日銀は次のステップに備えるべき。市場は日銀の次のステップを促そうとしている
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日擬人は7月28日の金融政策決定会合で、金融政策そのものは変更せずに、長短金利操作についてレンジ幅の修正を行った。
長期金利の変動幅は「±0.5%程度」を目途とし、長短金利操作について、より柔軟に運用する。10 年物国債金利について 1.0%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。
長期金利の変動幅は「±0.5%程度」は目途に置き換わり、絶対的な防衛ラインという数値ではなくなった。その替わりに1.0%の利回りが防衛ラインとなる。つまり、これまでのプラス0.5%からプラス1.0%に上限レンジを引き上げた。
指値オペは明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施するとある。つまり、1.0%から実勢の利回りがいくら乖離していても、毎営業オファーを行うというものである。
これについて植田日銀総裁は、変動幅の位置付けをめどとして、柔軟化したものであるとし、長期金利が 1%まで上昇することは想定していないが、念のための上限キャップ として1%としたとしている。
今回、日銀が長期金利操作目標値を修正した目的として考えられるのは、金融仲介機能、市場機能に配慮して、いかにうまく緩和を継続するのかを考慮した場合に、0.5%ではあまりにレンジが狭すぎた。1.0%程度のバッファーが必要と認識したためとの見方ができよう。
また今回も昨年12月20日の0.5%への修正と同様に円安対策に日銀が何もなしということが出来ずに、緩和修正とみられない格好での円安対応を迫られていたとの見方もできる。
これらの結果から、日銀は緩和策を継続させるためとして、長期金利の操作目標の1.0%への引き上げを飲まざるを得なかったということになる。
物価高にあっての異次元緩和継続に対する批判に対して、正常化に向けた一歩との印象を持たせることも狙いとなる可能性もある。内田副総裁は以前のインタビューで、(YCC修正も)結果として出口に向かうのであれば、あそこが第一歩だったと振り返って言うことはできるかもしれない」という発言があった。
日銀は金融政策の方向転換ではないと強調しているが、その意思の有無にかかわらず長期金利コントロールはなし崩し的に撤廃させてくる可能性がある。そして次のステップともいえるマイナス金利解除についても同様である。ドル円が144円台を付けてきているが、市場も日銀の次のステップを促そうとしているかにみえる。
今後、日本の長期金利が1%を超えて、さらに上昇してくる可能性は日銀が思っているほど低くはない。ここ20年、30年の間、みたことのない日本での物価や賃金の上昇は、それが金利上昇を当然のごとく促す。そんな常識すら、現在の日銀は自らの政策に固執するあまり、忘れているのかもしれない。