狙いは賽銭箱? マイナスドライバー1本を隠し持っていた男が逮捕された訳
名古屋でマイナスドライバー1本を隠し持っていたとして、住居不定・無職の男(48)が現行犯逮捕された。男のリュックからは、およそ3万円分の小銭が発見されたという。男の逮捕罪名は――。
逮捕の経緯は?
地元の報道によれば、次のような事案だ。
賽銭が増える初詣のシーズンは賽銭泥棒にとっても書き入れ時であり、寺社や警察も警戒の目を光らせている。男は、そうしたさなかに逮捕されたというわけだ。
マイナスドライバーに要注意
とはいえ、賽銭盗やその未遂罪で逮捕されたわけではない。なぜマイナスドライバー1本を持っていただけで警察が逮捕できるのか、不思議に思う人も多いだろう。それこそ、工具の一つとして工具箱ごと車のトランクなどに入れっぱなしにしている人も多いのではないか。
しかし、「業務その他正当な理由による場合」を除き、先端部の幅が0.5cm以上、全体の長さが15cm以上のマイナスドライバーを隠して携帯すると、ピッキング防止法及び施行令で処罰されることになっている。最高刑は懲役1年、罰金でも50万円までと決して軽くない。
柄と先端を分解できるものでも、合体して15cm以上であればアウトだ。破壊用シリンダー回しの代用になるなど、何かをこじ開けて盗み出す際に道具として使われることが多いからだ。
プラスドライバーは規制の対象外だが、マイナスドライバーは「泥棒の七つ道具」の一つに挙げられるほど窃盗の現場ではポピュラーだ。
作用する部分のいずれかの幅が2cm以上で長さが24cm以上のバールや、直径1cm以上の刃が附属するドリルも、同様にピッキング防止法で規制されている。
「正当な理由」とは?
もっとも、ピッキング用具のような特殊な道具と違い、マイナスドライバーなどはごく一般的に使われるものだから、警察による恣意的な取り締まりも懸念される。
そこで、警察庁は、運用上の留意事項などを通達の形で全国の警察に示している。これによれば、例えば次のような場合には「正当な理由」に当たることになる。
・大工が業務のために工具箱に入れて持ち歩く場合
・自動車の修理に用いるために自動車の工具入れに入れてその自動車を運転する場合
・機械の修理、引越し等のために必要があって持ち歩く場合
すなわち、その者の職業、携帯の時間や場所、軍手や懐中電灯など「泥棒の七つ道具」をほかに所持していないか、その者の言動や周囲の状況、携帯の認識や動機などを総合的に考慮し、判断されるというわけだ。
今回の男も、マイナスドライバーを隠匿携帯する合理的な事情を一切明らかにしておらず、むしろ賽銭盗の疑いが濃厚であり、「正当な理由」がないとして、ピッキング防止法違反で現行犯逮捕された。
ただし、このまま男が小銭の入手経緯などについて黙秘を貫けば、寺社の防犯カメラに賽銭盗の状況が撮影されていない限り、窃盗罪による立件は困難だろう。(了)