ミハエル・シューマッハの回復を祈り、歴代マシンを展示するドイツ・ジンスハイム交通博物館
自動車大国・ドイツには数多くの素晴らしいミュージアムがある。ポルシェ、メルセデス・ベンツ、BMWなど国を代表する自動車メーカー所有のミュージアムは自動車ファンやオーナーなら一度は訪れてみたいスポットだろう。先日、ドイツを訪れた際、また一つ感銘を受けるミュージアムを訪問したのでご紹介したい。
ジンスハイム交通博物館
今回訪問したのはバーデン=ヴュルテンベルク州の街、ジンスハイムにある「ジンスハイム交通博物館(Auto- und Technikmuseum Sinsheim)」だ。フランクフルトからは急行列車とローカル線を乗り継いで2時間ほどでアクセスできるので、夜の便で帰国する前に立ち寄ってみるのも良いだろう。
このミュージアムの特徴は「自動車」「オートバイ」に限らず「鉄道」「航空機」「軍用兵器」までありとあらゆる乗り物を展示していることだ。建物の外にはヨーロッパの航空会社で使われていた飛行機や戦闘機が展示されており、コンコルドなどの超音速旅客機の機内にも立ち入ることができる。まさに乗り物好きのパラダイスだ。
中でも「自動車」「バイク」の展示が素晴らしい。自動車博物館によくありがちな自動車黎明期の名車の展示は比較的少なめで、フェラーリやメルセデス・ベンツなど第二次世界大戦以降のスポーツカーやスーパーカーが中心に。現代の子供にも、その親にも見やすい展示であろう。
F1コレクションも充実!
レーシングカーの展示は博物館の規模からすると少なめだが、メーカーの枠を超えたF1の名車がコレクションは必見だ。F1がグローバルなスポーツへと成長していく黄金期とも言える1980年代〜90年代に活躍した「マクラーレン」や「ウィリアムズ」など人気のマシンがあり、さらに70年代のF1を代表する珍車と言える「ティレル」の6輪F1マシンも偉大な存在感を放っている。
日本のファンにとっては何故か現役F1ドライバーだった時代の「片山右京」のパネルも展示されており、ホッとするかもしれない。また、F1の他にはインディカーやマニアックなグループCカーも展示されていて、メーカーの自動車博物館にはない雰囲気が楽しめる。
ドイツの英雄、シューマッハの展示
F1マシンの中で目を引くのがドイツの英雄、ミハエル・シューマッハの展示だ。1991年、彼が代役でF1デビューを果たした時に1戦だけドライブした「ジョーダン191」がまず目を引く。
さらに、1995年に彼が2年連続のF1ワールドチャンピオンを獲得し、アイルトン・セナ亡き後のF1を牽引する存在となったことを証明した「ベネトンB195」は日本のタバコ「マイルドセブン」のカラーリングが施され、強く記憶に残っている人も多いだろう。
そして、シューマッハに関する展示で印象的なのはバイクだ。彼は2006年に一旦F1を引退した後(当時フェラーリ)、モータースポーツへの情熱を抑えることができず、2輪レースに挑戦していた時代がある。市販スポーツバイク、ホンダCBR1000RRをベースにしたマシンでドイツの国内選手権に出場。表彰台も獲得する速さを見せていた。こういう展示があるのもドイツ国内のミュージアムらしいと言えるだろう。
ミハエル・シューマッハは2度目のF1引退後、2013年1月にスキー中の転倒事故によって昏睡状態に。一命はとりとめたものの、現在も自宅での療養が続いており、一度もファンの前に姿を現してはいない。彼が再び、元気な姿を見せてくれることを世界中のファンが祈っている。そんな中、彼がカート時代から付きっ切りで面倒を見ていた息子、ミック・シューマッハはヨーロッパF3選手権に参戦しているし、近い将来にF1ドライバーへと昇格する可能性だってある。
ミハエルが愛したバイクには「#Keep Fighting Michael」の文字が。息子のミックもF3マシンに「KEEP FIGHTING」のロゴを付けて今シーズンのF3を戦うのだ。ミハエル・シューマッハの回復への祈りを込めた展示を行う、愛ある「ジンスハイム交通博物館」。今年2018年はドイツGPも再開されるし、シューマッハファンもF1ファンもドイツ来訪の際に訪れてみてはどうだろう。
【ジンスハイム交通博物館】
住所: Eberhard-Layher-StraBe 1, 74889 Sinsheim
電話番号: +49 7261 92990
アクセス: ドイツ国鉄「Sinsheim Museum/Arena」駅 徒歩2分