キヤノン電子 地球観測衛星を7月4日ニュージーランドから打ち上げ
キヤノン電子が開発した地球観測衛星「CE-SAT-IB 」が2020年7月4日朝、ニュージーランドのマヒア半島から米Rocket Lab(ロケットラボ)の「Electron(エレクトロン)」ロケットで打ち上げられる。2017年にインドのPSLVロケットで打ち上げられた実証衛星1号機「CE-SAT-I」に続く2号機となる。
CE-SAT-IBは、50×50×85センチメートル、67キログラムの超小型衛星。地上を撮影する望遠鏡にキヤノン製EOS 5D Mark IIIカメラを採用し、民生品を利用して分解能90センチメートル(一辺が90センチメートル以上のものを識別できる性能)と高機能な衛星を開発する実証機となっている。1回の撮影範囲は5キロメートル×3キロメートルとなる。
2号機は、1号機から踏襲した反射望遠鏡、磁気トルカ(姿勢制御装置)などに加え、新たに開発した衛星の姿勢を制御するためのセンサやアクチュエーターなどを搭載しているという。今後は部品の内製化率を格段に高め、量産化に向かう目標がある。軌道上で2年間の実証実験を行う予定だ。
民間企業で高分解能の地球観測画像を販売しているトップ企業には、米Planetがある。同社が運用する15機の地球観測衛星Skysatは、80~110キログラム程度で分解能は72~86センチメートルとなっている。キヤノン電子の衛星は実証機でこの性能に迫りつつある。今後は、地球観測データの販路を開拓するほか、より小型の人工衛星キューブサット級の地球観測衛星「CE-SAT-III」(10×10×30センチメートル)を開発していくという。
ロケットラボのエレクトロンは、こうした実証用の小型、超小型衛星の打ち上げロケットとして実績を積み上げつつある。小型衛星専用のマイクロランチャーと呼ばれるロケットの中ではトップランナーだ。本社は米カリフォルニア州だが、ニュージーランドに射場を持ち、ほとんど失敗のない安定した打ち上げを実現してきた。米ヴァージニア州にも射点を開設し、今後は打ち上げ回数を増強する計画だ。
2020年3月に予定されていた12回目のエレクトロンの打ち上げは、新型コロナウイルス感染症によりニュージーランドへの入国が制限されていたため延期されていた。3ヶ月後の6月13日には打ち上げを再開し、NRO(米国家偵察局)やNASAの衛星を搭載した。CE-SAT-1Bを搭載する今回はそれから3週間後となり、ロケットラボでも最も短期間で連続打ち上げを実施する例となる。今年4月には、日本のレーダー地球観測衛星企業Synspective(シンスペクティブ)が2020年中に初号機を打ち上げると発表した。シンスペクティブの衛星はもともとフランスのアリアンスペースのロケットで初号機打ち上げ予定だったが、2019年に起きたアリアンスペースのVegaロケットの失敗により打ち上げ時期が不透明になっていた。3週間での高頻度打ち上げが可能ならば、こうした急な依頼にも対応できる柔軟さを示すことができる。
ロケットラボは、打ち上げごとにミッションの性質を表すユニークな名前を付けている。感染症後の打ち上げ再開となった6月13日のミッションは“Don’t Stop Me Now,(今は止めないで)”とロケット事業再開の勢いをうかがわせる名前になった。今回は“Pics Or It Didn't Happen(写真がないなら信じられない)”とややひねったミッション名となっている。
Pics Or It Didn't Happenは、ネット上で「UFOを見た」など突飛な体験談が語られた場合に、「証拠となる写真を見せられないならば(体験談は)信じられない」と懐疑的に応じる際のコメントで使われる。主衛星のCE-SAT-IBに加えて5機の超小型地球観測衛星が相乗りすることから、衛星が地球上のできごとの目撃者となり、写真データを残す役割を持つことにかけたものと思われる。また、打ち上げのたびにロケットラボが公開している中継映像の視聴を促しているとも考えられる。
エレクトロンロケット13回目の打ち上げとなるPics Or It Didn't Happenミッションは、日本時間2020年7月4日午前6時13分~7時3分の間に実施される予定だ。
●ロケットラボ 打ち上げ中継サイト
www.rocketlabusa.com/live-stream