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日本代表、イングランド代表と対戦決定。強化方針はどうなる?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
前回の対戦時は15-35で敗れている(写真:アフロ)

 前向きな知らせだ。

 日本ラグビー協会(日本協会)は12月15日、男子15人制日本代表が来年11月12日にイングランド代表とテストマッチ(代表戦)をおこなうと発表した。

 試合会場は、ロンドン郊外のトゥイッケナムスタジアム。日本代表がイングランドと対戦するのは2018年11月以来で、会場は前回と同じだ。

 日本代表前ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ監督が率いるイングランド代表は、2019年のワールドカップ日本大会で準優勝しており、現在世界ランキング3位。2023年の同フランス大会では、1次リーグで同10位の日本代表とともにD組に入っている。9月17日の予選プール第2戦で戦う予定だ。

 同日、岩渕健輔・日本協会専務理事がオンラインで会見した。この日は日本協会の定例理事会があり、男子15人制を含めた各カテゴリー代表の活動報告があった模様だ。

 岩渕専務理事は、来年以降の男子15人制代表のマッチメイクや同代表陣営の強化面でのリクエストへの対応について語った。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「イングランド代表との試合についてリリースいたしました。2018年に続いて伝統あるトゥイッケナムスタジアムでイングランド代表と対戦できることを光栄に思っています。イングランド代表とはワールドカップでも対戦しますが、強化の観点から強豪国と試合ができるのは大きなポイント。万全の準備で臨んでいきたい。

 来年夏のシリーズにつきましても、非常に前向きな形で調整を進めさせていただいています(国内外で強豪国との対戦を予定)。関係の皆様との調整がついたら、ご報告させていただきます。楽しみにお待ちいただければと思います」

 藤井雄一郎・男子15人制代表ナショナルチームディレクター(NTD)はかねて、若手に多くの国際経験を積ませるべきと考えている。本番およびそれ以降に向けた、選手層の拡大のためだ。

「より多くの選手に、海外で『一つのミスでどうなるか……』という本当のガチンコの海外でのやり合いをより多くの選手に積ませたい」

「どういう選手が(海外で)どういうふうになるのか、(若手が)自分のチームではないチームでどう戦えるかを見たい」

 きっと、今回の理事会ではこれらのリクエストもあっただろう。統括団体の方針やいかに。岩渕専務理事は続ける。

「代表チームからは、特にサンウルブズ(※1)がなくなった後にどうしていくかがラグビー界にとっての大きな課題のひとつでした。

 ひとつの結論として、ジャパンラグビーリーグワン(※2)の発展がある。世界とのラグビーに近づくためにリーグワンを日本協会の外に出して(異なる運営団体を設けて)、よりお客様に楽しんでいただくリーグにする、かつ競技力を上げる。それがまず、ベースにございます。

 一方、それだけでは短期的に世界のユニオンと戦えるようにはならないという、現場の事情もあります。ここについては、ずっとおこなわれていたパシフィック・ラグビーチャレンジ(※3)などの枠組みのなかで、いわゆる代表A(代表に準ずる)レベルの活躍の場を…と、ワールドラグビー(国際統括団体)と会話しています。

(藤井NTDがかねて要望する、若手だけでの)遠征も、ひとつの考え方です。ただ一方で、日本主導で、あるいはいくつかのユニオンと、ワールドラグビーを巻き込んで大会を作っていくのもひとつの考え方です。そうしたことは、代表チームとも話をさせていただいています。

 短期的に2023年へということではなく、2024年以降が一番、大きな問題になると思っています。短期的にしっかりしていくという視点とともに、長期的な強化になり得るものも同時に考えながら進めていきたいと考えています」

※1 サンウルブズ=2016年からの5年間、国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦。首脳陣やプレースタイル、選手を日本代表と共有して強化を図ってきた。

※2 ジャパンラグビーリーグワン=2022年から新装開店の国内リーグ。外国人枠の変更で海外出身者のプレー機会が増える見込み。

※3 パシフィック・ラグビーチャレンジ=パンデミック前に毎年開催された、環太平洋の代表予備軍の総当たり戦。日本からはジュニア・ジャパンという若手連合軍が参加していた。

——改めて「短期的」な施策と「長期的」な施策を改めて整理していただけますでしょうか。

「短期的に(選手層を厚くする)ということであれば、日本協会が独自に遠征をすることが手段になると思います。一方、長期的に選手層を…となると、いちユニオンだけで動いて強化をしていくのは、その場(遠征先)がいつでも見つかることにはならないと思いますので(難しい)。そうなると、そういった(代表に準ずる)レベルの大会をワールドラグビーに働きかけるのもひとつの方法です。リーグと話しているクロスボーダー(※4)の考え方もひとつだと思います。

 あとは長期的には、代表チームそのもののゲームをいかに増やすかも課題です。それを含めた全体的な構成を2024年以降に向けて整えていきたいです」

※4 クロスボーダー=国内クラブが海外のクラブと対戦する機会。関係者によると、2023年2月に2022年シーズンのリーグワン上位チームなどが参加できるよう調整中。

 岩渕専務理事は、特にフランス大会以降を見据えた「長期的」な施策に視線を向けていそうだ。

 海外では、ラグビーチャンピオンシップ(ニュージーランド代表、南アフリカ代表などの南半球の強豪国による定期大会)への日本代表参戦が報じられている。これが実現するとしたら2024年以降が濃厚で、岩渕専務理事も「ニュージーランドなどでそうした話し合いがおこなわれているのは事実」と、今回話した「代表チームそのもののゲームをいかに増やすか」についても整備を進めている。

 一方、イングランド代表戦時のメンバーリング、皿には2023年のフランス大会時のスコッドの構成に影響しそうなのは「短期的」な施策である。

 藤井NTDは、「経験のある選手(日本大会組など)がいるうちに何人かを(若手に)入れ替え、その選手を鍛える手段を取らざるを得ない」。首脳陣のニーズに合った選手をより増やすべきだと強調している。

 今後の進展やいかに。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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