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地球温暖化とウクライナ侵攻―日本がすべきことは?

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
東京都・渋谷区で行われた温暖化対策を求めるデモ 筆者撮影

 地球温暖化と戦争、いずれも人類が直面している危機であるが、とりわけ、ロシアによるウクライナ侵攻は、温暖化対策として我々のエネルギー使用を化石燃料から再生可能エネルギーに転換していくことで、ロシアが戦争を継続するための力を奪うことができる。また、人命尊重・人権擁護、国際法・国際人道法の遵守を徹底することで、ウクライナの平和とパレスチナの平和を両立することも出来得る。筆者が各地で行っている講演を元に、「経済」と「法」によって、世界の危機に立ち向かう術を論じていく。

〇いよいよ明らかになってきた温暖化の影響

 温暖化は、将来の危機ではなく、今そこにある危機となりつつある。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書は、既に2022年時点で「世界人口の4割以上の約33~36億人が気候変動に対応できずに既に被害を受けやすい状況にある」と指摘。また、同報告書は、世界平均気温の上昇に応じた異常気象の発生率も予測した。産業革命以前「50年に1度」であった極端な高温の発生率は、現状で既に4.8倍、1.5度上昇で8.6倍、2度上昇で13.9倍、4度上昇で39.2倍と予測。また、「10年に1回」レベルの大雨や干ばつも、世界平均気温が上昇するほど、発生率が高まると予測されている。これは、世界中の科学者達が膨大な研究と議論、論文の査読を重ねた上で合意したもので、その確度は極めて高いものだと言える。

 気象災害は日本も深刻だ。特に2018年は西日本豪雨だけではなく、台風21号と24号の被害も甚大で、日本損害保険協会によれば、これらの気象災害での保険金支払額は1兆4467億円と、東日本大震災のそれを上回る規模となった。温暖化と異常気象の関係について、気象庁はっきりと言及するようになってきた。同庁はイベント・アトリビューション、つまり、温暖化していない地球のモデルと現実の温暖化が進行している地球のモデルを比較して、異常気象の発生率を比較し、実際の気象現象への温暖化の関与を調査している。これにより、昨年2023年の記録的な猛暑も、温暖化の影響無しには、あり得ない暑さだったと 結論付けているのだ。

イベント・アトリビューションのイメージ 気象庁資料より
イベント・アトリビューションのイメージ 気象庁資料より

 現時点で、既に温暖化は世界各地で深刻な被害を引き起こしているが、それでも各国の取り組みは不十分だ。だが、温暖化の進行を放置するならば、文字通り人類存亡を左右する危機に発展し得る。例えば、英国エクセター大学などのチームの研究結果によると、このままの温暖化対策では、今世紀末に20億人、その時点での世界の総人口の5分の1が、「住むのに適さない危険な暑さ」にさらされるという。今後、起こりうる最悪のケースとしては「正のフィードバック」によって温暖化が暴走することだ。つまり、温暖化による影響がさらなる温暖化を招き、人間の力で、温暖化を止めることが不可能となる事態だ。英国レスター大学の研究によれば、世界平均気温が6度上昇した場合、地球の酸素の大部分を供給する海の植物プランクトンが酸素をつくれなくなり、人類を含め大多数の生物が「窒息」して死滅するかもしれないのだという。

 これらの予測が、実際に起こりうることかは議論があるだろうが、より確度が高く、限りなく確実に起こりうる結果として、IPCCの第6次評価報告書が示していることだけでも、人類にとって大変な脅威である。温暖化対策は、国益を超えた全人類的な課題なのだ。

IPCC報告書より
IPCC報告書より

〇やるべきことをやれば、人類滅亡は防げる

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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