高市早苗と櫻井よしこが語る経済安全保障と国防「中国はミサイルを撃ち込むと同時に無人機で攻撃してくる」
2021年9月17日に、自由民主党(自民党)の総裁選挙が告示された。河野太郎規制改革相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行の4名が立候補を届け出た。
そして高市早苗氏は9月18日に配信された自民党の「総裁選CafeSta」にも登場。「高市早苗候補特番#01 世界が注目!第100代日本初の女性総理誕生?」というタイトルで、櫻井よしこ氏と一緒に日本の将来の展望や危機管理の持論などを幅広に語っていた。
その中でも高市氏は中国の脅威と経済安全保障、国防におけるサイバー防衛の重要性を強調していた。高市氏は以前から自身のコラムでも、安全保障の観点からサイバーセキュリティの重要性を訴えていたし、出馬会見、所見発表演説会でもその重要性を強調していた。今回の番組の中でも櫻井よしこ氏とともに、経済安全保障と国防について以下のように力説していた。
「中国共産党の脅威に対抗、経済安全保障包括法案を国会に提出したい」
櫻井:高市さんが経済安全保障を切りこんで議論しているのを心強く思います。
高市:皆さんに興味を持っていただけませんでした。ですが、中国の会社法、中国の共産党規約、国家情報法を読んでいると怖くなります。ご存知かもしれませんが、中国の会社法と共産党規約を合体しますと中国共産党員が3人いる組織には、全て中国共産党を作らないといけないと書いています。日本の国内にある日本企業でも、例えば中国の従業員の方を10人雇用して、そのうち3人が共産党員だとしたら、日本国内の日本の会社内に中国共産党の組織ができます。中国共産党規約に基づいて国家に忠誠を誓っています。中国の国家情報法は、中国の諜報活動に協力する義務を課しています。これは企業だけでなく、大学、研究機関、農村(農業)にもあてはまります。そうすると、日本人が苦労して開発した機微な技術や先端技術、戦略物資が持ち出され放題になっているのが現状です。そのため一番怖いのが今まで日本はスクリーニングもせずに海外から研究者を受け入れて、我々日本人の税金で科研費を払って、研究助成をしても、例えば耐熱素材やスクラムジェットエンジンの技術なども中国の大変恐ろしい音速兵器に使用されています。つまり、私たちが私たちの身を危険に晒しています。だからこそ、スクリーニングができる環境を作ったり、特定特許は外国人に公開しないといった経済安全保障包括法案を国会に提出したいと思っています。
櫻井:現在の自由主義陣営にとって重要なのは「中国とどうやって向き合うか」ということです。アメリカがアフガニスタンから撤退しました。中国はこれがチャンスだと思って、いろんなところで膨張政策を続けています。中国への抑止が大切になります。今、本当に問われているのは、日本人とは何か、日本とはどういう国かという価値観です。中国と対峙するのに自民党も含めて遠慮しすぎです。
高市:対中国で言いますと、17-18年前に私が初めて入閣した時に靖国神社を参拝したら、大変な反発がありました。中国政府の抗議だけでなく、日本の経済界からも抗議の声が上がっていました。国内に敵がいるんだなと思いました。日本と中国の経済関係が深化しているから、閣僚が参拝することで商売に影響が出る懸念でした。でも現在、中国がいろんな法律を作って先程のようなことをしていることを日本の企業もわかってきました。だから中国に工場を進出したり、中国の会社を子会社として買収する動きが少なくなってくると思います。最近では、経済界の方から文句を言われることはありません。中国の子会社を中国の共産党組織に乗っ取られて、株式の上場ができなくなったということも起きています。多くのリスクと新しい法律に対して企業の理解が進んできていると思います。
「中国はミサイルを撃ち込むと同時に無人機で攻撃をしてきます」
櫻井:中国の軍拡のスピード、規模は凄いです。中国が持っている中距離ミサイルを我が国、アメリカは持っていないです。中国が持っている極超音速ミサイルに対抗するものが日本側にないです。そのような中で尖閣諸島も狙われていて、台湾も危険です。経済安全保障だけでなく軍事での準備も必要です。
高市:中国は衛星を破壊する技術を既に持っています。破壊実験も行っています。迷惑なことに何千個ものデブリを宇宙にばらまきました。衛星を攻撃されて、海底ケーブルを切断されて、変電所をサイバー攻撃されてブラックアウトが起きたら日本は何もできません。中国はミサイルを撃ち込むと同時に無人機で攻撃をしてきます。そのような作戦を立てています。中国はアメリカの空母への攻撃も無人機とミサイルを想定しています。これに対抗していくには、日本も無人機を所有しないといけないし、衛星の防御もしないといけません。海底ケーブルも防御しないといけません。ミサイルをしっかりと配備すべきです。
「サイバー防御は、現在の日本の法律では有効に対応できません」
櫻井:アメリカも中国の無人機やミサイルに対峙するために軍事戦略の変更を行っています。日本も臨機応変な対応が必要です。
高市:もちろんです。これからのゲームチェンジャーは無人機、衛星、サイバー、電磁波、極超音速兵器になります。しかしサイバー防御は、現在の日本の法律では有効に対応できません。相手を特定して反撃することができません。反撃することを自衛権と認めること、相手を特定するのに通信の秘密が関わってきますので、相手の特定ができません。警察庁も自衛隊も困っています。そのためにも法律を作らないといけません。
「単独で一定の防衛力があり、反撃力があることを見せつけなければ抑止にはなりません」
櫻井:アフガニスタンからアメリカが撤退したことは世界の国に教訓を与えました。
高市:米軍が日本にいることでの負担は見えやすいです。しかし抑止力は見えにくいです。アメリカ人の若い命をかけて日本を守っているという抑止力を理解しないといけません。米軍がいると事件や紛争に巻き込まれるという声が論調として大きいですが(今回のアフガニスタンからのアメリカ軍の撤退を見て、アメリカに)置いてけぼりにされたらどうするんだ?という恐怖を多くの国が感じたと思います。
櫻井:日本が経済安全保障だけでなく国防も凄く努力していかないと、アメリカは「尖閣諸島をどうしてアメリカが守らなくちゃいけないの?日本がやるべきことでしょ」と言って引いてしまうかもしれません。
高市:日本はお金を負担していて、アメリカ人は命を張ってくれています。やはり単独で一定の防衛力があり、反撃力があることを見せつけなければ抑止にはなりません。
櫻井:高市さんは「敵基地への攻撃能力をきちんと持ちましょう」とはっきり主張していました。とても心強いです。
新たなゲームチェンジャーとしての攻撃ドローン
高市氏はゲームチェンジャーの1つとして無人機をあげていた。以前は軍事面での無人機(ドローン)の活用は偵察・監視がほとんどだったが、現在では攻撃ドローンがメインになっている。攻撃用の軍事ドローンは「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。
2020年に勃発したアゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフをめぐる軍事衝突でもトルコやイスラエルの「神風ドローン」が紛争に活用されていた。「神風ドローン」の大群が上空から地上に突っ込んできて攻撃をしてくることは大きな脅威であり、標的である敵陣に与える心理的影響と破壊力も甚大である。ドローンはコストも高くないので、大国でなくとも購入が可能であり、攻撃側は人間の軍人が傷つくリスクは低減されるので有益である。
2020年3月にリビアでの戦闘で、トルコ製のKargu-2などの攻撃ドローンが兵士を追跡して攻撃を行った可能性があると、国連の安全保障理事会の専門家パネルが2021年3月に報告書を発表していた。兵士が死亡したかどうかは明らかにされていない。神風ドローンのオペレーションは人間の軍人が遠隔地で操作をして行うので、攻撃には人間の判断が入る。攻撃に際して人間の判断が入らないでAI(人工知能)を搭載した兵器自身が標的を判断して攻撃を行う自律型殺傷兵器(Lethal Autonomous Weapon Systems:LAWS)と呼ばれている。実際の紛争で自律型殺傷兵器で攻撃を行ったのは初めてのケースであると英国のメディアのインディペンデントは報じていた。
ドローンが敵の標的を察知してから、遠隔地の人間が判断するまでに時間差があり、敵を逃がしてしまったり逆襲されることもありうるので、自律型殺傷兵器のように敵を認識したら即座に攻撃を仕掛けられる方が効率が良いという意見もある。また、遠隔地にいるとはいえ神風ドローンで攻撃する判断を行い敵を殺害する人間にも精神的な負担がある。さらに攻撃側の軍人にとっては戦場で命を落とすリスクは低減されるので、攻撃側の軍人の"人間の安全保障"は確保されるようになる。
一方で、戦場の無人化が進むとともに「キラーロボット」と称される人間の判断を介さないで攻撃を行う自律型殺傷兵器が開発されようとしている。人間の判断を介さないで標的を攻撃することが非倫理的・非道徳的であるということから国際NGOや世界30か国が自律型殺傷兵器の開発と使用には反対している。イスラエルやアメリカ、ロシアなどは反対していないので、このように積極的に軍事分野での自律化を推進しようとしている。中国はキラーロボットの使用には反対を表明しているが、開発には反対していない。
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