男性の育児休業取得率が′過去最高’の2.65%~まったく喜べない'過去最高’への危機感を~
「男性の育児休業取得率2.65%」
これは、7月26日(火)に厚生労働省が発表した2015年度雇用均等基本調査(注)で明らかになった数字だ。前年度比で0.35ポイントの上昇し、過去最高の数字となった。
(注)2013(平成25)年 10 月1日から2014(平成26)年9月 30 日までの1年間に配偶者が出産した男性のうち、2015(平成27)年 10 月1日までに育児休業を開始した者(育児休業の申出をしている者を含む。)の割合
・TBS系(JNN) 7月27日(水)0時3分配信
しかし、これは一向に喜べるような数字ではない。
昨年、男性の育児休業取得率が発表された際に、
男性の育休はたったの2.30%!?スタートから刷り込まれる「子育ては母親」の価値観
ーーという記事を書いた。
母親が産後うつなどのリスクを下げるためにも、そして父親が子どもの成長を目の当たりにし子育てへの関わりを増やすきっかけとしていくためにも、育児休業制度を利用することは一定多数の男性にとって必然的なものにしていかなければならない。
もちろん、育児休業制度だけがすべてではない。フレキシブルな働き方を実現させることで、子育てへの関わりを増やすことは可能だ。実際にそれほど男性の育児休業取得率が増えていなくても、長時間労働を削減したり、年次有給休暇を取得しやすくするなど、働き方を見直すことにより、実質的に子育てに関わる時間を保障している企業もある。
ただ、そうであったとしても、2.65%はあまりにも低い。2.30%も2.65%も、100人中2人か3人いるかいないかだ。2020年に13%を達成しようという国の目標すら、だいぶ赤みがかった黄色信号と言えるだろう。当初2007年の麻生政権時代に政労使の合意で打ち立てた国の目標が10%、その3年後の民主党政権時代に3年先送りしたうえで13%に目標値を上げ、現政権もそれを引き継いだ。おそらく政治家はこの数字を甘くみていたのだと思う。自然に増加するとでも思っていたかのように。
ここ10年間、育児・介護休業法や雇用保険法が改正され、
- 父母ともに育児休業を取得する場合の休業可能期間の延長(パパ・ママ育休プラス)
- 出産後8週間以内の父親の育児休業取得の促進
- 労使協定による専業主婦(夫)除外規定の廃止
- 育休取得後6カ月間は、育児休業給付金を休業前所得の3分の2に引き上げ(社会保険料の免除などを合わせると実質8割の所得補償に)
ーーなど、男性の育児休業取得率向上施策が講じられてきた。
4点目については、2014年4月から始まった制度であり、その効果をみるためには来年度のデータが必要になるが、13%という目標値に弾みがつくようなものになるとは、いまのところは思えない。
結局は長時間労働の問題に行きつく
男性の育児休業取得率を増やすためには、父親に一定期間の育休を割り当てるパパクオータ制の導入が待たれるところだが、先の通常国会で成立した改正育児・介護休業法には残念ながら盛り込まれていない。議論さえほとんど行われていない。
しかし、日本にはパパクオータ制だけを待っていても解決しないであろう根本的な問題がある。それが長時間労働だ。北欧諸国の高い男性育児休業取得率がよくクローズアップされるが、長時間労働や年休が取りづらいなどの問題がない中で、あとは父親にそのきっかけを与えるだけで良かった国々とは違い、日本は根本的な問題を解決しなければならない状況にある。
先日、育休を取りたかった父親の話を聞くことができた。夫婦共働きで所得面の不安もそれほどなく、上司からも育休取得を勧める声かけもあったが、最終的に育休を取得することはなかった。普段は長時間労働で業務過多の状態。自分が育休を取得することで、同僚へ負担が増えることを恐れたという。おそらく、そうして気兼ねをして取得に踏み切れない男性も多くいることだろう。
現在、勤務と勤務の間を一定時間空ける勤務間インターバル休息の議論もようやく始まってきた。この制度自体は、労働者の命・健康を守ることを主眼に置いたものだが、強制的に労働時間にブレーキングを掛けるようにしない限り、企業の体質が全体として変わることは難しい。
長時間労働の問題に根本的に手を付けると同時に、この男性の育児休業の問題を議論していかなければ、13%という低い目標すらクリアすることはできないだろう。
政治家がもっと危機感を持って取り組まない限り、男性の育児休業取得率が増えることはない。