漸減続ける実日数…入院患者の在院日数推移
単発の治療で済むような軽度の、または通院治療で済む程度の病症なら良いが、手術などが必要な状態にまで悪化していたり、絶え間ない健康管理、投薬が必要な場合、そして自然治癒力の低下が生じて状況が悪化した場合には医師らによる即時対応が可能な、良好な環境下における回復を待たねばならない時は、入院を余儀なくされる。この入院(在院)日数も医療技術の進歩や医療費の過大感を抑えるための方針と共に、同じ病症でも昔と比べて今は随分と減っている。そこで厚生労働省が定点観測的に実施している「患者調査」の最新版公開資料を基に、入院していた人の平均入院日数の動向を確認していくことにする。
次に示すのは調査年の9月1日から30日の1か月の間に退院した人における、平均的な在院日数の推移。病症や対象となった退院患者の年齢などは一切仕切り分けせず、単純に退院した人全体の平均値。
大よそ在院日数は減少の動きを示している。この30年間で大体1/3ほどに短縮した形となる。もっとも人口構成比やそれに連なる入院患者における人口構成比で、長期入院が必要となる高齢者の比率が増加していることから、(高齢者に限った平均在院日数が減退しても)今後は全体としての平均値の減り方は緩やかになると思われる。
また一般診療所よりも病院の方が、在院日数は長い。これは長期入院が必要となる重度の病症は、一般診療所では治療がしにくいのが大よその理由となる。
これを年齢階層別に見たのが次以降のグラフ。まずは病院。
34歳までの若年層は、その層で発症しうる病気や怪我における治療に必要な日数の短縮がほぼ上限に達しているようで、今世紀に入ってからは日数は横ばい。一方、35歳以上は直近に至るまで短縮の一途をたどっている。1984年から30年で、ほぼ半分にまで期間は短縮されている。長期入院は患者の心身、そして経済面への負担となることから、同じ治療効果が期待できるのであれば、在院日数は短い方が好ましい。
病院と比べて重度の患者の長期治療体制を整えることが難しいため、病院よりも一般診療所の在院日数は短めとなっている。短縮化は病院同様だが、高齢層の動向が2008年以降ほぼ横ばいにシフトしてしまったのが気になる動きではある。
長期入院の場合は短期の一時退院が許されることもあるが、原則は入院したら退院まで病院の外で長期間の行動をすることはかなわず、院内のみで行動を制限されることになる。昔と異なり現在ではインターネットの利用許可をする医療施設も増えているため、退屈しのぎの手段は随分と増えたが、それでも行動の束縛著しい在院そのものの長期化を望む人は多くない。
さらなる医療技術の進歩による、在院期間の一層の圧縮化を願いたいものだ。
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