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不遇続きだった大阪・合田怜が見据える今シーズン「同じポジションの代表の奴らをぶっ潰すのが目標」

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
左肩脱臼の修復手術から復帰した合田怜選手(筆者撮影)

【2勝2敗のスタートを切った大阪エヴェッサ】

 昨シーズンは西地区2位に入り、初のチャンピオンシップ進出を果たした大阪エヴェッサは、「地区優勝&チャンピオンシップベスト4」を今シーズンの目標に掲げ、開幕ダッシュを目指していたが、第1節のシーホース三河戦、第2節の京都ハンナリーズ戦ともに1勝1敗のタイとし、2勝2敗のスタートを切った。

 だが現有戦力を考えれば、致し方ない結果といえる。

 元々昨シーズン中に合田怜選手が左肩脱臼の修復手術、そして橋本拓哉選手も右足アキレス腱断裂の修復手術を受けて長期離脱中。さらにプレシーズン試合で中村浩陸選手が左足後脛骨筋腱損傷で戦線離脱を余儀なくされ、主力ガード陣3人を失ってのシーズン開幕を迎えていた。

 今シーズンは走力やスピードを生かしたアップテンポなバスケを目指していた天日謙作HCだったが、頼みのガード陣がいないことでDJ・ニュービル選手を中心とした攻撃にシフトせざるを得えず、攻守ともに本来の走力、スピードを出し切れない状態が続いている。

 大阪が本来の実力を発揮するには、もう少し時間がかかることになりそうだ。

【1月27日以来の実戦復帰を果たした合田選手】

 そんな中、前述の主力ガード陣の1人合田選手が、第2節からようやく実戦復帰を果たした。昨シーズンの1月27日の島根スサノオマジック戦で左肩脱臼を再発させて以来の実戦となった。

 復帰戦ということもあり、天日HCは合田選手の出場時間を制限する方向だったようだが、第1戦で23分53秒、第2戦で19分53秒と想定時間ギリギリまでコートに立たせている。それだけ合田選手が、今シーズンの大阪にとって重要な存在だということに他ならない。2年連続でキャプテンを任されているのも頷けるだろう。

 久しぶりの実戦だったこともあり、合田選手本人はまだまだ試合勘が戻っていないことを明かした上で、脱臼を繰り返してきた左肩にまだ恐怖心を抱いているという。

 「久しぶりのゲームだったんですが、思っている以上にプレー自体はできたんですけど、やっぱり細かい部分で自分が求めているところまで行けていないので、コンディションも上げていかないといけないし、やらなければならないことはいっぱいあるなと感じました。

 試合の感覚ですかね。やってみて全然落ちているなというのを感じました。これから試合を通してその感覚を取り戻していきたいです。

 (肩に関しては)医者からも『もう外れることはないよ』と言われているんですけど、それでも(脱臼を)何度もやっているんで少し恐さみたいなものがあります。まだ肩を守りながらのプレーをしている部分があるので、そこを含めて試合勘みたいなものに繋がっていくと思っています」

【肩へ恐怖心をむしろポジティブに捉える合田選手】

 これまで何度も脱臼を繰り返してきた合田選手がその恐怖心を拭い去るのは、決して簡単なことではないだろう。だが彼は、恐怖心が残ることをむしろポジティブに捉えようとしている。

 「僕の中では(恐怖心が)出ていることがめちゃくちゃいい信号だと思っています。トレーナーとかと話をしていて、その恐怖心がなくなった時に変な手の出し方をしたり、また疲れてきた時に足が動かなくなって手で守りにいって脱臼してきたので、その恐怖心を抱えている間はある意味安心なのかなと…。

 ただできる幅は広がっているなというのは感じていて、練習でもチームメイトはガチガチやってくるので、その練習の中である程度の自信があってゲームに出られると判断したので、ゲームをしながら徐々に消えていけばいいなとは思います」

 合田選手によれば、今回受けた手術は脱臼で痛んだ関節唇などを修復しただけでなく、靱帯で補強もしているという。そのため手術後は肩周辺がガチガチに固まった状態で、今も肩甲骨回りの可動域は完全に戻っていない状態だという。

 もちろん完全復活というには程遠い状態だ。

【合田選手「代表の奴らをぶっ潰すのが目標」】

 合田選手の名はまだまだ全国区とはいえないが、その潜在能力は以前から注目に値するものだった。

 Bリーグ1年目の2016-17シーズンに西宮ストークスから大阪に移籍すると、毎シーズンのように出場時間を増やしていき、2019-20シーズンから先発PGで起用される機会が増え始め、徐々に頭角を現し始めた。

 だが、これからバスケ選手として正念場を迎えようとすると、なぜかケガに見舞われ長期離脱を繰り返すという不遇が続き、まだ正当な評価を受けられないでいる。

 元々PGとしての状況判断が良く、さらにSGとしても起用できるシュート力も兼ね備えている。また長期離脱中にベンチから試合をじっくり観察し続け、より一層状況判断や戦術眼を磨いていったようだ。

 天日HCも、合田選手の能力を高く評価する1人だ。

 「僕らにとってはやって欲しいプレーをしっかりやってくれるし、ボールを離すことを怖がらない。そういう面では僕ら好みのPGです。もっと頑張ってもらって、(周りから)評価してもらっていい選手だと思います」

 合田選手としても今シーズンに期すところがあるようだ。ケガなくシーズンを乗り切れば、間違いなく彼の評価はもっと上がっていくことになるだろう。

 「このリーグで戦えるという自信はあります。ただケガで沈んでしまったんですけど、頭の中ではある程度の手応えも感じています。なのでシーズンを通してケガなく戦えたら、リーグからの評価も変わるのかなと思っています。

 もちろん代表でもやってみたいですし、僕くらいの選手がレベルを上げることで代表のレベルアップに繋がると思っています。見た感じ代表には入れないと思ったんですけど、まずはこのリーグで代表の奴らをぶっ潰すのが目標なので、そうしたら順番が回ってくるのかなと…。

 まずは代表に入っていた同じポジションの奴らを、周りがビビるくらい潰しにいこうかなと思っています」

 果たして今シーズンの合田選手は、飛躍のシーズンにすることができるだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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