【泉南市】「積めない積み木」をつくる意外な理由。山の麓に佇む“夢の工場”の舞台裏を密着取材
ここに“ある積み木”があります。
この積み木は、一つとして同じ形はありません。ゆえに、なかなかうまく積むことができません。
『積めますか?』という商品名の“おもちゃの積み木”。
なぜこのような積み木をつくったのか、その理由が知りたくて 泉南市金熊寺にある手作り木工 木のおもちゃ&家具「sosion夢工場」を取材いたしました。(Google map)
すこし強面(こわおもて)だけどやさしい、頭(かしら)と呼ばれる作り手 徃西 正夫(おうにし まさお)さんの意外な素顔にも迫ります。
泉南市金熊寺の山間にある 手作り木工 木のおもちゃ&家具「sosion夢工場」。
大自然の中に佇むミントグリーンの建物は、まるで“ポツンと一軒家”ならぬ“ポツンと工場”。隣接する住居で暮らしながらご夫婦で営む “夢の工場” で、一体、どのような作品が生まれるのでしょうか。
徃西さんは、自動車メーカーの営業を経て、学習塾の講師をしていたという異色の経歴の持ち主。奈良で養鶏場を営んでいたご両親のもとで育ち、父親が“ものづくり”をする光景をよく目にしていたといいます。
「僕が、小学校にあがったばかりの頃、父が廃材を使って靴箱や本棚を作ってくれたんです。それが、全然うれしくなくて 笑。それから月日が経ち、父親になった僕は、ある日娘にせがまれて『ままごとキッチン』を作ることに。見よう見まねで作った『ままごとキッチン』は、僕的には満足のいくものではなかったけれど、娘がとてもよろこんでくれて…。こんなにうれしいんだ!って思いましたね」。
その後、徃西さんは、お父様にお詫びの電話を入れたといいます。
「あの時、あまりよろこばなくてごめん」と。
「よろこばなかった」ことに対する謝罪。「よろこんでもらう」うれしさを知った人にしか出来ないことだと感じました。当時、シングルファーザーだった徃西さん。お仕事の傍ら、まだ小学生だった娘さん、息子さんと一緒に“ものづくり”をはじめたそうです。どうやら「sosion夢工場」のルーツは、この頃にあったようです。
工場内をすこし見せていただきました。
さまざまな工具や完成部品が並べられた工場は、決して雑然とした雰囲気ではなく、丁寧に整理整頓されている印象です。
これ何ですか?と尋ねると、「あー、それはシンクの蛇口ですよ」と徃西さん。
おままごとで使う一つ一つの部品を、とても丁寧に扱われている様子が伺えます。
これは、「包丁」ですね?
この「包丁」は、あと“3工程”で完成とのこと。せっかくなので徃西さんにお願いして、製作の様子を見せていただきました。
まず、包丁の柄(え)と刃の間に切り込みを入れます。
次に、柄(え)の横の余分な木材を切り落とします。
そして、次は刃をつくる工程です。
まるで“包丁研ぎ師”のような華麗な手さばきで、いとも簡単に研ぎあげていきます。
すごい!本格的な包丁です!
これで完成かと思いきや「いや、まだあるんです」と徃西さん。
「え?まだあるんですか?もう“3工程”終わりましたよ…」。
おもむろに道具を取り出し、何かを打ち込んでいます。
「鋲(びょう)」ですね! 家庭にある「包丁」にそっくりです。
“子どものおもちゃ”と真摯に向き合い、とことん「リアル」を追求する徃西さん。
どうしてここまでこだわるのか、その理由を尋ねました。
「『ままごと』とは、子どもが玩具などを用いて、家事の“まねごと”をする遊びです。“あきらかに違う”はダメ。“本物感”が大切です。木のおもちゃはデフォルメされているものが多く、それでは子どもは本気で遊ばない。つまらないでしょ?本物っぽくないと」。
「子ども騙し」などという嫌な言葉がはびこる中、子ども目線で“ものづくり”をしている徃西さん。「僕自身が、まだ子どもなんですよ」と笑います。
「sosion夢工場」では、工場直売のほか、Yahoo!ショッピングなどのネット通販で「木のおもちゃと家具」の販売をおこなっています。
どんな商品があるのか、奥さんに事務所を案内していただきました。
夢がいっぱい詰まった“秘密基地”のような事務所。以前、この場所は、ドライブイン的な「お食事処」だったそう。
“料理をしているおかあさんのまねごと”ができる、包丁とまな板がセットになった「ままごとキッチン」。デザインもとっても可愛らしいですね。こちらは「卓上」タイプで、床に直接置く「大型」タイプもあるそうです。
赤い「五徳」は、ガス火でお料理をしている気分♪
*無塗装もお選びいただけます。
環境と健康へ配慮した“バターミルクペイント”使用。
「蛇口」はもちろん回転します 笑。
*「三角の蛇口」を「丸い蛇口」に変更も可(無料)
工場で作っていた「包丁」ですよ!まな板の上にあると、よりリアルに感じますね。
「クーゲルバーン」は、木の玉を転がして遊ぶおもちゃ。手前と奥へ行ったり来たりする玉の動きもなんだか不思議で、飽きずに遊んでくれそう。
お孫さんへのプレゼントに選ばれる方が多いそうです。
こだわりがいっぱい詰まった「手押し車」は、「sosion夢工場」の人気商品。
「手押し車」は、木のタイヤで動くものが一般的ですが、「sosion夢工場」のものは、階下への騒音を心配されるマンションやアパート暮らしの方にも安心してお使いいただけるよう、*「ハンマーキャスター社」のキャスターが付いています。
*「ハンマーキャスター社」…日本のキャスター業界を牽引するトップメーカー
実際に押してみたところ、とても静かで滑らかな押し心地でした。
「小回りが利くのもキャスターの良いところ。持ち手が90度だから重心が真下にかかり、転倒もしにくいですよ」と奥さん。
狭い室内でも歩ける範囲が広がりそうですね。
透かし模様の「片耳うさぎ」が可愛い。透かし模様のデザインは、星、ハート、月、チューリップ、ちょうちょ、りんご、くまなど、お好みによっていろいろ選べます。
他にもペット用の食器や、歯磨きドレッサーなど、実用的な商品がたくさんありました。
この「歯磨きドレッサー」は、イヤイヤ期の子どもにとても重宝するそう。
「普段づかいの部屋に置いたら、自分から歯磨きをしてくれるようになりました!」との声も。子育て経験者がつくる“お悩み”に特化した商品は、新米ママの強い味方です。
うしろに見えているのは、もしや「積めない積み木」では?
「積めない積み木」と称される「積めますか?」という商品名のこちらの積み木。
ゴツゴツとしたカタチの違う木の集合体は、「これが積み木?」という印象です。
どの面を見ても平らな面などなく、「積めない積み木」と称されるのも納得。
でも、なぜだか見た瞬間からメラメラと“負けず嫌い精神”に火がつき、いびつな顔をした木の塊にまるで「積めますか?」と挑戦状を突き付けられているような気分に。
では、チャレンジを。わたし負けず嫌いですから。
なんとも不安定な積み木…グラグラします。
くー!くやしい! どうしても積みたい。
奥さんにアドバイスをいただきながら、かれこれ10分ほどチャレンジした結果…
なんとか三段に成功! む、むずかしい …。
傍でにやにや笑う徃西さん。完全に“いたずらっこ”の笑顔です。
「河原の石ころをイメージしてつくりました。石ころは、簡単に積めませんからね」とバッサリ。
この日は取材だし、時間の制約もあるから三段…だけど本気を出せばもっと積めるはず…。往生際の悪さ、後ろ髪引かれる感じ、まんまと徃西さんの罠にはまっています。そんなわたしに追い打ちをかけるように「泉佐野市の職員の方は、六段 積んでいましたよ~」と徃西さん。くー!くやしい!でも、すごい!
これでも十分苦戦するのに、「積めますか?」ヒノキ材(高知県産) 10コ 3960円(税込)は、もっと難しいのだとか。ヒノキは柔らかく、加工がしやすいですからね~ってどんだけ…。
なぜ、このような積み木をつくるのか、徃西さんに尋ねました。
「一般的な積み木は『積んで造形する』ことを目的としたものが多く、僕が幼少期の頃、そのようなものを与えられてもさほど熱中できませんでした。すぐ積めてしまうから飽きてしまうんです。そこでまず『積む』ことに着目しました。“大人ですら熱中してしまう”積み木をつくりたいと思いました。子ども用の玩具は、あくまでも“子どもが使い、その遊びに親が付き合う”というものが一般的ですが、親も積極的に遊びに参加して親子で楽しい時間を共有してほしいという想いから、『親のため』につくったと言っても過言ではないほど、大人にこそ夢中になってほしい積み木なんです」。
思い通りにならないから面白いんだよ、とまるで人生の教えを指し示しているかのような積み木。
「親のためにつくった」「大人にこそ夢中になってほしい」とは、意外でした。
うまくいかないから夢中になる…なんか、わかるような気がします。
「sosion夢工場」は、自然の摂理に寄り添う商品開発で、親子がふれあうきっかけづくりをしてくれる“夢の工場”。実用的なものであれば、オーダーメイドも相談に応じてくれます。
「お客様のご要望から生まれた商品がどんどん増えちゃって、商品カタログがつくれないんです」と奥さん。
こちらの商品も…
お客様のリクエストから生まれたという、キャンプなどで使える燻製器。
ベランダやお庭で楽しめるサイズ感もいいですね。
「“木”でものづくりをしていると言うと、『ぬくもり』とか『手づくりの温かさ』とか、そんな風に感じられることが多いけど、僕はそうじゃない。まず、第一に木は加工がしやすい。だから、思い描いたものをカタチにしやすいんです。なんでもつくれるって楽しいじゃないですか。大好きな子どもたちによろこんでもらえることが一番うれしい」と徃西さん。
まずは、自分自身が楽しむこと、そして届けた人によろこんでもらうこと、「木のぬくもりあふれる」とか、「手づくりの温かさ」だとか、安易にそういうことは言わない。魂レベルで仕事をしている大人の背中こそ、子どもたちが見るべきものではないかとも感じました。
徃西さんに、工場奥の作業場を案内していただきました。
「『手押し車』を購入してくださったお客さまが、子どもの成長にあわせて『ままごとキッチン』、そして次は『絵本棚』を注文してくれたんです」と納品前の大切な商品を見せてくださいました。
出来立てほやほやの真新しい「絵本棚」です。手前の板に“透かし模様”を入れたら完成です。下段にはA4サイズの本、上段は絵本の表紙を見せて飾ることができます。こちらは、幅80センチのもので、他にも幅60センチ、幅100センチも選べるとのこと。家具はすべて完成品をお届けし、ご自身での組み立ては不要なのだとか。
“組み立て式”は強度が保てない、と徃西さんはいいます。
商品を受け取った方から、ビデオメッセージが届くことも。
「子どものよろこぶ姿を見ることができてとてもうれしい」と語る徃西さん。
木のおもちゃの魅力は、「空想の中で遊べる面白さ」「知らず知らずのうちに親も巻き込まれてしまう楽しさ」と話します。
「親も巻き込まれてしまう…というより、親の方が夢中になってしまったというお声も多いですよ 笑」とも。
今の子どもたちにとっては、きっと目新しい「木のおもちゃ」。
思い通りにいかない歯がゆさもあるかもしれません。
そんな時、助けてくれるのが木のぬくもりや手づくりの温かさ、一緒に遊ぶ おかあさんやおとうさんの笑顔なのではないでしょうか。
そして、大人も本気で楽しむ! 「積めない積み木」をつくる理由は、きっとこれ一択なのだと、少年のような徃西さんの笑顔を見て強く感じました。
【基本情報】
手作り木工 木のおもちゃ&家具「sosion夢工場」
公式ホームページ(外部リンク)
Yahoo!ショッピング(外部リンク)
*オンラインショップの価格は、送料込みのお値段となっています。
工場受け渡しの場合は、定価での販売となります。
詳細は公式ホームページよりご確認ください。
住所:泉南市信達金熊寺159-1
Tel:072-485-3450
営業時間:9:00~18:00(金曜日は17:00まで)
定休日:土曜・日曜・祝日
駐車場:あり(3台)
取材協力 手作り木工 木のおもちゃ&家具
「sosion夢工場」頭(かしら) 徃西 正夫様
*記事内容は取材当時のものです。