10代の36.6%は「自宅にパソコンはあるけど使っていない」(2020年公開版)
高度の情報処理能力を持ち、多彩なソフトで多様な実務をこなし、エンタメ部門の需要にも大いに応えてくれるパソコン。インターネットの普及とその窓口としてスマートフォンが多くの人の手に渡るようになり、相対的に利用価値は小さくなる一方で、今なお必要不可欠の場面も多い。また昨今では主要入力端末のキーボードとともに「若者のパソコン、キーボード離れ」といった指摘もされている。それでは現状においては、どれほどまでにパソコンが普及し、利用されているのだろうか。今回は総務省が2020年9月に情報通信政策研究所の調査結果として公式サイトで発表した「令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、パソコンの世帯普及状況や利用実態を確認する。
まずは自宅にパソコンがある人の状況。
全体では84.8%の人が自宅にパソコンがあると回答している。ただしそのうち回答者自身が使っているのは63.9%。残りは家族の他の誰か別の人が使っているか、何らかの理由でほこりをかぶっていることが予想される。男女別では男性の方が所有率も利用率も高い。所有率はあまり差が無いが、女性の非利用率が高いため、利用率には16.1%ポイントもの差が出ている。
気になる年齢階層別の所有状況だが、回答者自身ではなく回答者がいる世帯における状況であることから、所有率は20代よりはむしろ10代の方が高く、低めの20代以降は50代までは年齢に連れて高くなり、60代でやや下がる程度。一方で利用率を見るとやはり10代は低めで、20~50代と比べると大きな違いが生じている。60代よりも低く、年齢階層の区分内ではもっとも小さい値。
10代の36.6%は「自宅にパソコンはあるが使っていない」とする層。あるいは使っていないのではなく、使わせてもらえないのかもしれない。いずれにせよ、10代のパソコン利用率は5割台にとどまり、36.6%は「自宅にあるが使っていない」実情にあることに違いはない。
パソコンは高価な端末であることから、低世帯年収ほどパソコンを取得する機会が少なくなる。それが若年層のパソコン離れ的な話の要因では無いかとの話があるが、今件調査値からも理由はともあれ結果としては同じ、世帯年収が低いほどパソコンの所有率・利用率が低い傾向にあることが確認できた。
一方、非所有者の動向を見ると、パソコンに関する属性によるスタンスの違いが見えてくる。値は各属性の全体に対するものであることに注意。
10~40代までは無い人の半数近くがパソコンを欲しいと思っているものの、50代になると無い人のうちいらないとする人の割合が急に増える。50~60代では無い人のうち7割近くがいらないと答えている。学生・生徒(中学生から大学生)は自宅にパソコンが無い人の9割近くは欲しいと思っているが、無職でほしい人は1/4強でしかない(多分に高齢層が該当する)。
世帯年収別動向だが、低世帯年収ほどパソコン所有率は低い=非所有率は高いものの、その多くは「無いが欲しい」ではなく、「無いしいらない」の回答。200万円未満では2割近くがパソコンは無いし欲しくないと答えている。一方で11.3%はパソコンは無いが欲しいと考えているのもまた事実ではある(ただし低世帯年収の世帯も多分に高齢者が世帯主の世帯であることも確か)。ただし600~800万円の層では自宅にパソコンが無い人の半数以上がパソコンは欲しいと考えているのも注目に値する。
今件における「自宅にパソコンがあるが利用していない」の回答は、家族構成員の別の人が利用している上で「使わせてもらえない」「使いたくない、使う必要性が感じられない」、さらに「自宅にパソコンはあるが誰も使っておらずほこりをかぶっている」などの多様なパターンが考えられる。世帯全体での利用状況を尋ねたわけではないので、家庭にあるパソコンの詳細状況は把握しきれたとはいえない。
とはいえ、各家庭におけるパソコンのポジションはある程度つかめる内容には違いあるまい。
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※令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
2020年1月14日から1月19日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォータサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。
調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きをしている。
今調査項目で示されているのは、パソコンの所有および利用状況。自宅にあるか無いかを回答者に答えてもらい、ある場合には回答者自身が普段利用しているか、それとも利用していないか(置いてあるだけなのか、家族の別の人が使っているかは問わない)、無い場合には自宅に欲しいか、いらないかを答えてもらっている。単純にあるか無いかの回答だけでなく、ある場合には利用状況を、無い場合には所有希望の有無まで尋ねることで、細かいパソコンの需要を精査できる。なお今件はあくまでもパソコンとしか問われておらず、デスクトップパソコン、ノートパソコンの別は区別されていない(質問票上の表記は「パソコン(キーボード取り外し型も含む。タブレット端末は除く)」)。またインターネット接続の有無も問われていない。
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