コロナ第3波下のアイドルイベント~運営は「サマラン祭2020」をどう盛り上げたのか~
この秋最大のアイドルライブ&撮影会イベント「サマラン祭2020」が11月28日〜29日にかけて開催され、多くのファンを集めSNSも賑わせた。新型コロナ流行が第3波に入りつつある中で、運営はどのように状況の変化に対処し、ファンはどこに満足して、「サマラン祭2020」は成功を収めたのだろうか。マーケティングにおける重要なテーマの一つである「顧客満足」の視座から検討してみる。
■「サマラン祭2020」の現在のアイドルシーンにおける位置づけ
コロナ禍の現在、アイドルシーンでは大型イベントが軒並み中止あるいはオンラインだけの開催になってしまっている。
そんな中、あきる野市にある東京サマーランドを会場として行われた「サマラン祭2020」には、ライブアイドルを中心にグラビアアイドル、コスプレイヤーが100人超出演し、「サマランスプラッシュライブ」と「サマラン大撮影会」、「東京サウナーランド」などのリアル企画が実施された。アイドルにとってもファンにとってもお互いがリアルに顔を合わせることができる貴重なイベントとなり、来場したファンも1000人超と多く、Twitterでは開催日からしばらく「サマラン祭2020」での撮影画像tweetが途切れないほど話題になっていた。
■状況の変化への対応
多くの参加アイドルと来場者を得て大きな話題となった「サマラン祭2020」であるが、開催に至る間におとずれた最大の危機は、当然ながら、コロナ第3波であった。
「サマラン祭2020」運営は、第2波後に新型コロナ感染が小康状態となっている状況を見て「サマラン祭2020」を企画した。その後GoToトラベル事業が始まると、旅行代理店と組んだ新宿発のツアー企画でイベントに取り込みファンの利便性の向上をうまく図った。だが、第3波が広がりはじめて全国的にイベントやフェスが開催中止になるケースもあらわれ、再び雲行きが怪しくなってきたとみるやコロナ対策を強め万全にするなど柔軟で練られた対応を行ってファンとアイドルの不安や不便の解消を行い開催の危機を回避した。
このような臨機応変な対応は「サマラン祭2020」運営のプリュとアイドル横丁によって行われた。プリュはアイドルグループ6組が所属し、コロナ禍前には年間平均約150本のライブを運営するなど、幅広くエンタテインメント事業を手掛けている。またアイドル横丁は3大アイドルフェスの一つと位置付けられるアイドル横丁夏まつりを開催した老舗のアイドルイベンターである。このようなタッグが組まれた運営だからこそ、目まぐるしく変わる状況に対応できたのだろう。
「サマラン祭2020」の当日の様子はこちらの動画で確認できる。
■コロナ禍でも用意された新企画、変わらない出演者への配慮
「サマラン祭2020」では、ライブと撮影会のほかコロナ禍以前にもなかった斬新なサウナ企画が実施された。
運営のアイドル横丁は自社イベントで個性的な企画を用意することで定評があり、近年アイドルイベントでよくみられる縁日企画やグラビア企画はそもそもアイドル横丁が初めて実施したものである。コロナ禍のような委縮してもおかしくない状況でも持ち前の攻めの企画力を発揮してこれまでのイベントにはなかった新企画を実施した。
コロナ禍でリアルな出演の場が少なくなったアイドルたちにとって「サマラン祭2020」は貴重な出演の場であるが、そのことだけではこれほどの人数の出演者は集まらない。
運営のプリュは出演者がリラックスして出演できる環境づくりにかねて定評があり、「サマラン祭2020」でも出演者約2人につきヘアメイクを1人以上用意し、休憩時間に出演者が落ち着ける空間とケータリングをバックヤードに用意するなど、出演のモチベーション向上に努めていた。
「サマラン祭2020」会場では、企画やファンとアイドルへのホスピタリティなどについて、アイドルマネジャーたちから運営に対する好意的な意見が多く聞かれた。「サマラン祭2020」運営が、開催上の重要な"パートナー"であるアイドル事務所の信頼を得ていることは明らかだった。
■まとめ
「サマラン祭2020」は、運営の企画力と出演者に対する姿勢により、良いキャスティングができたこともあいまって、総合的なクオリティの高さが得られ、最終的にファンの満足が高まっていったと捉えられる。
「顧客満足」の観点から見て「サマラン祭2020」は、コロナ禍によりユーザーの満足を損なう危機にある、あらゆるサービスの事業者にとって示唆に富んだ企画であったと言える。「サマラン祭2020」運営のように、厳しい環境下にあっても、怯まない企画力や維持された高い品質、"パートナー"からの信頼などによって得られたクオリティの高さを源泉として「顧客満足」を高めたことは、どのようなサービスの事業者にも通じる、コロナ禍を乗り越えるヒントになるのではないだろうか。