ロシアの部分的動員で続々と登場する地下サイトの「徴兵逃れ」ビジネス
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は9月21日、ウクライナで続いているロシアによる「特別軍事作戦」という名の侵略戦争が思うように進んでいないために、国内で部分的動員を行って、軍務経験のある予備役を30万人招集する計画を発表した。
この計画には、国内でも反発が出て、イギリスのBBC放送などによると、ロシア32の都市で9月24日までに724人が逮捕されたと報じられている。結局、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は10月4日までに、部分的動員で20万人以上がロシア軍に合流したと発表している。
そもそも、侵攻されて自衛する側ではなく、侵攻した側が兵力不足になっているということ自体、危機的な戦況だと言える。しかも、そんな戦場に、訓練もまともに受けていないまま兵士が送られているといった話も出てきており、これからも国内に不安が広がりそうだ。
そしてこうしたロシアにからんだ混乱は、サイバー空間でも起きているようだ。
アンダーグラウンドのサイバー犯罪コミュニティでは、ロシアにからんで新しいサービスが登場している。地下のインターネット空間にあるダーク(闇)ウェブでのサイバー犯罪者などの動向を見ると、ロシアでの徴兵に行きたくない人たちへのサービスがアンダーグラウンドのサイトで確認されている。
例えば、病気であることを証明する正当な書類が販売されている。ここでは、例えばHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の陽性を示す証明書では、合併症などの深刻度合いも「オーダー」できるようだ。さらに、B型肝炎やC型肝炎の証明書も購入できる。しかも7万円ちょっとで手に入れられると喧伝している。
売り出している人物は匿名で誰なのかはわからない。ただこの人物は2019年からこのフォーラム(掲示板)に参加しており、過去に5件の売買を行っている。そして、今回のように危険な売買を行なっているために、匿名で利用できるアンダーグラウンドのダーク(闇)ウェブを使い、匿名で利用できる暗号資産などで支払いを行っているのである。
今回の部分的動員では、徴兵を逃れるために、多くが国境に向かい、脱出を試みているとも報じられた。
そんなことから、フォーラムには「9月30日までに6人を“スーパーパワー”から合法に出国させる」という募集も投稿されている。この「スーパーパワー」というのはロシアのことで、ロシア中央部のスヴェルドロフスク州で募集されている。
また別の投稿では、ロシア国内で国外に出るのを禁止されている人たちを対象に、1万5000ルーブル(約3万5000円)で脱出させるという募集もある。そこには、次のような人たちが国外に移動できないと書いている。例えば、「税金未納」「莫大な住宅ローン」「交通違反の罰金未納」「慰謝料や養育費の未納」などがあれば、通常は出国はできないが、この投稿者はそれを可能にするらしい。
さらにこんな投稿もある。徴兵されない仕事を提供するというものだ。ヤマロネネツ自治管区やハンティマンシ自治管区で、合法的に短期間で仕事を与えられるという。面白いのが、依頼を受けてからのプロセスを説明している点だ。
1. プライベートなメッセージまたはTelegramでリクエストを残す
2. 私からいつどこに行くのかを伝える
3. 然るべき当局に連れて行く
4. 私は別の場所に行く
5. 自分で4〜7日ホテルを手配して滞在
6. 契約書を結ぶ
7. 2日後には予約は確定
8. その後働き続けてもいいし、何も恐れずに自宅に帰ってもいい。自腹で休暇もよし
ロシアの徴兵を逃れたい人たちは、地下のサイバー空間に救いを求めているようである。今後の動向もまたリポートしていきたい。