高齢者の「自炊ができなくなった時」対策の実態
配食サービスが一番人気な「自炊ができなくなった時」の代替案
子供は別として日々の食事は自炊でまかなう場合が多いが、歳を経ると多かれ少なかれ体の自由が利かなくなる、料理が面倒になる、材料の調達に難儀するなど、調理が困難になることもある。その時、どのような形で食事を調達しようと高齢者自身は考えているのだろうか。内閣府が2015年3月に発表した「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」(2014年12月4日から26日にかけて、層化二段無作為抽出法によって選ばれた国内に住む60歳以上の男女に対して実施。有効回答数は3893件)の結果を元に、確認していく。
自炊が不可能な状態となった場合、どのような手段で食事を調達したいと考えているかを複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。最上位の回答項目は「配食サービスを利用する」。6割近い人が同意している。
昨今では専門業者に限らず、コンビニによる配食サービスも本格化。需要の拡大に伴い、元々配食を手掛けていたサービスの高齢者向け食品の展開だけでなく、類似業界の参入も相次いでいる。
次いで多いのは誰か他の人に作ってもらう。今調査対象母集団では単身高齢者世帯や高齢者同士の夫婦世帯以外に、子供や孫などと同居している世帯も多数含まれている。高齢者自身で食事が作れなくなっても、同居人に作ってもらうつもりであることを意味する。またそれができなくとも、ホームヘルパーなどに頼むのも不可能では無い。
それに続くのは既製品を買う、出前を取る。大よそ1/4の人が選択肢として挙げている。コンビニやスーパーなどの総菜売り場で高齢者の姿をよく見かけるようになったが、その人達もこの選択肢に該当するのかもしれない。
外食を利用する人は2割近く。直上の項目「既製品や出前」と合わせ、就業者の昼食や夕食で選択されがちな、中食・外食に該当する項目は、男性の方が回答率が高いのには要注目。就業している際の習慣がそのまま意識として残り、老後に受け継がれているのだろう。
年齢別などで違いは生じるのか
今件について回答者の属性で仕切り分けしたのが次以降のグラフ。まずは年齢別だが、若い人ほど多数の選択肢を想定している。
回答者の年が若いほど「配食サービス」「既成品や出前」「どこかへ食べにいく」などの回答率が高い。他方「誰かに作ってもらう」「食事つきの施設・住宅の利用」は80歳以上で増加するが、それより若い層ではほぼ横並び。若いうちはより多くの選択肢を想定していることになる。「配食サービス」「既製品や出前」の回答率が歳と共に漸減していくのは、行動範囲の問題や、自分の身体にあった料理が無いことなどがハードルなのだろう。最近では配食サービスにおいては、高齢者向けのメニューも増えてはいるが。
世帯構成による違いでは、一人暮らしでは同居人などやホームヘルパーに頼むのもハードルが高いため、回答率そのものが低い。逆に食事つきの施設や住宅を利用するとの考えが多くなっているが、これは一人暮らしで自炊ができないような状況の場合、他の生活行動も困難になっている可能性が高いことに起因する。逆に世帯に回答者自身や配偶者以外の世代が居る場合、その人数が多いほど、その人たちに期待している状況がうかがえる。
食事は毎日採らねばならないため、それが用意できなくなるのは生死に係わる問題となる。今件の「自炊ができなくなる」場合でも多様な選択肢があるが、いずれもコストは大きなもの。また完全に自炊ができないわけではないが、若い時のように手の込んだ調理を避けるようになる、出来合いの食材の調達比率が多くなるなど、手間がかけられなくなる状況は容易に想定できる。
以前、高齢者世帯の食費が高いとの議論が持ち上がったことは記憶に新しい。出来合い品の調達度合いが増える、あるいは今件選択肢のようにお任せになる状況ならば、若年層世帯の食費と比べて高めにつくのは当然の話に違いない。
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