強制わいせつ等刑法犯8割が不起訴、事故現場検証もできない「主権放棄」は変えられるかー沖縄県知事選
明日30日に投開票が行われる沖縄県知事選。その争点は、辺野古への米軍基地移設だけではない。急逝した翁長雄志・前知事の「置き土産」、日米地位協定の抜本的改定の全国知事会合意をどう継承するかも、重要な争点だろう。そして、沖縄県知事選の結果は、来月から米軍の輸送機オスプレイが配備される東京都など、沖縄県以外の米軍基地を抱える全国の自治体にとっても無関係ではないのだ。
〇在日米軍関係者に刑法犯8割が不起訴
今年7月、全国知事会が日米地位協定の抜本改定を求める提言を全会一致で採択した。日米地位協定とは、在日米軍に施設や用地を提供する方法や、日本国内での米軍人の権利などについて定めた協定。特に、在日米軍が事実上の治外法権にあり、日本の法律が適用されず、犯罪を犯した米兵の取り調べや引き渡しにも、「公務中」の米兵の犯罪については、在日米軍側が一時裁判権を持つなど大きな制限がある。頻発する米軍による犯罪・事故へ、沖縄県側がいくら抗議しても状況が改善されない大きな要因が、この日米地位協定なのだ。
昨年においても、日本全国での在日米軍関係者による強制わいせつ/性交、暴行や窃盗など刑法犯の起訴率は16・3%と、国内全起訴率である約38%の半分にも満たなかった(日本平和委員会の調べ)。実に、在日米軍の刑法犯の8割以上が不起訴となっているのである。
また、2016年2月に沖縄県名護市沿岸に米軍輸送機オスプレイが墜落した際や、昨年10月、米軍ヘリが沖縄県東村高江に墜落した際も、沖縄県警は証拠品の確保や現場検証すらできない有様であった。
日米地位協定の問題点について、翁長前知事の主導のもと沖縄県は、ドイツやイタリアなどの諸外国における米軍地位協定を調査。1960年の締結以来、一度も改定されていない日米地位協定が、他国の米軍との協定に比べ、自国の主権を放棄したままであることが浮き彫りとなった。
〇東京都民の安全にもかかわる
日米地位協定は、沖縄県だけの問題ではない。例えば、東京都にも横田基地に米軍の輸送機オスプレイが来月1日にも配備される。オスプレイは、前述したように2016年2月に沖縄県名護市沿岸に墜落し2人が負傷したほか、昨年8月にもオーストラリア沖での墜落で3人死亡するなど、度重なる重大事故を起こし、専門家からも「欠陥機」との指摘がある。横田基地周辺には、住宅が密集し、学校や保育園、病院などの施設がいくつもあるが、日米地位協定の下、日本側がオスプレイの飛行を規制することはできない。
実際、この間、「横田基地に関する東京都と周辺市町連絡協議会」では、米軍機について安全対策の徹底や生活環境への配慮等を求めるとともに、夜間等の飛行訓練を行わないことなどを要請してきたが、在日米軍はどこ吹く風だ。横田基地周辺の住民達によると、前倒しで横田基地に飛来しているオスプレイは、急旋回や離発着*などの危険な訓練を繰り返し行っているという。
*離発着時が最も事故が起きやすい。
〇日本全体としても重要な分かれ目
今回の沖縄県知事選の有力候補、「オール沖縄」推薦の玉城デニー氏と、自公が推薦する佐喜真淳氏は、共に日米地位協定の抜本的な改定をその政策課題としている。だが、安倍政権は度重なる在日米軍の犯罪・事故にもかかわらず、日米地位協定の改定には後ろ向きで、地位協定の「運用改善」を行うと繰り返すばかりだ。安倍政権から全面的な支援を受けている佐喜真氏が、本当に日米地位協定の抜本的改定に取り組めるかには疑問が残る。
他方、翁長前知事は、前述のように全国の知事達をまとめ、日米地位協定の抜本的改定を求める提言を採決した実績がある。翁長前知事の「後継者」である玉城氏は、翁長氏の遺志を引き継ぐと見てよいだろう。
日米地位協定の抜本的改定は、米軍基地・施設を抱える全国30の都道府県の住民の生活や安全を大きく左右する。抜本的改定の動きの中心を担った沖縄県の知事が誰になるかは、同県は勿論のこと、日本全体としても重要な分かれ目になるだろう。
(了)