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【赤い!赤い!あいつ!】「赤い通り魔」とまで呼ばれた伝説のスーパーヒーローとは何者か?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

みなさま、こんにちは!

文学博士の二重作昌満です。

特撮を活用した観光「特撮ツーリズム」の博士論文を執筆し、大学より「博士号(文学)」を授与された後、国内の学術学会や国際会議にて日々活動をさせて頂いております。

早いもので11月も下旬に突入し、いよいよ年の瀬を感じる季節となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

さて、今回のお話のテーマは「クロスオーバー」です。

「どういうこと?」とご指摘を頂きそうですが、そんなに難しい話はしません。

どういう意味かと言いますと、映画と他の映画とのコラボレーションや、テレビ番組と他のテレビ番組との夢の共演等、異なる作品同士に登場する登場人物達が1つの作品(映画、テレビ番組)に集結して、1つの物語(世界)をつくるというのが「クロスオーバー」です。

マーベル映画、『アベンジャーズ(2012)』シリーズはこれまで4作が製作されている。写真はウォルト・ディズニー・スタジオジャパン、ウォルト・ディズニー・ジャパンより発売中のBlu-ray。
マーベル映画、『アベンジャーズ(2012)』シリーズはこれまで4作が製作されている。写真はウォルト・ディズニー・スタジオジャパン、ウォルト・ディズニー・ジャパンより発売中のBlu-ray。

この「クロスオーバー」ですが、アメリカでは映画の興行戦略としてよく使われる手法です。一番わかりやすい例を挙げるならば、マーベル映画の『アベンジャーズ(Avengers)』。当シリーズは『アイアンマン(2008)』や『キャプテン・アメリカ(2011)』といった個々のマーベルの映画に登場するスーパーヒーロー達が1つの映画(『アベンジャーズ(2012)』)に集結して、チームとなって悪者と戦う物語。

今やマーベルを象徴する人気ヒーローキャプテン・アメリカ(左)とアイアンマン(右)。アベンジャーズの一員である両者は映画『アベンジャーズ エンドケーム(2019)』での大活躍とラストが記憶に新しい。
今やマーベルを象徴する人気ヒーローキャプテン・アメリカ(左)とアイアンマン(右)。アベンジャーズの一員である両者は映画『アベンジャーズ エンドケーム(2019)』での大活躍とラストが記憶に新しい。

このように(少しざっくりいうと)、別の映画に登場する人物達を1つの映画に纏めて登場させることで、内容を華やかにできるだけでなく、アイアンマンのファンにキャプテンアメリカを知ってもらえるといった、特定のキャラクターのファンにも別のキャラクターを認知してもらえるのが、クロスオーバー戦略における商業的な利点です。

このクロスオーバー戦略の歴史は古く、上述した『アベンジャーズ』以前にはミッキーマウスやドナルドダックといったディズニーキャラクターにおいて試みられました。

例えば、ミッキーマウスやドナルドダックは、元々は関係性のない個々のディズニー映画出身のキャラクターでした。ミッキーマウスはミッキーマウスシリーズ第1作『蒸気船ウィリー(1928)』でデビューを果たし、ドナルドダックはシリー・シンフォニーシリーズの『かしこいメンドリ(1934)』で初登場しました。

米国ロサンゼルス・ハリウッド内の「ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム」では、映画界で活躍したたくさんのスター達の名前が刻まれている。その中にはゴジラやミッキーマウス等のキャラクター達の名前も・・・。
米国ロサンゼルス・ハリウッド内の「ハリウッド・ウォーク・オブ・フェーム」では、映画界で活躍したたくさんのスター達の名前が刻まれている。その中にはゴジラやミッキーマウス等のキャラクター達の名前も・・・。

なんと、ドナルドダックはミッキーマウスシリーズの出身ではなく、ミッキーやミニー達とは別の世界(シリーズ)の住人だったのです。ところが、ミッキーマウスの映画にドナルドダックが出演したことに伴い(1934年公開、『ミッキーの芝居見物』)、ドナルドはミッキーの世界の一員として観客に認知され、以降はミッキーの友人として彼の映画に登場するようになりました。今でこそミッキーといつも一緒に行動している印象なので、ちょっと不思議な感じがしますね・・・。

株式会社東映は、仮面ライダーやスーパー戦隊、メタルヒーローシリーズと数多くの特撮ヒーローシリーズを制作しており、各シリーズのキャラクター達が作品の垣根を越えて、1つの映画に集結した作品も複数存在する。
株式会社東映は、仮面ライダーやスーパー戦隊、メタルヒーローシリーズと数多くの特撮ヒーローシリーズを制作しており、各シリーズのキャラクター達が作品の垣根を越えて、1つの映画に集結した作品も複数存在する。

そんなアメリカのスーパーヒーローやディズニー映画で導入されていた「クロスオーバー」戦略ですが、ウルトラマンや仮面ライダーシリーズをはじめとする、私達の暮らす日本の特撮ヒーロー番組にも、実は古くより導入されていました。

そこで今回は、ウルトラマンシリーズでお馴染みの株式会社円谷プロダクション(以降、円谷プロ)が制作している特撮ヒーロー番組に着目し、異なる世界のヒーロー同士が共演する舞台において誕生した、とある「赤いヒーロー」に焦点を当ててみましょう。

※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」「ウルトラマンを観たことがないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。

【銀河連邦遥かに超えて!】ウルトラマンにミラーマン!円谷プロ出身の特撮ヒーロー達が集った宇宙連邦国家「銀河連邦」とは?

さてここから円谷プロが制作した特撮ヒーロー番組のお話をしていきますが、その前に少しだけ、ウルトラマンシリーズをはじめとする円谷特撮ヒーローの歴史を概説したいと思います。

円谷特撮ヒーローとしてその先鞭をつけたのが、言わずと知れたウルトラマンシリーズ。株式会社円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』(及び特撮怪獣番組『ウルトラQ(1966)』)を起点とする特撮シリーズです。

『ウルトラマン(1966)』に登場した初代ウルトラマン。陸海空から現れる怪獣達を相手にウルトラマンは戦い、最後は必殺光線・スペシウム光線で退治する。しかし時には罪のない怪獣をいたわる優しさもみせた。
『ウルトラマン(1966)』に登場した初代ウルトラマン。陸海空から現れる怪獣達を相手にウルトラマンは戦い、最後は必殺光線・スペシウム光線で退治する。しかし時には罪のない怪獣をいたわる優しさもみせた。

『ウルトラマン(1966)』は全編カラー作品として制作され、オレンジ色の衣装に身を包んだ科学特捜隊のハヤタ隊員が、宇宙からやってきた銀色の超人・ウルトラマンとなって怪獣や宇宙人達から地球の平和を守る内容で、国内で放映されました。

身長40mの銀色の巨人(ウルトラマン)が巨大な怪獣と戦い、最後は必殺光線(スペシウム光線)で怪獣を退治するという物語はたちまち子ども達の心を掴み、最高視聴率42.8%、平均視聴率36.8%を記録する大人気番組となりました。

『ウルトラマン』放送終了後、その後続番組である『ウルトラセブン(1967)』をはじめ、次々に新シリーズが制作されたことに伴い、仲間を増やしていったウルトラマン達は、やがて兄弟と呼称されるようになった。
『ウルトラマン』放送終了後、その後続番組である『ウルトラセブン(1967)』をはじめ、次々に新シリーズが制作されたことに伴い、仲間を増やしていったウルトラマン達は、やがて兄弟と呼称されるようになった。

大好評だった『ウルトラマン(1966)』の放送終了後は、『ウルトラセブン(1967)』や『ウルトラマンタロウ(1973)』、『ウルトラマンティガ(1996)』等、現在まで派生作品が制作され続けており、現在は最新作『ウルトラマンブレーザー(2023)』が放送されています。

昭和、平成、令和と約60年に渡る歴史を有するウルトラマンシリーズの躍進は現在も続いており、新たなウルトラマン達の活躍が描かれてきた傍ら、新旧ヒーローが力を合わせる展開もシリーズの大きな魅力となった。
昭和、平成、令和と約60年に渡る歴史を有するウルトラマンシリーズの躍進は現在も続いており、新たなウルトラマン達の活躍が描かれてきた傍ら、新旧ヒーローが力を合わせる展開もシリーズの大きな魅力となった。

しかし、円谷プロの特撮ヒーロー番組はウルトラマンシリーズだけではありません。円谷プロはウルトラマンと並んでたくさんの特撮ヒーローを生み出しており、特にこれらのヒーローが集中して誕生したのが、1970年代初頭でした。

『仮面ライダー(1971)』より仮面ライダー1号(写真左)と仮面ライダー2号(写真右)。彼らは元々敵対する悪の組織「ショッカー」の科学力で生まれた存在で、人間でなくなってしまった悲劇性を抱えていた。
『仮面ライダー(1971)』より仮面ライダー1号(写真左)と仮面ライダー2号(写真右)。彼らは元々敵対する悪の組織「ショッカー」の科学力で生まれた存在で、人間でなくなってしまった悲劇性を抱えていた。

当時は我が国で熱狂的な特撮ヒーローブームが巻き起こっていた時代でした。その火付け役となったのが、ウルトラマンのライバル番組とも言える東映制作の特撮ヒーロー番組『仮面ライダー(1971)』でした。「変身!」のパフォーマンスでパッ!とヒーローに変身する主人公の活躍に子ども達は心を掴まれ、玩具やお菓子を筆頭に爆発的なブームが巻き起こっていたのです。

円谷プロはウルトラマンシリーズ以外にも、『ミラーマン』をはじめとする数多くの特撮ヒーロー番組を世に送り出した(写真は東映ビデオより発売のDVD、筆者撮影)。
円谷プロはウルトラマンシリーズ以外にも、『ミラーマン』をはじめとする数多くの特撮ヒーロー番組を世に送り出した(写真は東映ビデオより発売のDVD、筆者撮影)。

このブームに便乗し、円谷プロはウルトラマン以外の数々の特撮ヒーロー番組の制作に着手します。宇宙からの侵略から鏡のヒーローが地球を守る『ミラーマン(1971)』、数々の超常現象に地底の世界からやって来たヒーローが挑む『ファイヤーマン(1973)』、宇宙サイボーグに人間が乗り込み悪魔のような侵略者と戦う『ジャンボーグA(1973)』等、個性的なヒーロー達がこの時代に誕生しました。

ウルトラマンシリーズを制作してきた円谷プロも、変身ブームに乗じて多種多様な特撮ヒーロー番組を発信した。中央のミラーマンをはじめ、等身大ヒーローであるトリプルファイター(左から2番目)等が登場した。
ウルトラマンシリーズを制作してきた円谷プロも、変身ブームに乗じて多種多様な特撮ヒーロー番組を発信した。中央のミラーマンをはじめ、等身大ヒーローであるトリプルファイター(左から2番目)等が登場した。

このように円谷プロの特撮ヒーロー番組が続々と登場する中、これらの番組は次のステップへと移行するようになります。

それは「円谷プロの特撮ヒーロー番組の世界を一緒にしよう」というものでした。つまり、ウルトラマンやミラーマンといった円谷プロのヒーロー達が、宇宙の平和を守る連邦組織「銀河連邦」という同じ組織に所属しており、有事の際は共演できるような仕組みを構築しようとしていたのです。この効果により、とあるウルトラマンは自らを銀河連邦の使者と名乗ったほか、先述した『ミラーマン(1971)』と『ジャンボーグA(1973)』の物語が同じ世界のお話であることが判明した上、ウルトラマンの故郷「光の国」とジャンボーグAの故郷「エメラルド星」は、実は同盟星であるという裏設定まで誕生しました(出典:ジャンボーグA MEMORIAL DVD-BOX Volume1 収録のブックレットより)。

『ジャンボーグA(1973)』では、エメラルド星人(写真左右)というウルトラマンに酷似した正義の宇宙人達が、主人公の立花ナオキに宇宙サイボーグ・ジャンボーグAを与えたことを契機に物語がはじまった。
『ジャンボーグA(1973)』では、エメラルド星人(写真左右)というウルトラマンに酷似した正義の宇宙人達が、主人公の立花ナオキに宇宙サイボーグ・ジャンボーグAを与えたことを契機に物語がはじまった。

そんな夢いっぱいの宇宙組織として描かれた「銀河連邦」ですが、当組織に所属しているヒーロー達の中で、とりわけ強烈な個性を放った者がひとりいました。次章では、彼がいったいどんなヒーローだったのかを後述していきます。

【赤い♪赤い♪あいつ!】怪獣はメッタ刺し!「赤い通り魔」と呼ばれ恐れられた銀河連邦の使者、レッドマンとは?

前述した「銀河連邦」に所属するヒーロー達は、基本的に「宇宙の平和を守る」という志は同じであり、その目的を共有しながら悪い怪獣や宇宙人との戦いを続けています。しかし、単に悪者をやっつけるのではなく、時に罪のない怪獣達をいたわる優しさも、それぞれのヒーロー達の活躍において描かれていました。

・・・しかしそんな銀河連邦のヒーロー達の中でも、果敢に怪獣達と戦うだけに留まらず、情け容赦のないラフファイトで怪獣達を叩きのめし、ファンからは「赤い通り魔」と尊称(?)される絶対的なヒーローが存在していました。

地球から遥か遠くのレッド星からやって来たスーパーヒーロー、レッドマン。体術はもちろん、切れ味抜群の武器を得意技とする銀河連邦の一員。怪獣退治の専門家であるが、その容赦無さは専門家以上だった・・・。
地球から遥か遠くのレッド星からやって来たスーパーヒーロー、レッドマン。体術はもちろん、切れ味抜群の武器を得意技とする銀河連邦の一員。怪獣退治の専門家であるが、その容赦無さは専門家以上だった・・・。

彼の名は、レッドマン。はるか銀河の彼方にあるレッド星からやってきた怪獣退治の専門家で、何万年も生きているスーパーヒーロー(地球人年齢で22歳)。平和を愛する優しい心の持ち主で、正義感は強く、悪には徹底的に挑むヒーローです。

「なんだ、普通に正義の味方じゃん!」と突っ込まれそうですが・・・ここまでは大丈夫なのです。問題は、彼のファイトスタイルにありました。

レッドマンは怪獣を発見するや否や、「レッドファイト!」のかけ声で怪獣達に戦いを挑みます。その際、パンチやキックといった通常の徒手空拳だけに留まらず、マウントポジから何度も殴りつける攻撃に出たほか、得意技はナイフや槍といった殺傷力の高い武器でした。彼のナイフ(レッドナイフ)は切断力に長けており、怪獣の首を切り落としたほか、マウントポジから何度も怪獣をメッタ刺しにするという、捉え方によっては暴挙(オーバーキル)にも見えるような戦い方だったのです。その上、槍攻撃(レッドアロー)は、悪い怪獣や宇宙人を刺し殺す際に使用しますが、なんと一発投げることで複数の怪獣達を一掃する程の破壊力・・・さすが怪獣退治の専門家。

レッドマンの武器、レッドナイフ。「レッドナイフ!」のかけ声と共に、鬼気迫る勢いで怪獣達をメッタ刺しにする戦術により、散っていった怪獣達は数知れず。
レッドマンの武器、レッドナイフ。「レッドナイフ!」のかけ声と共に、鬼気迫る勢いで怪獣達をメッタ刺しにする戦術により、散っていった怪獣達は数知れず。

さらにさらに(まだあります!)レッドマンは怪獣を倒すだけに留まらず、死体のチェックも怠りませんでした。つまりちゃんと死んだかチェックするために、あの手この手で入念に怪獣退治を完遂させていたことにも特徴があります。例えば、レッドマンに敗れて地面に倒れた怪獣の死体を(なんか怒ってるみたいな素振りで)入念にチェック、これならまだ良い方ですが、場合によっては虫の息だった怪獣の鼻をふん捕まえて引っ張り、崖下にぶん投げるという荒技(レッドフォール)に出たりと、怪獣をやっつけた後に爽やかに飛び立っていくウルトラマン達とはえらい違いだったのです(「やり過ぎじゃないのか!」という声が聞こえてきそうですが・・・私もそう思います)。

レッドマンが戦う怪獣達は、バルタン星人やエレキング等、かつてウルトラマンやウルトラセブン、ミラーマンが戦った怪獣達。今やベテラン怪獣である彼らも、レッドマンとの戦いはトラウマになったに違いない。
レッドマンが戦う怪獣達は、バルタン星人やエレキング等、かつてウルトラマンやウルトラセブン、ミラーマンが戦った怪獣達。今やベテラン怪獣である彼らも、レッドマンとの戦いはトラウマになったに違いない。

そんなレッドマンが登場したのは、1972年4月24日から同年10月3日にかけて放送された日本テレビ制作の子ども向けバラエティ番組『おはよう!こどもショー』の1コーナー『レッドマン』。「あれだけの殺伐なことしておいてバラエティかよ・・・」と思われるかも知れませんが、『レッドマン』は約3分12秒という短時間でヒーローと怪獣の戦いが描かれていました。

先述したとおり、『レッドマン』のコーナーは約3分12秒しかありません。よって、ウルトラマンのように①怪獣が出てくる、②怪獣と戦う○○隊が出動する、③最後にウルトラマンが登場して怪獣をやっつけるという内容では、とてもとても尺が足りません。

そこで『レッドマン』のコーナーが始まるや否や、いきなりレッドマンと怪獣との戦いが始まります。唐突に取っ組み合いが始まって、レッドマンが何かしら殺傷力の高い技や凶器を持ち出して勝利するというのが番組の流れだったのです。

『レッドマン(1972)』は放送終了後、長らくソフト化の機会に恵まれなかったが、ディアゴスティーニより2010年代後半にDVDが発売された。
『レッドマン(1972)』は放送終了後、長らくソフト化の機会に恵まれなかったが、ディアゴスティーニより2010年代後半にDVDが発売された。

しかしながら放送時間の尺の短さ故に、怪獣とレッドマンがなぜ戦うのか明確ではなく、見方によっては「何も悪いことをしていない怪獣をレッドマンが襲っている」ようにも見えなくはなく、さらに上述したラフファイトが際立つスーパーヒーローであった故、レッドマンはファンの間から「赤い通り魔」呼ばわりされてしまうという事態まで発生し、あろうことか現在までその呼称は定着しています。

レッドマンはあくまで「平和を愛する優しい心の持ち主」かつ人間の味方であり、さらに怪獣退治の専門家であるという肩書きである故、あのような行為に出ているのだと思えば(少し良いように解釈しても)あくまで正義のヒーローとして落ち着きますが、なんとこの珍事・・・海の向こうであるアメリカの書籍でもネタにされてしまう事態にまで発展してしまいました。

「おはよう!子どもショー!」での『レッドマン』の放送期間は1972年4月24日から同年10月3日までの半年間(全138話)。放送を終えたレッドマンはその後続編が作られることはなく、テレビの世界から姿を消していました。しかし、なんと彼のその後の物語がアメリカン・コミック(通称:アメコミ)の世界において展開されており、本作に登場するレッドマンは怪獣達にとってドストレートな恐怖の存在として、ややホラーテイストに描かれていたのです。

マット・フランク氏が作画を務めたコミック版『レッドマン』。全3巻が現在まで発売された(写真は日本語翻訳版)。
マット・フランク氏が作画を務めたコミック版『レッドマン』。全3巻が現在まで発売された(写真は日本語翻訳版)。

そのコミックとは『レッドマン』(作・画:マット・フランク、2018年発行)。「スポンサー」と呼ばれる存在によってつくられた世界を舞台に、怪獣を次々に狩っていくレッドマンの活躍を描きながら、怪獣を守護しレッドマンと対立するライバルキャラクター(正義の怪獣ベムドラ)の登場等、かつての『レッドマン』の世界を深掘りしていく内容で展開されました。『おはよう!こどもショー』内のキャラクターがアメコミ化されるだけでも珍事なのですが、本作はあくまで「第一部」。もしかしたら・・・新たな戦いがマット氏によって描かれるのもそう遠くはないのかもしれません。

いかがでしたか?今回は「クロスオーバー」に焦点を当てて、円谷プロの特撮ヒーロー達が集う「銀河連邦」より、異色のスーパーヒーローであるレッドマンの活躍に焦点を当ててみました。先述した『おはよう!こどもショー』内の『レッドマン』の物語ですが、動画配信サービス「TSUBURAYA IMAGINATION」(外部リンク)内で配信されておりますので、宜しければご覧になってみてくださいね♪

最後までご覧頂き、誠にありがとうございました。

(参考文献)
・『講談社シリーズMOOK ウルトラ特撮PERFECT vol.27 ウルトラファイト/レッドマン/トリプルファイター』、講談社
・安藤幹夫、『円谷プロ画報第1巻 円谷作品五十年の歩み』、竹書房
・マット・フランク、『レッドマン VOLUME 1 怪獣ハンター編』、PHASE6
・マット・フランク、『レッドマン VOLUME 2 ダークチャンネル編』、PHASE6
・マット・フランク、『レッドマン VOLUME 3 正義の怪獣編』、PHASE6

博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

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