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森友学園の国有地取得の収支

渡辺輝人弁護士(京都弁護士会所属)
学校法人森友学園「瑞穂の國記念小學院」の建設中校舎

国有地であった大阪府豊中市野田1501番地の土地(以下「本物件」)を、学校法人森友学園に売却した件。この間、豊中市の木村真市議(無所属)が黒塗りにされた契約関係の書類の情報公開請求・提訴をし、朝日新聞が2月9日にその件を報じて以降、国会でも、宮本たけし議員(共産党)が2月15日(先週水曜)、福島のぶゆき議員(民進党)が2月17日(先週金曜)に取り上げて今週の週明けを迎えました。

本物件をめぐる経過

この件については、新聞記事で経過を余すところなく説明しようとすると、一面からぶち抜きで詳細な報道しなければなりません。しかし、いかんせん、報道が散発的で、経過がわかりにくいのが現状です。そこで、明らかになった事実経過を表にまとめました(最後にまとめたのでスマホでお読みの方は表を読み飛ばして結構です)。

本物件を巡る出来事
本物件を巡る出来事

まとめると大ざっぱに以下のことが言えると思います。

  • 2010年に豊中市は国から本物件の東側隣地(やや大きめ)を14億2300万円で購入。
  • 2012年に別の学校法人が本物件を地中埋設物処理費用2億5000万円を織り込んだ上で5億8000万円で購入申し出するも国が「安すぎる」と断る。
  • 2016年に森友学園が国から本物件を1億3400万円(10年間分割払い)で購入。当初、国有財産の売却であるのにこの金額が非開示情報とされた。

国有地を買ったのに国への収支が現状プラス

森友学園は梅田駅(大阪駅)まで徒歩含め30分圏内の国有地8770平方メートル(約2660坪)を、約1年間、国から賃借した上、1億3400万円で購入しましたが、本稿執筆時点で、国に対する収支が1億3910万円プラスになっています(表参照)。原因は国が森友学園に対して「有益費」として約1億3000万円余、建設中の建物が国によって「木質化」の先導事例に選定され約6000万円の補助金を得ている一方、土地の購入費用は頭金を除き10年分割とされたからです。

国・森友学園間の金銭収支
国・森友学園間の金銭収支

今後10年かけて分割で支払う金額の合計が下記の通りであり、この金額について国が本物件に抵当権を設定しています。国が年利1%の低利で金融機関の真似事をしている感があります。そして、建設中の建物に対する補助金も含めると、10年後に全部払い終わった時点でも森友学園の国に対する収支がプラスになる計算です。そしてこの元利合計額が登記簿に記載されている数字に合致します。

森友学園の国に対する債務残高
森友学園の国に対する債務残高

1億3000万円余の「有益費」の「返還」を可能にした定期借地契約

このような取引が可能になった根拠は森友学園の「強い要望」によって締結された2015年5月29日の定期借地契約にあります。ここでは、賃借中に森友学園が土壌汚染、地下埋設物の除去を行い、それによって貸付財産の価格が増大した場合の除去費用を「有益費」とし、国と森友学園が合意した金額を森友学園に「返還」できるとされました(第6条)。実際、森友学園は賃借中の2015年10月16日までに土壌汚染対策法に基づく工事・措置を完了し、2016年3月30日、国から1億3176万円(地下埋設物撤去費8632万4000円と土壌汚染対策費4543万6000円)の「返還」を受けることを合意しました。一方、定期借地契約と同時に締結された「売買予約契約書」で黒塗りにされていた第31条では、森友学園は、土壌汚染・地下埋設物を承知の上で本物件を購入し、これらについて国に対して「瑕疵担保責任」(要するに除去費用)を請求することができないことになっています。森友学園が当初から本物件を時価で購入していた場合、このような「有益費」の「返還」を受けることは困難だったと思われます。

そもそも、定期借地は、森友学園が本物件を時価で購入できないため、「8年を目途」に内部留保を積み上げ、そのときの時価で購入するためのものでした。しかし、実際の定期借地は1年ほどで終了しており、その間に、むしろ、森友学園が国から多額のお金を得るための手段になっています。これは結果論なのでしょうか。それともこのような「処理スキーム」を指示したり、考えた誰かがいるのでしょうか。追及すべき点だと考えます。

以下は「森友学園への不明瞭な国給付」に続きます。

弁護士(京都弁護士会所属)

1978年生。日本労働弁護団常任幹事、自由法曹団常任幹事、京都脱原発弁護団事務局長。労働者側の労働事件・労災・過労死事件、行政相手の行政事件を手がけています。残業代計算用エクセル「給与第一」開発者。基本はマチ弁なので何でもこなせるゼネラリストを目指しています。著作に『新版 残業代請求の理論と実務』(2021年 旬報社)。

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