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【7月6日 31歳の誕生日】男子バレー柳田将洋の新たな挑戦

田中夕子スポーツライター、フリーライター
アジア大会に向け合宿を重ねる日本代表で主将を務める柳田将洋(写真:松尾/アフロスポーツ)

 21年5月以来、実に2年ぶりの日本代表で日の丸を背負う。

 背番号は15。どこにいても、今自分のすべきことを果たすのみ。柳田将洋の姿勢は常に変わらない。だが、1つ1つ丁寧に準備をして、試合に臨む姿を見ているとやはり思う。日の丸が似合う選手だ、と。

高揚感があるからこそ「普通に」プレーする強さ

 今年度は国際大会も多く、同一メンバーですべての大会に出場が叶わぬため、日本代表登録選手が選ばれ、チームが発足した時点からA、Bと区分し、現在開催中のネーションズリーグに出場するのがAチーム。そして9月に中国で開催されるアジア大会に出場するのがBチーム。柳田は現在、Bチームで主将を務めている。

 4月に発表された37名の中に名前を連ねた時点で話題に上がり、復帰を待望する声も相次いだ。5月27、28日、6月3日には岩手・紫波町のオガールアリーナで開催された中国との親善試合に、2年ぶりに日本代表として出場。当時は合宿がスタートしたばかりでコンディションがまだ万全ではなかったこともあり、出場は両日とも1セットのみに留まったが、試合を終えると「ステップとしては悪くない」と手ごたえを示し、久しぶりの日本代表へ話を向けると静かに笑う。

「普通ですよ、普通(笑)。普通でいないと、と動じずいられるようなプロセスを踏んで、ここに来ているつもりなので」

 バレーボール専門施設で、合宿などで利用されることが多いオガールアリーナは親善試合とはいえ、日本代表の試合が行われる場所として決して広いわけではない。だが観客数は決して多くはないが入れられる限り入った会場は満員で、県外から訪れた女性ファンだけでなく、近隣の家族連れなど年齢層もさまざま。間近で見られる迫力あるプレーの1つ1つに歓声が上がったが、一番の盛り上がりを見せるのはやはり柳田のサーブやスパイクだった。

 あえて普通に、とはいえ、距離の近さが見る者に迫力を伝えるように、プレーする柳田にも熱は伝わる。

「昨日、今日の試合で高揚感は間違いなくあるし、日の丸を背負って戦うことに特別な感情がないかと言えば嘘になる。でもその感情と、自分がどうプレーするか、というのは別感情なので、そこはなるべく分けて考えようと思っています。むしろこれ以上があるのではないか、とちらつかせてしまうと余計な感情が入り混じってしまうし、それがポジティブなのかといえば僕にはわからない。だから今は、これまでのリーグでやってきたことがつながって、(日本代表の)セレクションにも関わることができて、今ここでプレーしている。もちろん、それ以上の特別な感情もあるといえばありますけど、やりたくてやっている。それは間違いないので、この場でバレーができていることが、今の僕にとっては面白くて、大きいことなんです」

日本代表でキャプテンマークをつけるのは19年のワールドカップ以来、4年ぶりだ
日本代表でキャプテンマークをつけるのは19年のワールドカップ以来、4年ぶりだ写真:YUTAKA/アフロスポーツ

地元・東京グレートベアーズへ

 岩手から東京、イタリア、日本代表としてアジア大会に向け万全な状態で臨むために準備を重ねる日々を過ごす。そしてその最中である7月1日には、1人のバレーボール選手としてまた新たな挑戦がスタートすることも公に発表された。

 昨シーズン、Vリーグに新規参入した東京グレートベアーズへの移籍だ。

 ジェイテクトSTINGSで戦った昨シーズン、東京・有明コロシアムで開催されたグレートベアーズのホームゲームは8142名の観客動員を記録した。試合後、柳田も「観客がたくさん来られている中でバレーボールができるのは嬉しく、幸せだと思ったし、エンターテイメント性を強く出す中、見ている観客の方々も楽しかったと思う環境だった」と述べたように、初年度の昨シーズンは集客やチームの知名度アップのためにさまざまな工夫を凝らしたグレートベアーズに自らが加入する。

 新たな挑戦に向け、柳田はチームを通してコメントを寄せた。

「東京グレートベアーズの一員となり、更なる選手としての成長とチームの勝利に貢献をして、この東京という影響力のある場所で、ひとりでも多くの方々にバレーボールの魅力を感じてもらえるように、また新たに挑戦をしていきたいと思っております」

東京グレートベアーズホームページより抜粋)

31歳、変わらぬ努力で未だ進化の途中

 自らの出身地である東京を拠点とするのは、東洋高校のエースとして一躍スターダムへと駆け上がった高校時代。日本代表にも初選出された慶大時代以来。当時と変わらぬ華と、どれほど注目を浴びようと妥協することなく重ねてきた努力の成果を再び、地元・東京で。

 7月6日で31歳。日本代表で、東京グレートベアーズで。柳田将洋はどんな姿を見せるだろう。これからへ続く、新たな挑戦に楽しみは広がるばかりだ。

視点は常に前へ。新たな挑戦がこれから始まる
視点は常に前へ。新たな挑戦がこれから始まる写真:YUTAKA/アフロスポーツ

スポーツライター、フリーライター

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、月刊トレーニングジャーナル編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に「高校バレーは頭脳が9割」(日本文化出版)。共著に「海と、がれきと、ボールと、絆」(講談社)、「青春サプリ」(ポプラ社)。「SAORI」(日本文化出版)、「夢を泳ぐ」(徳間書店)、「絆があれば何度でもやり直せる」(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した「当たり前の積み重ねが本物になる」(カンゼン)などで構成を担当。

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