保護者の子供への想い「携帯の学校への持ち込み禁止」「携帯はまだ早い」の実情
多様な機能を持つ携帯電話だが、相応の常識や判断力、自制心、そして十分な知識経験が無いと、大きなトラブルに巻き込まれるリスクもある。保護者は子供の携帯電話保有や利用にいかなる想いを抱いているのか。その実情を内閣府が2017年3月に確定報を発表した、「平成28年度青少年のインターネット利用環境実態調査結果」(※)の公開値から確認していく。
今件項目は小中高校生を子供に持つ保護者を対象にした調査。大人全員への調査ではないことに注意。その調査対象母集団に対し、「小中学生は学校に携帯電話(従来型携帯電話やスマートフォン)を持ち込むことを禁止べきである」「小中学生へは携帯電話の保有を禁止すべきである」との意見について、同意するか否か(同意の場合のみ回答。非回答者は単に同意していないだけで、否定か意見留保かは今設問からは判断不能)を尋ねた結果が次のグラフ。
全体では「持ち込み禁止」は30.8%、「保有禁止」は18.3%が同意を示している。寛容と見るか厳しいと見るかは人それぞれだが、少なくとも7割は、小中学校への携帯電話の持ち込みについて「否定的ではない」ことになる(肯定か意見留保かは別の話)。
子供の学校種類別では設問で該当する年齢の子供を持つ保護者の意見はほぼ同率だが、高校生の保護者になると取り組みに同意する意見は大きく減る。自分の子供が大きくなり、実際に携帯電話(特にスマートフォン)を持たせた結果、過剰な心配は要らないだろうとの判断の上での回答結果なのかもしれない。あるいは単なる「のど元過ぎれば熱さを忘れ」の可能性はあるが。
経年データを基に生成したのが次のグラフだが、「持ち込み禁止」「保有禁止」共に昔ほど規制を求める声が強く、近年になるに連れて規制には賛同できない人が増えていた。
2009年時点では4割強が「持ち込み禁止」、1/4以上が「保有禁止」に賛同していたが、2014年ではそれぞれ3割足らず、1/6程度にまで減少した。理由について報告書には何の説明もないが、周囲環境の変化(実使用者の増加、啓蒙の強化など)に加え、保護者自身も携帯電話を利用している事例が増え、安心感を覚えているのかもしれない(人は概して自分にとって未知なるものを恐れ、他人には薦めない。自分が知っていれば余程のものでない限り、安心だとの錯覚に陥りやすい)。
「持ち込み禁止」は減少率がゆるやかだが、「保有禁止」は確実に減りつつあった。小中学生の携帯電話、特にスマートフォンの所有率が上昇傾向を継続しているのも、保護者側が保有に対して寛容になりつつあるのが一因といえよう。
ただし2015年以降はこれまでの動きから転じ、持ち込み・保有双方ともに禁止に同意する意見が増加する値動きを示している。持ち込み禁止は直近2016年では前年からわずかに減ったが、それでも2013年水準の値、保有禁止は前年比で増加を続け2012年の値よりも増えている。単なるイレギュラーなのか、あるいは子供に対する保護者の考えに変化が見えて来たのか、現時点では判断が付きにくい。来年以降の動向を注意深く見守りたい。
なお直近年における回答者の年齢別動向は次の通りとなる。
総数では母親の方が持ち込みに厳しいものの、所有は父親の方が厳しい。また父母共に40代が持ち込みは一番厳しい一方で、保有は父親では年上ほど厳しくなるが、母親は大よそ同率を維持している。40代で持ち込み禁止の値が高値をつけるのは、実際に自分の子供が該当する年齢の場合が多いからかもしれない。
ともあれ、子供の携帯電話の利用スタイルに関して、父母やその年齢によって姿勢に違いが見られるのは興味深い話ではある。
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※青少年のインターネット利用環境実態調査
直近年分は2016年11月5日から12月11日にかけ満10歳から満17歳までの青少年とその同居保護者それぞれ5000人に対し、調査員による個別面接聴取法(保護者は訪問配布訪問回収法)で行われたもの。時間の調整ができない場合のみウェブ調査法(保護者は加えて郵送回収法)を併用している。有効回答数は青少年が3284人(うちウェブ経由は108人)、保護者は3541人(うちウェブ経由は55人、郵送回収法は34人)。過去の調査もほぼ同様の様式で実施されている。