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ベルギー戦を「良かった」と振り返るハリルホジッチにもう期待はできない

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:アフロ)

この段階でハリルホジッチに見切りをつけても失うものは少ない

 11月14日、ブルージュでベルギーと対戦した日本は1-0で敗れた。

 試合後、ハリルホジッチ監督は「チームはいい試合をした。1人に4人が抜かれてもったいない失点をしたが、ブラジル戦よりもゲームコントロールができた」と満足げに振り返ったが、客観的に見て、試合内容も日本のパフォーマンスも乏しいものだった。

 ブラジル戦が1-3の敗戦だったため、この指揮官のコメントを聞くと少しは進歩したかのような印象を受けてしまいがちだが、実際は違っていた。1失点で済んだのは、日本の守備が機能したからではなく、相手の集中力とインテンシティが欠如していたから。この試合の日本に可能性を感じさせる要素はほとんどなかったというのが実際のところである。

 特に目立っていたのは守から攻への切り替えができていない点。そもそも、言うほど守備も機能していなかった。

「試合全体を通して高い位置と低い位置のブロックがオーガナイズされていた。ただ、パスのところで簡単に失ってしまったところが気になった」とは試合後の指揮官のコメントだが、良いかたちでボールを奪えていないから、奪ったあとのプレーの質が低下してしまう。マイボールになったあと、苦し紛れのパスやクリアに終始してしまった理由だ。

 試合ごとにシステムとスタメンを変えて、違ったタクティクスで臨むという“一か八か”の戦い方は、もはやW杯本番までに完成するのは難しいと見るべきだろう。また、この試合内容を良い試合だったと振り返るようでは志も低すぎる。

 残された活動日数からすれば非現実的な選択かもしれないが、ここでハリルホジッチに見切りをつけても失うものは少ないと思われる。それよりも、新しい監督の下で停滞するチームに刺激を与え、将来の日本サッカーのためになる新監督を招へいした方が得策と言えるだろう。

 以下、出場選手の採点と寸評。(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】川島永嗣(GK)=5.5点

失点場面はGKの力では防げないものだった。それ以外のピンチやシュートに対しても無難に対処できていたが、チームが敗戦に終わったので0.5点分マイナス。

【右SB】酒井宏樹(86分途中交代)=5.5点

守備面ではまずまずのパフォーマンスだったが、メルテンス、シャドリに振り回されたシーンもあった。前半25分にピンポイントクロスを大迫に入れたが、攻撃参加の回数はいつもより少なかった。試合終盤に負傷してベンチに下がった。

【右CB】吉田麻也=5.0点

ブラジル戦に続き、軽率なミスが目立っていた。前に出て行ったときに簡単に外され、ピンチを招く場面もあった。効果的なフィードを前線に入れることもなく、縦パスをカットされるシーンも。守備の要としては頼りなさを感じた。

【左CB】槙野智章=5.5点

ルカクとのマッチアップでは互角に挑んだ。身体を張ったディフェンスでシュートを防ぐなど、大きなミスもなくブラジル戦に続いて及第点のパフォーマンスを見せることはできた。ただ、吉田との連携面ではまだまだ改善の余地がある。

【左SB】長友佑都=5.5点

効果的な攻撃が影を潜めている点が気になるところ。ポジションを空けたときにピンチを招く場面もあったが、守備面では及第点のパフォーマンスを見せた。

【アンカー】山口蛍=5.0点

シュートを狙うべきところでパスを選択してピンチを招くなど、相変わらず消極的なプレーが目立っていた。後半はインターセプトの回数が増えたが、このポジションで攻撃の起点となれないのは厳しい。もちろんチーム戦術が機能していないことも影響しているが。

【右MF】長沢和輝(62分途中交代)=5.0点

1対1の局面でボールを奪われ、パスを受けたあとにバックパスが多く効果的なプレーがなかった。初キャップのわりに頑張ったが、通常戦力として見た場合はまだ国際試合のレベルには達していない。試合を重ねて劇的な成長を遂げなければW杯の戦力にはなれない。

【左MF】井手口陽介=5.0点

ブラジル戦に続いて経験の無さを露呈。プレーに余裕がなく、攻撃面はもちろん守備面でも効果的なプレーができなかった。この2試合でいろいろな課題を突き付けられたが、他に代わりの選手が少ないポジションなので、残された時間での成長が望まれる。

【右ウイング】浅野拓磨(68分途中交代)=4.5点

久保に代わってスタメン出場。途中出場のときに目立たなかった課題が露呈してしまった。ゴール前で見る者をがっかりさせるプレーが多く、持ち前のスピードを台無しにしてしまっている。ボールを止める、蹴るという基本部分を磨き直す必要がある。

【左ウイング】原口元気(78分途中交代)=5.0点

アタッカーでありながら、攻撃面での貢献がほとんどなかった。最終ラインまで戻ってチームを救ったプレーもあったが、献身的な守備に終始。周りと噛みあっておらず、イライラしながらプレーしている印象は否めない。スランプに陥っている状態。

【1トップ】大迫勇也(73分途中交代)=5.0点

ブラジル戦同様、前線で溜めを作るプレーができなかった。前半25分に酒井のクロスからヘディングシュートを狙ったが、枠を外れた。全体的に相手DFに脅威を与えられなかった。所属クラブでのゴール数を増やし、調子を上げなければ不動の1トップにはなれない。

【MF】森岡亮太(62分途中出場)=5.0点

後半途中、長沢に代わってブラジル戦に続いてテスト起用された。ブラジル戦のときはトップ下だったが、この試合ではインサイドハーフでプレー。アタッカー系MFのため守備の弱さを露呈。肝心の攻撃面でも存在感はなく、このままでは代表の中で生き残れない。

【FW】久保裕也(68分途中出場)=5.0点

この試合でも輝きはなかった。失点の場面では守備に関与しながら、突破を許してしまった。仮にこの2試合で良いパフォーマンスを見せていればレギュラーの座を確保できたが、それも叶わず。むしろ、ハリルホジッチからの信頼を失った格好になった。

【FW】杉本健勇(73分途中出場)=5.0点

出場間もない後半76分に相手DFが滑って転んだところからビッグチャンスを迎えたが、GKと1対1の場面でシュートを決められず。焦って遠目からシュートを狙ってしまったあたりは、まだ国際試合で通用しない部分を露呈してしまった格好。

【FW】乾貴士(78分途中出場)=5.5点

出場直後に左サイドからカットインしてシュートを狙った。GKにセーブされたが、持ち味を出した場面となった。出場時間が短かったのでそれ以外に効果的なプレーはできなかったが、ジョーカーとしての役割を与えられている以上、ワンチャンスをものにしたい。

【DF】酒井高徳(86分途中出場)=採点なし

プレー時間が短く採点不能。もし酒井宏樹が負傷しなかったら、出場機会はなかった。指揮官からの信用は明らかに低下している。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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