阪急阪神ホテルズの6施設が営業終了へ-最高立地の「大阪新阪急ホテル」に“もったいない”の声も
営業終了の6ホテル
阪急阪神ホテルズについて驚きのニュースが飛び込んできた。関西の経年施設を中心として6施設を順次営業終了させるという。
営業を終える施設と時期は「第一ホテルアネックス」(2021年度末)、「吉祥寺第一ホテル」(21年度末)、「梅田OSホテル」(遅くとも21年度末)、「第一ホテル東京シーフォート」(22年度末)、「大阪新阪急ホテル」(24年度末頃)、「千里阪急ホテル」(25年度末頃)とのこと。冒頭に思わず“驚き”と書いてしまったが、コロナ禍という状況を鑑みれば、有名ホテルグループとはいえある程度想定されたことなのかもしれない。
東北から九州まで各地へ展開するホテルグループ
そもそも阪神阪急ホテルズは「阪急ホテル」「第一ホテル」「レム」「阪神ホテル」「レスパイア阪急」といったブランドで多角的な展開をしているホテルグループだ。フルサービスタイプといったシティホテルのイメージも強いが、レム(眠りをデザインする)のようなコンセプト型の宿泊特化タイプの存在も際立つ。
阪急阪神ホテルズは、阪急・阪神という名のとおり関西を基盤とするものの、東北から九州まで各地へ以下のように全50施設を展開する。
東北4ホテル/東京14ホテル/神奈川1ホテル/中部3ホテル/大阪11ホテル/兵庫3ホテル/京都・滋賀4ホテル/四国6ホテル/中国3ホテル/九州1ホテル(公式サイトよりカウント)
今回は関西地区の経年施設も対象とするようだが、一方で「ホテル阪急レスパイア大阪」のような先取的な施設の打ち出しも際立っており、コロナ禍収束を鑑みつつも、グループホテルとして各施設のクローズ後も含め今後どのような方向性でホテル運営が展開されていくのかも注目される。
大阪新阪急ホテルの営業終了予定には“もったいない”の声も
6施設の中では、やはりその存在感からも大阪新阪急ホテルは気になるところだろう。経年感は否めないものの、抜群の立地、利便性の高さといい「何とももったいない」というファンの声もあるだけに今後にも注目だ。筆者個人としては、つい先日「ホテル阪急インターナショナル」に滞在したばかりだったので大阪新阪急ホテルの営業終了のニュースにはより驚かされたが、阪急梅田・新阪急ホテルからホテル阪急インターナショナル方面に至る高架下を中心とした動線は、ある種どっぷり“阪急に浸れる”楽しいエリアだけに、大阪新阪急ホテルはよりシンボリックなホテルという印象がある。
今回は営業終了というショッキングなニュースが先行しているが、阪急阪神ホテルズのフラッグシップ的施設であるホテル阪急インターナショナルでいえば、コロナ禍からアグレッシブに新たな試みを打ち出す姿が印象的だった。休業していたビュッフェ&カフェレストラン「ナイト&デイ」が4月1日からフルオーダー式ブッフェを再開するということで取材したが、大幅に定員を削減したディスタンスをとったセッティングにしてスタッフの多さも凄かった。
頼んだのになかなか来ないというのは、オーダーバイキングで時々経験するが、とにかくどんどん熱々が運ばれる。オーダーもタッチパネルと一見“居酒屋か”とツッコミを入れたくなるが、なかなかどうしてこんなに見やすく便利な時短システムはない。オペレーションを相当研究し訓練されていることを感じたが、阪急阪神ホテルズのフラッグシップホテルだけに威信をかけた再開とみた。6施設の営業終了が他ホテルの運営効率をより高めることに繋がり、より洗練されたホスピタリティを提供していくだろうことに期待したい。
地元に愛された「吉祥寺第一ホテル」も
筆者は阪急阪神ホテルズの全軒へチェックインした経験を持つが(2020年8月現在)、東京西部在住ということもあり今回の6施設の中でも「吉祥寺第一ホテル」は印象的なホテルで密かなファンだった。それだけに今回の営業終了予定の一報はショックだ。
そもそも、宿泊のほかにもレストランやウエディング、バンケット(宴会)など多くのサービスを提供するホテルをシティホテルというが、地域に根ざし住民の人々が多く利用、交流の場として機能するホテルは“コミュニティホテル”ともいわれる。そうした意味で、吉祥寺駅徒歩約5分のメイン通りに面する立地の同ホテルは、宿泊はもちろんのこと、各種レストランからボウリングセンターまであり、地域のコミュニティスペースとしての役割も大きく、街のランドマーク的な存在として地域に愛されてきた。
客室は、壁面には森をイメージしたアートを掲げ都会の喧騒を忘れる穏やかな空間で、武蔵野の自然を演出した秀逸なコンセプトとデザイン。武蔵野の自然をフィーチャーする洗練された癒しのホテル時間が過ごせる。一般的に客室の窓は外へ向けた眺望が良しとされるのは当然であるが、吉祥寺第一ホテルでは内側、すなわちアトリウムロビーに向いた窓の客室も人気だ。
窓を少しあけるとラウンジでお茶を楽しむ地域の人々、流れる心地よいジャズの響き、いまも変わらない吉祥寺の品格を質感高い客室で感じることができる。アトリウムラウンジは、明るい光が降り注ぐ4フロア吹き抜けという大空間の庭園で、ゆったりとした開放的な空間でお茶や軽食が楽しめる。アトリウムラウンジで過ごす時間は至福のひとときという人々は多く、今日も吉祥寺を愛するたくさんの笑顔が集う。それだけに今回の一報は残念という声が聞こえてきそうだ。
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やはりホテルは“新しいことは最大の魅力“というのは間違いない。一方で、旅行者の宿泊先としての存在価値はもちろんのこと、街を潤し文化を育ててきた側面もまたホテルの存在であることを今回のニュースで改めて感じた。