そもそも障害者を差別し、減額主張をしている「張本人」は誰なのか 【難聴女児死亡事故】#専門家のまとめ
危険運転により命を奪われた聴覚障害女児の「逸失利益」(事故がなければ得られたであろう生涯の収入)を巡る民事訴訟が、9月3日、大阪高裁にて結審した。てんかんの持病を隠し、ホイールローダーを運転していた加害者による暴走死傷事故から6年7カ月、被害者には全く落ち度のない事案でありながら、なぜ裁判はこれほど長期化し、遺族は苦しめられているのか。そして、被告側による「障害者差別」ともいえる一方的な減額主張は、いったいどのようなもので、実質的には誰が主導でおこなっているのか。まとめてみた。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
本件裁判で、被害者への賠償額を減らすべきだと主張をしている「被告」とはいったい誰なのか。書面上は加害本人とその雇用会社だが、筆者の取材経験から、実際には加害者側が自動車保険を契約している損保会社が主導していると思われる。
契約者はいざというとき被害者に十分な賠償ができるようにと対人無制限の保険に加入している。にもかかわらず、多くの事故処理において、契約者の意に反して「利益相反」ともいえる示談交渉や裁判が横行しているのが現実だ。
実は当初、被告側は女児の逸失利益について「一般女性の40%」と決めつけ、さらに低い提示をしていた。「聴覚障害者には『9歳の壁』があり、思考力や言語力・学力は小学校中学年の水準に留まる」というのだ。この一方的で理不尽な主張は、一審の途中で被告側が自ら撤回するという一幕があったのだが、「初回提示はとりあえず低いラインから」という損保業界の常套手段が見えた気がした。
本裁判には聴覚障害、視覚障害のある弁護士をはじめ、総勢38名の支援弁護士が名を連ねている。年少者、障害者の努力や未来の可能性を否定するこうした主張は許されるのか。また、加害者本人や雇用会社は長期化する裁判に何を思うのか。自動車保険、損保会社のあり方も議論されるべきだろう、