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韓国シン・ユビンがCMに引っ張りだこ!早田ひなと涙の抱擁、平野美宇と死闘で“新・国民の妹”人気のワケ

金明昱スポーツライター
パリ五輪3位決定戦で涙を流す早田ひなを称えて抱擁を交わしたシン・ユビン(写真:青木紘二/アフロスポーツ)

 パリ五輪卓球女子シングルスで4位のシン・ユビンが、いま韓国でCMに引っ張りだこだ。シン・ユビンといえば、パリ五輪の準々決勝で平野美宇を4-3の接戦で破り、早田ひなとの3位決定戦では2-4で敗戦したが、銅メダルで涙する早田に歩み寄って抱きしめたシーンが日本でも話題になった選手。

 試合の合間にバナナやおにぎり、エネルギーチャージなどを食べる“もぐもぐタイム”がキュートだと、お茶の間をほっこりさせていた。こうなると韓国の食品メーカーが放っておかない。

すでに3社のCM出演、おにぎりの商品化も

 帰国後すぐシン・ユビンの下には広告モデルのオファーが殺到。さっそく食品メーカーの「ピングレ」の人気商品「バナナ牛乳」、韓国人気チキン店「bhnチキン」の商品「プリンクル」の広告モデルとしてCMに起用された。

 さらに総合食品会社「ドンウォンF&B」のブランド「Grilly(グリリー)フランク(ソーセージ)」のCMにも出演し、韓国アスリートの中でも爆発的人気を博している。

 また、彼女が競技中におにぎりを食べていたことから、コンビニエンスストア「GS25」がおにぎりと小容量のおかず「カップデリ」をそれぞれ2種類商品化した。とにかく彼女を起用したい企業はほかにもたくさんあるとのこと。

 かわいい仕草や風貌から“ピヤギ”(日本語でひな、ひよこ)というニックネームがあり、かつてフィギュアスケートのキム・ヨナが“国民の妹”と呼ばれていたが、今やシン・ユビンが新たな“国民の妹”になったと言っても過言ではない。

 彼女の爆発的人気は、パリ五輪での結果やかわいらしい仕草によるところもあるが、実はもう一つ大きな理由がある。それは16歳から今まで寄付を続けてきたことが知られるようになったことが大きい。

CM契約金から1000万円を寄付

 今月頭に韓国・ソウルで卓球女子韓国代表の呉光憲(オ・グァンホン)監督に話を聞く機会に恵まれた。シン・ユビンについて「パリ五輪でユビンの成長ぶりには驚かされましたが、20歳とは思えないほどとても綺麗な心の持ち主であることも彼女がこれから偉大な選手なるという確信が持てました」と語っていた。

 「心が綺麗」というのは敗れながらも、勝者である早田を称えて抱き合うスポーツマンシップを見せただけではない。シン・ユビンは帰国後、「バナナ牛乳」CMの契約金の中から1億ウォン(約1000万円)を韓国初等学校卓球連盟に寄付した。理由は「小学生たちの海外合宿の費用と競技力の向上のため」と子どもたちに夢を与える行動に出た。

 すると彼女は16歳の時に初めてもらった給料から、生まれ故郷の京畿道(キョンギド)水原(スウォン)市にある児童福祉施設に運動靴を50足(60万円相当)寄付したというエピソードが広まった。すると次々と寄付の状況が明らかになる。

ひとり親や低所得の高齢者への支援も

 2021年8月には亜州大学病院の小児がん患者のために8000万ウォン(約800万円)を寄付。昨年5月の世界選手権で銀メダルの報奨金1000万ウォン(約100万円)全額をNGOワールドビジョンに女性の生理用品を支援する目的で寄付していた。

 さらに昨年10月、1人暮らしをしている低所得者層の高齢者を支援したいと申し出て、水原市に2000万ウォン(約200万円)を寄付している。今年4月にもひとり親の家庭にむけて済州島社会福祉共同募金会に1000万ウォン(約100万円)を寄付するなど、そのほかにも細かい用品提供などを挙げればキリがないほど。今では“寄付天使”と言われるほどだ。

 韓国のアスリートには病院や施設、後進の指導のための寄付やチャリティー活動を活発に行うことは珍しくないが、誰もが簡単にできる行動ではなく、20歳にしてこの活動内容には驚かざるを得ない。

 ちなみに韓国企業評判研究所によると「2024年8月のスポーツスターブランド評価1位はシン・ユビン。2位がソン・フンミン、3位が射撃銀メダリストのキム・イェジだった」という。

 20歳の若者が選手としても人としても韓国の国民に多くの感動と学びを与えており、さらなる成長が楽しみな選手なのは間違いない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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