、2連覇を目指すカブスから重要な中継ぎ新戦力として迎えられた。にも関わらず、ポストシーズンでは出場枠に入ることができなかった。成績不振で外れたのならまだしも、体調不良とあっては納得すらできなかっただろう。しかもその原因もはっきりせず明確な治療も行えなかったのだから、怒りの矛先を向ける場所も見出せなかったはずだ。

 結局チームはドジャースにリーグ優勝決定シリーズで敗退し、念願の2連覇は達成できなかった。ポストシーズンの中継ぎ陣の防御率も6.21に終わっていただけに、ポストシーズンでの活躍を期待されカブスにやって来た上原投手は忸怩たる思いのままシーズンを終えるしかなかった。そしてオフにFA選手としてチームを離れた。

 上原投手が毎日新聞で連載している『浩志印』が最近アップされた。すでに来シーズンに向けトレーニングを再開していることを報告し、タイトル通り「もう1年やりたい!」という思いを綴っている。これまで上原投手を取材してきた立場からも、オフに入った途端「もう1年見たい!」という思いが日ごとに増してきている。まだ彼の野球人生の集大成を見れていないからだ。

 これまで上原投手は何度となく「NPB在籍10年、MLB在籍10年」と「日米通算100勝100セーブ100ホールド」を目標にしていることを公言してきた。彼の野球人生を象徴するような目標に、いつしかこちらもそれが達成される日を夢見てきた。今シーズンが終了した時点でMLB在籍は9年となり、日米通算“トリプル・トリプル”もあと9ホールドで達成可能な位置にいる。まさに来シーズンこそが上原投手にとって大きな節目な年になるはずなのだ。

 上原投手はNPB、MLBに関わらず故障と挫折を繰り返しながら選手生活を歩んできた。時として周囲から懐疑的な目を向けられながらも、その度に不死鳥のように蘇ってきた。それこそが上原投手の真骨頂であり、彼の野球人生を支え続けた反骨心だった。日本には名球会という組織が存在し、どうしても多くの人たちが選手の判断基準として通算成績に囚われてしまう。もちろん上原投手の通算成績では名球会入りする投手たちに太刀打ちなどできない。だが上記の2つの目標は上原投手しか達成できないだろう“唯一無二”の勲章なのだ。

 これまで20年以上にわたりMLBの舞台で日本人選手の取材を続けてきた。基本的な取材対象は選手たちが所属するチームではなく選手のみになる。シーズンを通して1対1で対峙していけば、自然と選手に対して感情移入してしまうものだ。これは自分のみならず、現地で取材を続ける日本人メディアの偽らざる感情だと思う。上原投手とも何度となく1対1で対峙していく中で、2つの目標を掲げる彼の思いを感じ取ってしまっているだけでに、このまま終わって欲しくないと思うのは当然だろう。

 来年4月で43歳を迎えるベテランが新しい所属先を探すのは簡単な作業ではないはずだ。だが体調不良があったものの、投球そのものは極端に落ちているわけではない。必ずや上原投手を必要としてくれるチームが現れると信じて止まない。

 今年のキャンプ中に上原投手が「オファーがなかったら辞める。(マイナー契約は)考えていない」と話してくれたことがある。ただ今回ばかりは“男の美学”を引っ込めて欲しい。最悪の場合マイナー契約でもいいからキャンプに参加して、開幕メジャー入りを勝ち取って欲しい。それもまた新たな上原投手の“不死鳥伝説”に加わるのだから…。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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