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6割近くが「厳しい」意識、ここ数年は改善に…生活意識の変化をさぐる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 生活のゆとり感、どれほど感じてますか?(写真:アフロ)

生活のゆとり感は個人の経済的な貧富実態だけでなく、多分に心境や流布情報に左右される。厚労省の定点観測調査「国民生活基礎調査」(※)の公開値から、その推移と現状を確認する。

今回対象とする生活のゆとり感、すなわち「生活意識の状況」は生活意識について「大変苦しい」「やや苦しい」「普通」「ややゆとりがある」「たいへんゆとりがある」の5選択肢から1つを選んでもらい、その回答を集計したもの。その経年変化を記したのが次のグラフ。全体構成比の変化の他に、個々の項目の動きを把握しやすいよう、各項目毎の動向を記した折れ線グラフも併記する。

↑ 生活意識別世帯数の構成割合の年次推移(国民生活基礎調査、1986~2016年)(構成比棒グラフ)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合の年次推移(国民生活基礎調査、1986~2016年)(構成比棒グラフ)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合の年次推移(国民生活基礎調査、1986~2016年)(折れ線グラフ)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合の年次推移(国民生活基礎調査、1986~2016年)(折れ線グラフ)

景気動向による「ぶれ」はいくぶんあるものの、中長期的に見ると一貫して「大変苦しい」単独、そしてそれと「やや苦しい」を合わせた「苦しい派」(赤系統着色部分)が増加している(「やや苦しい」は前世紀末から大きな変化は無し)。1993年の大幅増加はイレギュラー的な感が強いが(バブル景気が崩壊した時期と重なるため、そのための景況感悪化の可能性もある)、それ以外は2009年まで漸増、それ以降は数年に渡り大きな増加率を示しているのが確認できる。特に「大変苦しい」の回答者率が2011年にかけて大きく増えたのが目に留まる。同時に「ややゆとりがある」がわずかだが減っているのも分かる。

これが2007年夏以降に具象化した金融危機(サブプライムローンショックやリーマンショック)によるものか、あるいは失策によるものかまでは、今件調査結果だけでは判断できない。ただし経済的には大きなマイナス面での変化をもたらしたリーマンショック以降に大きな増加が起きており、景況感に多分な連動性があることは容易に推測できる。

また2011年に大きく「苦しい派」が動き、2012年から2013年にかけて多少なりとも戻しているのは、2011年における震災の影響と、その反動によるものと考えられる。

さらに2014年は再び「大変苦しい」が増加し「ややゆとりがある」が減っている。これは消費税率引き上げが2014年4月に行われ、その直後の2014年7月に今項目の調査が実施されていることから、心理的な重圧感が多分に作用したもののようだ。

それ以降は景況感の変化を受け、「大変苦しい」は大きく減り、「やや苦しい」は多少増えたものの「苦しい派」も減少し、直近の2016年では金融危機ぼっ発前後とほぼ同じ水準にまで戻っている。長期的な流れの中でも稀有な値動きであり、少しでも「苦しい派」が増加した過去においては大きく取り上げられ、騒がれた(特に2014年)にも関わらず、2015年以降の値動きには見向きもしないのは、報道の実情が透けて見える感は否めない。

いずれにせよ現実問題として、「いわゆる『一億総中流意識』はすでに過去のもの」「生活に苦しさを覚える人は6割足らず」との結果には違いない。この現状は覚えておくべき。「中流意識は遠くになりにけり」である。

一方、他の調査、特に国際比較調査からも、日本人は他国の人と比べて自身への評価を低めに抑える、悲観的に考える方向性があるとの結論が出ていることを思い返すと、それを実感させる動きには違いない。

いくぶん蛇足感はあるが、2016年における世帯状況別の割合は次の通り。前年からの比較をするため、2015年の値も併記しておく。

↑ 生活意識別世帯数の構成割合の年次推移(国民生活基礎調査、2015年)(世帯状況別)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合の年次推移(国民生活基礎調査、2015年)(世帯状況別)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合の年次推移(国民生活基礎調査、2016年)(世帯状況別)
↑ 生活意識別世帯数の構成割合の年次推移(国民生活基礎調査、2016年)(世帯状況別)

全体値同様各属性でも「大変苦しい」が大きく減り、「普通」が増加している。「ややゆとりがある」も増加の動きを見せている。変動に関する属性別の違いは無い。一方で生活のゆとりの観点では高齢者の方がやや気楽、子供がいる世帯では一層の厳しさを覚えている。

そして母子世帯の生活感の苦しさは注目に値する。あくまでも回答者の心理的な部分が多分にあるとはいえ、下側2項目の属性における傾向には、大いに留意を払い、状況改善の施策への優先順位を押し上げるべきだろう。

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※国民生活基礎調査

全国の世帯及び世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2016年6月2日・7月16日にそれぞれ世帯票・所得票・介護票、所得票・貯蓄票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収できたデータは世帯票・健康票が22万4208世帯分、所得票・貯蓄票が2万4604世帯分、介護票が6790人分。

今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2016年分)は大調査に該当する年であり、世帯票・所得票だけでなく、健康票・介護票・貯蓄票に該当する調査も実施されている。

また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大地震・震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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