一人目の子供が生まれた後と主婦のお仕事との関係
女性は出産をする前後相当期間、出産のための準備や心身の安全確保のためなどの理由で、安静が必要不可欠な状態となる。産前・産後休業が制度化されているのも、その休みが必要不可欠との認識に基づくもの。それでは実際に、出産をする前後で夫婦世帯における女性の就業状況はどのような変化を見せているのだろうか。国立社会保障・人口問題研究所が2016年9月に公開した、日本国の結婚や夫婦の出生力の動向などを長期的に調査・計量する「出生動向基本調査」の最新版「第15回出生動向基本調査」の調査結果から確認していく。
夫婦の共働きが珍しくなくなった昨今では、妻の就業が出産と少なからぬ関係を持つようになってきた。元々専業主婦なら問題は出産後も時間の配分に苦慮する必要は無い。しかし兼業主婦だった場合、出産に合わせて現職を休職、あるいは退職せざるを得なくなることもありうる。職場の仕組みとして育児休業制度があれば良いが、無い場合復職は困難なものとなる。
今調査では子供(第一子)の出生年に合わせ、出生前後の妻の就業状態についての調査項目があり、その結果も提示されている。調査を行った年ではなく、子供の出生時の仕切り分けであることに注意(第一子が1歳から15歳未満の初婚同士の夫婦が対象。過去4回分の調査結果を積算して集計している。客体数は1万2719件)。
今結果からはいくつかの主婦事情が分かってくる。まずは「妊娠前から無職」の率が漸減していること。逆にいえば「妊娠前は就業していた主婦が漸増している」となり(実際、「就業継続」+「出産退職」の比率は増加している)、共働き世帯が漸増していたことの裏付けにもなる。
次に、就業を継続した主婦(グラフ中黒枠で囲った部分)においては、育児休業制度を使う人が増えているのが分かる。会社の制度として整備が進んだことに加え、社会的にも育休を積極的に活用すべきであるとの雰囲気が浸透していることの表れだろう。
一方で、出産前後に就業を継続した人の比率そのものは大きな変化が無く、出産退職をした人が漸増して「いた」のが確認できる。育休が制度として用意されていても、企業の現状や出産後の育児を考えると、数年単位での復職は困難と判断した上での退職だろう。さらに遠因として保育所などの需給バランスの問題が考えられる。
ただし直近分となる2010~14年分では、育児休暇を利用して就業を継続した人の割合が大きく増え、その分出産退職をした人が激減している。これはこの数年に渡り産前・産後休業問題にスポットライトが当てられ、企業側も環境整備を整え、制度利用への社会的認識が高まったことを反映した結果が表れたものと考えられる。
他方、いまだに1/3を超えている「出産退職」の項目に関して、回答者の具体的理由を知りたいところだが、今調査ではそこまで問い合わせておらず、詳細は分からない。ただし今件の状況を認識した上で、「出産退職」を望まない(仕事へのこだわり、家計上の問題)との理由から出生をひかえる夫婦が少なからずいるのは確実。今調査別項目の「理想の子供数を持たない理由」にも、少なからず「自分の仕事に差し支える」との回答が成されている。
退職をした場合、同じ組織・部局への再就職は難しい。出産を経てこれまでの経歴・技術が就業の対象とならない状況は、女性の出産忌避の一要因になるだけでなく、女性本人にとっても、社会にとっても大きな損失に他ならない。少子化対策の一環として、「出産退職」率をいかに減らしていくかも考察すべきではある。
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