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1階にパチンコ店のマンションは買いか? 増えた背景に「駅近」物件人気

櫻井幸雄住宅評論家
駅近のパチンコ店や焼き肉店がマンションに……(写真は、記事とは関係ありません)(写真:アフロ)

 パチンコ店を想像して、と言われて、「そういえば、最近、昔ながらのパチンコ店って見ないな」と改めて感じる人が多いだろう。

 昭和の時代、多くの駅前に目立つパチンコ店があった。入り口には年がら年中「新装開店」の花輪が飾られ、派手なネオンサインとけたたましい軍艦マーチ。そして、ドアが開く度に聞こえてくる「チン・ジャラジャラ」が、ある種のノリを完結させていた。

 同様に、駅前に多く存在したのが焼き肉店や焼き鳥店。こちらも、“自己主張”は半端なく、これでもかとばかりに食欲をそそる匂いと煙を吐き出していた。

 いずれも街の活気を象徴する存在で、訪れる人も多かったのだが、半面、「あのそばには暮らしたくないよね」とも思われていた。

 そのパチンコ店は、平成以降、騒音規制法などにより、目立つ店構えができなくなった。焼き肉店、焼き鳥店も匂いに対する規制が厳しくなったことで、鼻をつまんで通り過ぎる人を見かけなくなった。

 現在は、一見、パチンコ店、焼き肉店と分からない店構えが増加。さらに、分譲マンションの1階に“入居”するケースも増えている。といっても、マンション分譲時にパチンコ店や焼き肉店がスペースを買って入ったわけではない。もともと、その地にあったパチンコ店や焼き肉店がマンションになっても残っている。そういうケースが目立つのだ。

パチンコ店付きマンションが増えてしまった理由

 パチンコ店や焼き肉店・焼き鳥店が1階に入った分譲マンションが目立つのは都心部。もともと売り地が少なく、現在はオフィスビルやホテルの建設ラッシュが続き、マンション用地がなかなか手に入らない場所だ。

 そして、分譲マンションは、駅から徒歩3分以内の「駅近物件」の人気が異常といえるほど上昇。「駅近でなければ、買わない」「駅近だったら、ある程度高額でも買いたい」という人が増えてしまった。

 「駅近」が好まれるのは、値下がりしにくいとされるから。将来、値段が下がらないなら、多少高くても購入したいと考える人が多くなっているわけだ。「駅近マンション」の人気が高まった結果、駅に近い分譲マンションは値段が大きく上がった。東京の郊外でも駅近マンションならば8000万円、9000万円の値を付ける3LDKがある。ほとんど億ションである。

 それに対し、駅から離れた分譲マンションは3LDKが4000万円台でも購入者が少ない、という二極化が生じている。

 このような状況になると、不動産会社は、なんとしても駅近の新規物件を売り出したい。しかし、土地はなかなかみつからない。そこで、目をつけられるのが、駅の近くに居を構える店舗。広い土地を所有するパチンコ店や焼き肉店・焼き鳥店であれば、マンション用地として最適。その際に用いられることが多いのが「等価交換」という方式だ。たとえば、パチンコ店を壊してマンションをつくり、できあがったマンションの一部を土地所有者が得るという方式である。

 取得した建物の一部を使って、パチンコ店や焼き肉店、焼き鳥店を継続すると、パチンコ店付きや焼き肉店付きの分譲マンションができあがる。

パチンコ店や焼き肉店付きマンションは買ってよいのか

 このように大都市で増加するパチンコ店付きマンション、焼き肉店付きマンションは、買ってよいのか。購入検討者には気になるところだ。結論を先に申し上げると、買って損はない。

 その理由で大きいのは、「立地のよさ」にある。長い間営業を続けてきたパチンコ店や焼き肉店、焼き鳥店は、駅の近くに立地している。駅前ロータリーに面する場所だったりすれば、便利さはひとしお。これは、「住んで便利」だし、「将来も、中古で売りやすい」ことを意味している。

 一方で、懸念されるのは、マンションの印象が必要以上にあでやかになったり、むやみに食欲をそそるようなものになるわけではないか、ということ。その点も、心配は無用だ。

 入り口は完全に分けられ、派手な電飾などは付けられず、店構えは極めて地味になる。遮音対策も万全だ。焼き肉・焼き鳥は煙と匂い・油分を消し、邪魔にならないところにそっと出される。パチンコ店や焼き肉店の上に住んでいることはわかりにくくされるわけだ。もちろん、パチンコ店や焼き肉店、焼き鳥店が建物内にあることは隠さず説明して分譲される。

 ただし、建物に工夫を凝らすため、分譲価格が割安になることはない。その結果、「パチンコ店があるのに、分譲価格が高い」などと、ネット上で批判されることになりがち。が、それも一時のことで、中古で売り出すときに値段が下がることはない。

 現在、パチンコ人口は減少しており、この先、経営が厳しくなれば、廃業してスーパーマーケットなどにスペースを貸すケースも出てきそうだ。

 新たに入居する業種によっては、生活利便性が高まるだろう。つまり、パチンコ店や焼き肉店、焼き鳥店付きマンションは、将来、よい方向に変わる可能性もある。その可能性を含めると、なおさら買って損はないと判定されるのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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