飼料や肥料などの値上がりは一時的とは言えない。物価高は続く
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16日に日銀が発表した国内企業物価指数は、前月比プラス1.2%、前年比プラス10.0%となった。1980年12月のプラス10.4%以来約41年ぶりに2ケタの伸びを記録した。
ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で、石油・石炭製品などエネルギー価格が上昇し、鉄鋼や非鉄金属の価格が上昇したことなどが主な要因となった。しかし、この数値にははっきり表れていないが、肥料や飼料の値上がりが畜産農家に大きな影響を与えている。
畜産農家や業者が飼料の高騰に苦しんでいる。中国での需要増加や新型コロナウイルス感染拡大と原油高騰などによる輸送コスト増、さらにはロシアのウクライナ侵攻の影響から原材料のトウモロコシなどの価格が値上がりしている(4月18日付福島民友新聞)。
この時点で飼料価格は数年前の1.5倍ほどになっているようである。農林水産省によると配合飼料価格は2020年4月に1トン当たり6万円台後半だったものが、昨年12月には8万円を超えた。
中国などで畜産物・油脂類の消費が拡大することに伴い、とうもろこし等の飼料となる穀物や、油糧原料となる大豆やなたね等の需要が増加した。
原油価格の高騰と国際的な環境への関心の高まりのなかで、石油代替燃料としてバイオ燃料の生産が拡大することに伴い、原料となるとうもろこしや大豆等の需要が世界的に増加し、食料需要との競合が起こっている、というのは2007年度の農林水産省の白書での指摘である。
これは原油価格などが上昇している現在でも同様の事態が起きている。経済の正常化に伴うエネルギーの需要増に加え、ロシアのウクライナ侵攻がさらに追い打ちをかけている。ウクライナは小麦など穀物の世界的な生産国でもある。
日本の飼料は輸入に依存し、原油価格高騰や円安の影響を受けやすい。輸送費の値上がりなどによる影響も大きくなる。
日銀は現在のコストプッシュ型とみられる物価の上昇は一時的とみているようだが、欧米は一時的という認識を変えつつある。
日本でもこの飼料や肥料の価格の動きだけをみても、原油価格が多少下がったとしても、急激に飼料や肥料の価格が下がるような展開は見えにくい。
日銀は物価上昇は一時的との認識で、金融政策の正常化どころか、緩和強化にもみえかねない毎営業日の指し値オペまで実施している。これによって日米の金融政策方向性の違いにより、円安が放置されている。
果たして畜産農家などに対して、物価上昇は一時的だから問題ないと日銀は言えるのであろうか。