「舞いあがれ!」久留美(山下美月)が定職につかない父(松尾諭)を決して悪く言わない理由
朝ドラこと連続テレビ小説「舞いあがれ!」第18週 では舞(福原遥)や貴司(赤楚衛二)や久留美(山下美月)の幼馴染たちが27歳になってそれぞれの道が開かれていくなかで、久留美の縁談が哀しい方向へ――。
3人のなかで久留美ばかり苦労が絶えないように見える。それでも父・佳晴(松尾諭)のことを大事にする姿は健気過ぎて見ていて涙が出る。
朝ドラではたいていお父さんはクズか神格化されるか両極端だが、今回、佳晴のような人物を描いた意図を制作統括の熊野律時チーフプロデューサーに聞いた。
望月佳晴とは? 主人公・舞の幼馴染の父で、ラグビーの実業団の名選手だったが怪我で引退。その後は定職につかず、妻は出ていき、残ったひとり娘・久留美と肩寄せ合って生きてきた。一時期、久留美の稼ぎに頼ったことも……。
第83回では娘の婚約者の母の理不尽な対応に思わずタックルして、SNSではいかがなものかという声もあがった。
『ふつう』や『ちゃんとする』『真っ当』とはどういうことなのか
熊野「佳晴は決して働く気がないわけではなく、定職につかず様々な仕事を転々としている設定です。現代を描くうえで、浩太(高橋克典)のような働き者の人物もいれば、佳晴のように、一生懸命、生きているけれどなかなかうまくいかず、その状況から抜けられない人物もいるという事実は必要不可欠だと思いました。例えば八神先生(中川大輔)から『僕はちゃんとしてあげられる』と言われ、久留美は違和感を覚えます。久留美は父の良さをわかっていて、ちゃんとしてないとは思っていません。とかく、『ふつう』や『ちゃんとする』『真っ当に生きる』というような言い方をしますが、『ふつう』や『ちゃんとする』『真っ当』とはどういうことなのかという問いは『舞いあがれ!』では大事なところです。そこにじつは明確な尺度はなくて、みんな一生懸命生きている。そのことを肯定して、それこそがちゃんと生きていくという意味なのではないか。そういう事柄を散りばめていこうと、桑原亮子さんと初期の構想段階で話しました。山下さんと松尾さんは父娘を演じるなかで、現場でとても仲の良い関係を構築され、山下さんは松尾さんがかわいくてほっとけなく見えるようになったそうです(笑)。八神の母(羽野晶紀)はなかなかクセのある人なのでたとえ結婚しても苦労するであろうことは目に見えていますよね。羽野晶紀さんがそういう母役を説得力ある演技で見せてくださいました」
第17週、第81回で八神はプロポーズをノーサイドでする。数年前に放送されたとあるドラマの主人公は、いつもの店でプロポーズした恋人にここで?とツッコんだ。「舞いあがれ!」はいつもの店で自然にプロポーズ。お金持ちの八神医師だがあえて素敵な店を選ばないことを熊野CPに質問したが、すべては第18週に繋がっていたのだ。ふたりはいつものノーサイドを選び、佳晴は両家の顔合わせにノーサイドを選ぶ。でもそれをふつうではないと思う人もいる。それもまた、「普通」や「ちゃんとする」とはなんだろうという問題提起になる。
熊野「ノーサイドは久留美や佳晴にとって昔からある場所です。舞にしても久留美にしても貴司にしても自分たちの原点みたいな場所を決して忘れず、大切な局面ではその場所を使うのです」
タイトル通り、必ず舞い上がります
――第18週の脚本担当は、再び佃良太さんです。
熊野「佃さんには初期からプロットづくりにも参加してもらっていますので、スケジュールによっては脚本を担当してもらっています」
――舞の今後も気になります。
熊野「タイトル通り、空へ舞い上がっていく話なので、これから舞が空との結びつきを手に入れていくところが描かれます。最終的に、これまでやって来たいろいろなことが積みあがってやってきたことがひとつも無駄ではなかったという形で舞い上がっていきますのでお楽しみください」
連続テレビ小説「舞いあがれ!」
総合:月~土 午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00 ※土曜は1週間の振り返り
BSプレミアム・BS4K:月~金 7:30〜7:45
出演:福原遥、横山裕、赤楚衛二、山下美月、長濱ねる、古舘寛治、鶴見辰吾、山口智充、くわばたりえ/永作博美、高畑淳子
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太