非正規社員の人達に、なぜ非正規で働くのかを聞いてみた
「正規の仕事に就けなくて仕方なく」は男性1/4足らず、女性1割強
労働に関わる問題で取り上げられることが多い非正規社員問題。当事者はいかなる理由で非正規として就労しているのだろうか。総務省統計局が2017年2月に発表した、2016年分の労働力調査(詳細集計)の速報結果をもとに確認していく。
労働力調査によると2016年における非正規社員は2016万人。これは前年比で36万人の増加となる。雇用者全体(5372万人、役員除く)に占める比率は37.5%。これら非正規雇用の人達に、なぜ現職(非正規の立場)についているのか、その主な理由を聞いた結果が次の図。男女それぞれの回答者に占める比率と、回答実数をそれぞれグラフ化する。
性別の全体比率で見ると男性では「正社員としての仕事が無い」と「自分の都合の良い時間に働きたい」がほぼ同率。前者は非正規雇用問題で問題視されることが多い「正規雇用の椅子が減らされ、その分非正規雇用の椅子が増やされるので、そちらの椅子に座らざるを得なくなる」との指摘に該当する事例だが、男性においては1/4近くが同意を示すことになる。他方後者の「自分の都合の良い時間に働きたい」をはじめ、「家計の補助・学費などを得たい」「専門的な技術などを活かせる」とする自発的な意見が続く。
一方女性は「自分の都合の良い時間に働きたい」がもっとも多く、「家計の補助・学費などを得たい」が続く。いずれも兼業主婦のパート・アルバイトでよくありがちな理由。男性で最上位についた、ネガティブな理由「正社員としての仕事が無い」は1割強でしかない。
これを人数別に見ると合計では、女性と男性とを比較すると女性の方が非正規社員は多いこともあり、「自分の都合の良い時間に働きたい」が最上位に、次いで「家計の補助・学費などを得たい」が続き、「正社員としての仕事が無い」は3番目の理由に落ち着く。ちなみに「正社員としての仕事が無い」は合計で296万人となるが、これは非正規社員全体(2016万人)の14.7%に留まることになる。
非正規で転職したい、辞めたい人はどれほどいるのか
どのような職に就いている人でも、その職を離れたい、転職したいと考える人は存在する。ましてやネガティブな理由で現職に居る人は、できることなら転職し、他の環境で働きたいと願う気持ちが多分にあると考えられる。そこで非正規社員の立場の人に、現職についた主な理由別に「転職などをしてみたい?」と聞いた結果が次のグラフ。
なお全体では2016万人のうち転職希望者は438万人(21.7%)、約2割強との結果となっている。また「転職『など』をしてみたい?」には転職、つまり現職を離れて別の職に付きたい以外に、今の職から離れたいが求職はしたくない人、つまり仕事を辞めたいだけの人も居ることに注意が必要。
主に自分の都合で非正規社員になった人でも「転職したい」と考えている人は1割から2割ほど居る(男性で「家事・育児・介護などと両立しやすい」で33.3%の値が出ているのは、元値が小さく統計上のぶれが生じているため。実数としては万単位の整数値までの公開において、6万人のうち2万人が対象)。しかしながらネガティブな、正社員を望んだものの半ば願わずしての結果として非正規社員の座についている人は、約半数が転職なり退職を望んでいる。恐らくは他の理由で現職に就いている人よりも、転職への想いも強いことだろう(事実、転職希望者のうち求職者が占める割合は、他のどの理由項目よりも「正社員としての仕事が無い」の人が大きい)。
今件項目は労働力調査において、非正規社員問題に世間の注目が集まる状況を受け、2013年分から新設された項目。少なくとも現状においては、「非正規社員の男性1/4弱、女性1割強は『正社員になりたかったがなれず、仕方なく』非正規社員として働いている」「正社員に成りたかったけどかなわず、非正規社員の立場にある人のほぼ半数は転職、少なくとも離職を望んでいる」との現状は、認識しておくべきだろう。
一方で「正規の職員・従業員の仕事が無い」とする理由については、単に「正社員としての受け皿が少ない」のみと判断するのは早急。完全失業者などの失業理由でも、多分に雇用する側とのミスマッチが指摘されている以上、非正規社員の「正社員の仕事が無い」とする意見においても、類似の傾向があるものと考えた方が道理は通る。
本当に「正社員としての受け皿縮小が、正社員を望んでいた非正規社員の増加につながっている」のか否か、そして事実ならばどれ程までに影響を及ぼしているのか、今後複数の視点から検証する必要があろう。
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