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テニス全豪オープン予選デビュー、若手選手紹介(2):内藤祐希

内田暁フリーランスライター
2018年のJr.オリンピック混合ダブルスで優勝した内藤(左)。右は田島尚樹(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 ジュニア時代から、将来を最も嘱望されてきた一人だと言えるだろう。

 14歳にして、世界への登竜門とされる世界スーパージュニア(大阪市長杯)で準優勝。その後はジュニアのみならず、年長者たちに混じって一般の国際大会にも出場し、特にダブルスではタイトルも手にしてきた。

 ダブルスで結果を出すだけあって、ボレーやドロップショットなどの小技も得意とするオールラウンダー。163cmの身体は現在の女子テニス界では決して大柄ではないが、コンスタントに170km以上を記録するサーブでポイントを取れるのも強みだ。海外や大舞台でも物怖じする様子がなく、どこか飄々とした掴みどころのない雰囲気も、究極の個人競技であるテニス向きだと思われてきた要因だろう。

プロ転向から、まだ半年の18歳。その短期間で心身ともに急成長し、初のグランドスラム予選で初戦を突破した内藤。(写真本人提供)
プロ転向から、まだ半年の18歳。その短期間で心身ともに急成長し、初のグランドスラム予選で初戦を突破した内藤。(写真本人提供)

 高校を卒業しプロに転向した昨年は、練習環境も一新した。杉山愛や森田あゆみのコーチを歴任する丸山淳一の門を叩き、松岡修造らを指導してきた佐藤雅弘トレーナーの下で、フィジカル強化にも励んできた。その取り組みは着実に実を結び始め、昨季はITF(国際テニス協会)主催の下部ツアー大会で、優勝5度、準優勝4度の戦績を残す。ランキングも、年始めの600位代から200位を切るところまでジャンプアップし、今回の全豪オープンでグランドスラム予選デビューを果たした。

 その初戦で内藤は、快調なスタートを切る。世界135位のフリードサム相手に打ち合いで完全に主導権を握り、余裕すら漂わせて第1セットを奪い去った。

 だが第2セットに入ると、内藤にやや早いミスが目立ち始める。常に先行される劣勢を強いられるが、それでも終盤でブレークし追いつくと、続くゲームでは時速173km、さらに179kmのサーブでエースを奪取。かと思えば、深いボールで相手を押し下げ、ネット際にボレーやドロップショットを沈める巧みさも披露する。最後は、開き直ったように攻めに転じる相手の猛攻も凌ぎつつ、フォアのウイナーで「ものすごく嬉しい」勝利をもぎ取った。

 試合後の内藤は、第2セット序盤にミスが続いたその理由を、「ラリーで打ち勝てるという思いが、逆に緊張につながった」と分析した。そして、その緊張と向き合うことこそが、彼女が丸山コーチから学んだことだとも明言する。

 「前は緊張すると、今晩は何を食べようかなとか、関係ないことを考えて気を紛らわせていた。でも丸山コーチからは、その緊張を乗り越えられるのがトップの選手だと言われました」

 多くの大舞台を踏んできたコーチの言葉は、彼女の中での世界の捉え方を、確実に変えたのだろう。確かにこの日の試合でも、ミスをしても淡々とルーティーンを繰り返し、時には笑みを浮かべて緊張と対峙しながら、次のポイントに向かっていく彼女が居た。

 10代前半から世界を舞台に戦ってきた彼女には、目指す地点に迷いがない。

 2020という十年紀を迎えると同時に、その高みへ続く一歩をまずは踏み出した。

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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