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ゴルフのメジャー大会、全米プロは無観客での開催が決定。選手やファンの気持ちは付いていけるのか?

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
今年の全米プロは無観客での開催になる。こんなシーンを見ることはできないが、、(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ゴルフのメジャー大会が無観客で開催されることが決まった。

 男子ゴルフのメジャー4大会の1つ、全米プロは、本来なら5月に開催される予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で8月6日からの4日間へ延期されている。

 開催場所は本来の予定通り、カリフォルニア州サンフランシスコのTPCハーディング・パークだが、選手たちは大観衆の拍手喝采やどよめきを聞くことなく、静寂の中でプレーすることになる。16日(現地時間)に正式発表される予定だが、地元紙のサンフランシスコ・クロニクル紙が明かし、米メディアがすでに報じている。

【選択したのはプランB】

 このニュースを聞いて首を傾げるゴルフファンは多いことだろう。というのも、先週11日から再開した米男子ツアーは、再開からの5試合を無観客で開催した後、7月16日から開幕するメモリアル・トーナメントでは人数制限は行なうものの観客を入れて開催することがすでに発表されている。

 全米プロは、それからさらに2試合を挟んだ後の開催となるのだが、それでも無観客での開催を決めた理由は、TPCハーディング・パークでの開催にこだわったからだ。

 カリフォルニア州は新型コロナの感染拡大が激しいエリアの1つ。同州の州政府は大規模イベントやスポーツのビッグ大会開催に対し、厳しい制限を設けており、何十万人もの大観衆が詰め寄せるゴルフのメジャー大会も州政府の制限をクリアすることができない状況にある。

 全米プロを主催するPGAオブ・アメリカのセキュリティ対策オフィサー、セス・ウォウ氏は、苦渋の選択の舞台裏を、ラジオ番組の中で、こう明かした。

「我々のゴールは、観客を迎え入れて全米プロを開催すること。だが、プランBとして、観客を入れずにハーディング・パークで開催するという代替案も用意しており、今回はプランBを採用せざるを得ない」

【大観衆の声援の力は?】

 3月半ば以来、ほぼ2カ月ぶりで再開した先週の米ツアー大会、チャールズ・シュワッブ・チャレンジで無観客試合を経験した選手たちの大半は「拍手も歓声もなくて、違和感はあった。だが、それでも戦う緊張感は感じたし、ツアーが再開し、再びプレーできることが何より嬉しい」と評価していた。

 無観客の静かなメジャー大会になるとはいえ、選手たちにとっては「無いより、あるほうがいい」に違いない。

 しかし、気になるのは観戦するファンの側の興味関心が、どうしても静かで緩慢なムードになる無観客メジャーについていけるかどうかという点である。ファンの興味関心のレベルは、そのままTV中継の視聴率に反映されるはず。それはスポンサーを維持確保できるかどうかという問題へつながっていくはずである。

 そして何より、「大観衆の声援が力になった」と感じるはずの選手たちに、その「力」がもたらされないことが、優勝争いの大詰めでどう影響するかが気になる。

 しかし、そうした「気になる」を新たな興味関心に変えれば、少なくとも観戦の楽しみが少しは増えることになる。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、ラジオ福島、熊本放送でネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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