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マスターズ3日目、DJは単独首位、松山は8打差10位。「コントール」が分けた「アップ」と「ダウン」

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
3日目はスコアを伸ばせず「悔しい1日になった」と振り返った松山英樹(写真:ロイター/アフロ)

 マスターズ3日目。オーガスタ・ナショナルのグリーンは明らかに変化していた。ボールをピタリと止めていたソフトなグリーンは、それまでの2日間より格段に固く速くなっていた。

 しかし、オーガスタを熟知している選手たちにとっては、その変化は驚くほどのものではなく、タイガー・ウッズは「少し速くなったし、曲がり幅も少し大きくなった」。松山英樹も「少し速くなったけど、例年に比べれば遅い」ぐらいだと振り返った。

 問題はグリーンの変化やその大小ではなく、どこまで自分が順応でき、どこまで自分を制御できたかということ。要は、グリーンより自分自身。ボール・コントロールより自分コントール。それがムービングデーの「ムーブ」の方向性を分ける要因になった。

【ウッズのチャレンジ】

 マスターズ連覇と6勝目を期待されていたウッズは、第3ラウンドの出だしから腰痛に苦しみ、カップからボールを拾い上げる際も苦痛に顔を歪めるほどだった。

 気温が上がり、体もほぐれたせいか、終盤は腰の具合も良くなっていったようだが、首位とは11打差の20位タイで迎える明日の最終日、大逆転優勝の可能性は限りなく小さくなった。

 米メディアはすでに「ウッズの今年のマスターズは終わった」と記し、ウッズ自身も諦めざるを得ない現状を受け入れている様子だ。

「長い1日だった。長丁場が肉体にそのまま影響する。それが今の僕の現実だ。歩くことはできるが、体を曲げたり捻ったりは辛い。そういう中での戦いは常にチャレンジ。そのチャレンジは、これからも続くんだ」

 自分の肉体を思うようにコントロールできないと嘆いたウッズの言葉が淋しく響いた。

【松山は「自分をコントロールできず」】

 第2ラウンドの残り3ホールをパーで終え、首位の5人と1打差の6位タイで第3ラウンドを迎えた松山英樹。

 2番(パー5)でバーディーを先行させたものの、5番の第2打がグリーンをヒット後に手前へ大きく転がり、ボギーを喫したあたりから、松山は変化したグリーンに翻弄され始めていた。

 9番はグリーンに乗せきれず、3打目のチップショットはピンをオーバー。返しのパーパットを外し、ボギーを喫した。 嫌な余韻が残る中で折り返すと、10番ではティショットを大きく右へ曲げて林へ打ち込み、連続ボギーを喫した。

 それでも13番(パー5)では難しいライから上手く寄せてワザが光った。14番はピンそばに付けてショットメーカーの意地を見せた。

 しかし、15番(パー5)ではバーディーパットを沈めきれず、チャンスを逃した。17番は3パットでこの日4つ目のボギー。18番はフェアウエイバンカーからの第2打を上手く打ったが、ピン2メートル半をヒット後にどんどん転がり、ピンから遠ざかっていった。パーを拾うのが精一杯の締め括りとなり、4バーディー、4ボギーのイーブンパーで、首位とは8打差の10位タイへ後退。

 振るわなかった要因を、松山はこう語った。

「思うように自分をコントロールできず、スコアが伸びず、悔しい1日になった。グリーンは少し速くなっているけど、例年に比べれば遅い。(それよりも)自分をコントロールできなかったことで、トップとの間が開いてしまった」

 マスターズ初制覇の可能性は大幅に低くなった。それでも望みは捨てていない。

 「まだ何か起こるかわからないので、集中して頑張りたい」

【DJ、勝利へのキーワードは?】

 第3ラウンドで7つスコアを伸ばし、2位に4打差の通算16アンダーで単独首位に立ったダスティン・ジョンソンも、「コントロール」という言葉を口にした。

 1イーグル、5バーディー、ノーボギーの見事すぎるプレーぶり。54ホールの大会記録をマークしたジョンソンは、グリーンの変化を「かなり変わったし、かなり曲がった」とむしろ大きく受け止め、その変化に対応すべく「スイングもショットもパットも、すべてうまくできた」と、満足感を静かに語った。

「何より距離をうまくコントロールできた」

 振り返れば、ジョンソンも肉体の故障に泣いたことが幾度もあった。メンタル面が揺らぎ、自分自身をコントロールしきれずに、目前のメジャー優勝を逃したこともあった。

 失敗を糧にして、ようやくマスターズ初制覇に迫ろうとしている。

「でも、グリーンジャケットを羽織るためには、あと1日、明日もいいプレーをしなければならない」

 やっぱり最後は、ボール・コントロールより、心身のコントロール。それが勝利へのキーワードになる。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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