【人類消滅まであと35時間!?】正義のヒーロー、ウルトラマンが人類に牙をむいた伝説の戦いとは?
みなさま、こんにちは!文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
早いもので7月も終盤ですが、いかがお過ごしですか?
さて、今回のテーマは「正義(ジャスティス)」です。
普遍的かつ核心的なテーマとして挙げられることが多い「正義」。
その言葉の定義も実に様々で、正しいすじみちや、人がふみ行なうべき正しい道と定義される一方、プラトンは国家全体に調和があることを正義とし、アリストテレスは能力に応じた公平な分配を正義としました(広辞苑)。
このように正義の形とは実に様々。人が十人いれば十人分の正義があり、正に十人十色ゆえ、「正義ってなんなんだ?」と掲げたところで一概に定義などできませんし、殺人や窃盗をしてはいけないという普遍的な社会規範があるのが、私達が生きている人間社会・・・。
ややこしくなるのでこの辺にしておきますが、「正義」とは国家単位や宗教、個人によって異なるものであり、それ故に人類史の中で戦争が繰り返されてきたのもまた事実です。
おカタい話はそろそろおしまいにして・・・上述してきたような「なにが善でなにが悪なのか?」といった正義論は、我が国が世界に誇る数多くのアニメ・特撮ヒーロー番組の中で描かれてきました。
その中で、本記事で取り上げるのは円谷プロ制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマンコスモス』。2001年に放送され、人間と怪獣との共存を掲げた本作は大好評を博し、2003年にかけてテレビシリーズ全65話と映画4作(番外編を含む)とロングランシリーズとなりました。
本作の主人公であるウルトラマンコスモスが活躍した2001年から2003年。国際情勢は未曾有の混乱に直面し、アメリカ同時多発テロ事件(911)や、事実上の報復攻撃であるアフガニスタン紛争等、国家や宗教単位における正義が大きく問われた時代でした。
そんな激動の時代の中で、怪獣との共存を目指して活躍したウルトラマンコスモスですが、彼の前に「もう1人のウルトラマン」が立ち塞がります。
その名はウルトラマンジャスティス。「宇宙正義・デラシオン」の意思に従い、ウルトラマンでありながら「人類の排除」を主張、コスモスとぶつかります。
その物語の行く末はどこへ向かうのか。これから少しだけ焦点を当てていきたいと思いますー。
【戦いの場所は心の中だ】力で勝つだけではなにかが足りない!慈愛の勇者、ウルトラマンコスモスとは何者か?
さて、本記事では『ウルトラマンコスモス』の物語について触れていきますが、本題に入る前に少しだけウルトラマンシリーズについて概説をさせてください。
ウルトラマンシリーズは、株式会社円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』(及び特撮怪獣番組『ウルトラQ(1966)』)を起点とするシリーズです。
1966年に『ウルトラマン』が放送され、M78星雲「光の国」からやって来た身長40mの銀色の宇宙人が巨大な怪獣と戦い、最後は必殺光線(スペシウム光線)で怪獣を退治するという物語はたちまち子ども達の心を掴み、最高視聴率42.8%、平均視聴率36.8%を記録する大人気番組となりました。
大衆的な人気を博した『ウルトラマン(1966)』の放映終了後も、その次回作である『ウルトラセブン(1967)』、『ウルトラマンタロウ(1973)』、『ウルトラマンティガ(1996)』、『ウルトラマンコスモス(2004)』、『ウルトラマンアーク(2024)』と世代を跨ぎながらシリーズが続いていきました。
そんな長い歴史を持つウルトラマンシリーズの中で、今回焦点を当てるのは『ウルトラマンコスモス』。本作は2001年から約1年間テレビシリーズ全65話が放送され、全4作の映画シリーズも制作されました。
『ウルトラマンコスモス(2001)』で描かれたのは、ズバリ「怪獣との共存」。これまでのウルトラマンが倒す存在であった怪獣や宇宙人をむやみに殺してしまうのではなく、人間社会に現れた怪獣を保護し、宇宙人とも相互理解に徹するコスモスの姿が、全65話のテレビシリーズにて描かれた後、コスモスの「その後の活躍」を描く映画シリーズが2003年にかけて2本公開されました。
ウルトラマンジャスティスは、『コスモス』の映画シリーズの中で初登場し、ある映画ではコスモスと協力して巨悪を倒す謎のヒーローとして描かれた後、次回作ではコスモスに容赦なく牙をむく厳しい巨人として描かれます。
次章では、そんなコスモスとジャスティスの対立と共闘に触れていきます。
【今から35時間後、人類はリセットされる!?】人類の敵だったウルトラマンジャスティスを変えたものとは?
ウルトラマンジャスティスは、先述したとおりテレビ番組『ウルトラマンコスモス』のその後の物語を描いた、映画シリーズでデビューしました。
ウルトラマンジャスティスは映画『ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET(2002)』にて初登場。本作の終盤、巨悪であるサンドロスに苦戦するコスモスに加勢し、共闘してサンドロスを倒して去って行く謎の超人として描かれました。
その際、ジャスティスは平和を守る「ウルトラマン」であるということ、そして冷酷なサンドロスに虐殺されかける宇宙人を救助した神秘の存在であること以外は謎のままで、ジャスティスが何者であるのか発覚したのは、なんとコスモスとジャスティスが対立するという衝撃の次回作の中でした。
映画『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE(2003)』において人類が、人間と怪獣が共に暮らすことの出来る惑星(遊星ジュラン)へ進出を開始しようとする最中、人類の前にロボット怪獣達を率いて現れたのが、あろうことかジャスティスでした。
そんなジャスティス達を食い止めるために現れたコスモスですが、かつて共に闘った戦友が敵側にまわったことに戸惑いを隠せません。対話を試みようとするコスモスですが、戦う意思のないコスモスに対し、ジャスティスは容赦なく攻撃を開始。戦局はジャスティスに有利に進み、なんとコスモスはジャスティスが率いていたロボット怪獣の攻撃を受けて消滅してしまいます。
ジャスティス達はその後、宇宙施設を徹底的に破壊。「ウルトラマンが敵として現れた」という事実に対策会議を開く各国首脳陣達を前にジャスティスは出現し、35時間後に人類の抹殺(リセット)を行なうことを宣言します。
その理由は「自分は『宇宙正義』と呼ばれる組織の使者であり、その党首であるデラシオンが今から2000年後、人類は宇宙にとって有害な星になると判断したため、人類を消滅させて進化をやり直してもらう」という極めて身勝手な主張でした。早い話が、本来人類を守るはずのウルトラマンの口から「人間は危険だから、お前達を滅ぼす」と唐突に言ってきたわけです。
アメリカをはじめとする各国首脳は徹底抗戦を掲げます。圧倒的な火力でロボット怪獣に攻撃を加えますが、傷ひとつつかない戦況ー。
あと僅かで人類が終わってしまうという大混乱の中、女性の姿で人間社会に潜伏するジャスティスは、夕暮れの中で心優しい少女と子犬(コスモス)に出会います。純粋な少女の笑みと、「子犬(コスモス)はジャスティスの優しさに惹かれたのだ」と言う少女の優しさに、ジャスティスの心は揺れます。
仲間のウルトラマン(コスモス)を殺してまで、ジャスティスが正義に執着する理由ー。それはジャスティスが、かつてコスモスと倒した巨悪・サンドロスを野放しにしたことで、宇宙全体にたくさんの犠牲を生んでしまったことでした。サンドロスはかつて人類とよく似た生命体であり、夢や愛などを掲げる純粋な存在でしたが、結局は悪の道に走り、宇宙各地で虐殺を繰り返し星を滅ぼしていたのです。ジャスティスは「宇宙正義」の一員として地球に来訪し、サンドロスをコスモスと共に退治しますが、厳密には人類のために戦ったわけではなかったのです。
「サンドロスと同じ過ちを繰り返すわけにはいかない」。揺るぎない信念の元で、ジャスティスは絡んでくる暴漢を徹底的に叩きのめしますが、具体的な確証もない上に相手(人類)を信じもせず、「楽な道」を選ぼうとする自分自身にジャスティスは悩みます。
そんな中、街へのロボット怪獣の攻撃が再開。ジャスティスは助けを乞う声を聞き、瓦礫の街に向かうと、助けを求めていたのは先日ジャスティスと出会った少女でした。瓦礫の下敷きになった子犬(コスモス)を、自分の命より大事に思って救助を試みようとする姿にジャスティスは心を打たれます。さらに街を襲うロボット怪獣相手に戦いを挑んだのは、なんとコスモスにかつて助けられた怪獣達でした。
人間と怪獣が一丸になって難局を乗り越えようとする姿に、ジャスティスは「決意」を固めます。ジャスティスは子犬を助け、少女の元に届けます。
「コスモス。これが、お前がこの星を守ろうとした理由か?これが・・・人間の未来を信じた理由なのか?」(ジャスティス)
ジャスティスは宇宙正義に逆らい「人類を守る」決意を固めます。ジャスティスはロボット怪獣に戦いを挑みますが、その圧倒的な戦力に苦戦を強いられてしまいます。そんなジャスティスに手を差し伸べたのは、仲間達の想いを受けて復活したウルトラマンコスモスでした。
「なぜ、私を助ける?」(ウルトラマンジャスティス)
「僕らは、ウルトラマンだから。」(ウルトラマンコスモス)
ロボット怪獣を倒したコスモスとジャスティスが宇宙へと飛び立つと、彼らの前には人類を一斉消滅させるための最終兵器が控えていました。破壊を試みる両者ですが、圧倒的な大きさと火力に苦戦を強いられます。大気圏の摩擦熱で体が溶けながらも、地球を背に必死に守り続ける2人のウルトラマン。ですが、最終兵器を前に歯が立たず、両者は完全に消滅したかに見えましたー。
しかし、地球を背に1つの大きな光が最終兵器の前に現れます。それは「人類を守りたい」という2人のウルトラマンが新たな1人の戦士となった伝説の超人、ウルトラマンレジェンドでした。
「宇宙の大いなる、2つの力が出会いし時。その輝きの中で、真の姿を現わす。」(宇宙の伝説)
ウルトラマンレジェンドは強力な技で最終兵器を完全に破壊します。宇宙の伝説としても語り継がれる存在が出現した予想外の事態に、たくさんの宇宙船を率いて宇宙正義の党首・デラシオンが現れます。
レジェンドは2人のウルトラマンに分離。デラシオンの説得を試みます。
「デラシオン。私は知ったのだ。ウルトラマンコスモスの信じた、この星の命達を。泣き、笑い、怒り、そして、思いやる心を持つこの命達。未来をも含め、彼らは、信ずるにいたる存在だと。」(ウルトラマンジャスティス)
「人類は、決して愚かではない。必ず、その日を正すことのできる存在だ。」(ウルトラマンコスモス)
2人のウルトラマンの説得に、デラシオン達宇宙正義もウルトラマン達を信じることを決定します。そして、宇宙正義が人類に送ったメッセージ。
それは「希望」でしたー。
ウルトラマンジャスティスはその後も、「宇宙正義」の使者としてウルトラマンシリーズに度々出現し、先輩や後輩ウルトラマン達の危機に幾度も駆けつけました。
ある時は異なる世界のウルトラマン達の窮地に駆けつけ、またある時はウルトラマン同士で鍛錬に励み、そしてまたウルトラの星の王女の救助作戦に自ら参加する等、近年のシリーズを概観しても目覚ましく大活躍しています。
数多くの戦局を通じて、ウルトラマンジャスティスが学んできたのは「相手を信じること」ー。
これは私達人類にも課せられた、永久かつ普遍的な命題なのかもしれませんー。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(『ウルトラマンコスモス』の物語、『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズを視聴するなら)
・TSUBURAYA IMAGINATION(通称:ウルトラサブスク、外部リンク)